今日の施設及び併設デイサービスの朝礼では、鳥取市でのデイサービス送迎中のリフト車からの転落事故死のニュースを職員に周知し、あらためて「慣れ」に流されず、油断せず、安全第一で基本動作を確認しながら業務に取り組む重要性を訴えた。

事故の状況について、下記にYOMIURI ONLINEの記事を転載する。
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鳥取署は24日、鳥取市滝山の鳥取市東デイサービスセンターで、21日に送迎用のワゴン車に車椅子で乗車しようとした近くの無職女性(92)が、ワゴン車の昇降用リフトから車椅子ごと転落して頭を打ち、2日後の23日夜に搬送先の病院で死亡したと発表した。同センターは事故を警察に届けておらず、病院からの通報で発覚。同署は業務上過失致死の疑いもあるとして、関係者から事情を聞いている。
同署の発表などによると、21日午後4時40分頃、女性はデイサービスの利用を終えて帰る途中で、リフトの上昇中にあおむけで転落し頭を打ったらしい。当時は職員2人が付き添い、1人がリフトを操作し、別の1人が車内で待機していたという。
事故を受けて、同センターを運営する社会福祉法人「鳥取福祉会」(鳥取市的場)は24日に記者会見し、安藤嘉美理事長は「このような事故を起こして申し訳ない。家族への対応を優先したため、警察への通報が遅れた」と説明した。
同センターでは、利用者をリフトに乗せる際、車椅子のブレーキやリフトの車止めを確認することになっているが、職員が車止めなどの確認をしたかどうかについては「調査中」として明らかにしなかった。
事故後、ブレーキや車止めに加え、車いすをフックにかけてリフトに固定する再発防止策を行っているという。
(2012年7月25日 読売新聞)
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あらためて考えると、リフト車からの転落事故死は、これが初めてというわけではなく、北海道の津別町でも6年前に同じような事故があり利用者が死亡している。その時も僕は、「通所介護送迎車からの転落死亡事故」という記事を書いているが、同じような事故が繰り返されることは本来あってはならないことだ。

事故を警察に届けていなかったというこのセンターの対応は隠蔽体質と非難されて当然だし、もってのほかではあるが、そのことを非難する以前に、事故原因を徹底的に究明して、何が原因で引き起こされた悲劇であったのかを明確にすることのほうが重要だ。そしてすべての関係者がこの悲劇の原因を把握して、対岸の火事として見るのではなく、油断して惰性で業務に就くようなことがあれば、自らの問題となりうるというふうに考えて、あらためて安全対策を徹底すべきではないのだろうか。

送迎車に設置されているリフトは、普通に使用しておれば安全に利用できる機器である。普通でない何かが、それを凶器に変えてしまうのだろうと思う。そうならないように常にプロとしての意識、普通の感覚を持ちながら、利用者を見つめるという意識が必要だと思う。

事故を起こした当事者だって、まさか毎日の送迎リフトから利用者が転落して死亡するなんて考えもしなかったろうが、そこに何か安全管理上の問題となる変な慣れがなかったのか、操作手順や車椅子の固定方法について、どこかの部分で省略しているようなことがなかったのかを明らかにして周知して欲しい。

同時に、対応した職員個人の問題としてのみならず、事業者の安全管理教育や、職員の適正配置等も検証されてしかるべきだろう。

そもそも事故後の対策として行なっているという、「車いすをフックにかけてリフトに固定する」という行為は、当施設やデイサービスの送迎車で言えば、ごく当たり前にリフトを操作する前に行うべき基本動作だ。そういうタイプのリフト車ではなかったのだろうか?

これはデイサービスに限った問題ではなく、特養もこの時期には利用者の外出支援が多くなるから同じように安全意識をあらためて促すべきだと思う。当施設でも、今日誕生日を迎えた方が、お昼を仲のいい2人の利用者と「回転寿司店」で食べて、誕生日を祝うということで外出予定だ。外出される3名の方はいずれも車椅子利用者の方で、リフトワゴンを利用して出かける。安全・安心があってこその、「楽しみ」ではないか。決してそのことをおざなりにしない「普通の感覚」が必要だ。

どちらにしても、こうした形で人生の最期を迎えてしまった利用者の方のことを考えると胸が詰まる思いだ。

亡くなられた方に対して心よりご冥福を祈ると共に、こうした悲劇を繰り返さないように、我々自身があらためて、人の命を預かり、人の暮らしを支えるための介護サービスの責任を考える機会にしたいと思う。職員間でこのことを真剣に話し合う機会を作らねばと思うし、あらためて車椅子の固定等についてはリフト操作前に指差し確認を徹底するなどの対応を行おうと思う。

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↑こういう企画も、安全が確保されなければ何の意味もなくなる。そういう責任を担っていることをあらためて考えたい。

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