実習等のためにずいぶん期間が空いて、今月12日から再開した介護福祉士養成校2年生の授業。
数ケ月ぶりに授業を行なって感じたことは、(クラスの中でも年の差がずいぶんある生徒たちだが)2年生の実習を終えて、当初より随分大人になってきたということである。授業態度にもふわふわしたものが少なくなったように思う。
これから半年、もっともっと鍛え上げて、立派な社会人として通用するように、教職員は汗を流していかねばならないんだろう。僕は1講座の非常勤教員に過ぎない立場だから、これは担任を始めとした、常勤の教職員にお願いせねばならない部分であるが、少しでもそのことに力を貸すことは惜しまないつもりである。
過去の経験で言えば、教壇から見わたす生徒が卒業して、数年後に介護サービスの現場で逢うと、ずいぶん立派になっていたり、まったく立派になっていなかったりで、どちらにしても驚くことがある。どうか前者になっていってください。
進路指導もこれから本格的になるんだろう。早い生徒は、夏休み前に就職先が実質決まっていたりする。介護サービスの世界でも、優秀と思われる生徒は青田買いされていくのが現状だ。なかなか就職が決まらない生徒もいるが、最終的には就職率は100%であることは間違いない。
ただしその結果は、この養成校の卒業生が優秀であるという意味ではなく、介護サービスの量に、人的資源の育成の量が追いついていないため、常に売り手市場で、介護福祉士の養成講卒業生で資格さえあれば、人物がどうあれ、どこかに必ず引っかかるという意味でしかない。このことが我が国の介護サービスの質の面で暗い影を落とす結果になっていることに、多くの関係者は気づいているのに、声を挙げる人は少なく、実際に有効な改善策はないのが現状だ。
残念ではあるが、毎年卒業生の中に、「このまま就職しても大丈夫?」と首を傾げざるを得ない生徒は少なからず存在する。そういう生徒も良い意味で予測を裏切ってくれるとありがたいのだが、予測に違わず、職場を転々としたり、転職したり、どこに行ったのかわからなくなったりする卒業生がいることも事実だ。
それから就職先によっても、ずいぶんと卒業生のスキルに差が出てくることも事実としてある。まだまだ人を育てるということに未熟な職場もある。そもそもそこの管理者のスキルに首を傾げざるを得ない事業者で、若い新卒の介護福祉士がまっすぐ育つわけがないと思う。才能を開花させるのも、枯れさせるのも、最初に出会った上司に左右されるという面もあるのだから、新卒者を教育する介護現場の職員は心して欲しい。
それと待遇もかなり事業間格差がある。無論、学生は正職員を希望し、ほとんどがその希望はかなうのではあるが、正職員とはいっても、その実態はかなり格差がある。特に事業主体の小さな事業者であればあるほど、定期昇給さえまともにない正職員というのもあるし、賞与のない正職員もある。つまり常勤職員ではあるが、まともな待遇ではない正職員も多いので、正職員という言葉だけで選んではいけないという実態がある。
事実、僕の施設には、中途募集をかけると、よそのグループホームの「正職員」が応募してくることが多いが、その正職員の年間収入は、当施設の同じ経験年数の「契約職員」より低い。正職員と比較すれば、はるかに待遇差がある。そう言う意味では、当施設の待遇は、地域の中では極めて良いほうだと思う。現に、僕が講師を努めている専門学校を卒業して、僕の施設に就職している介護職員で、勤続年数が10年以上になっている職員は多いが、それらの職員は主任、副主任クラスになって活躍して、奥さんが専業主婦でもきちんと家族を養っている。
勤続年数に応じた給与を手に入れ、つましくとも、普通に家族を養える待遇ではないと、この職業にに人材は育たないと思う。
そう言う意味では、給料表のない事業者は要注意である。それがないと、定期昇給があるかどうかさえ経営者の胸三寸である。ましてや昇給額もその時になってみないとわからないということになり、人生設計が立てられないのだから。
最近では、退職共済を脱退して、退職金のない職場や、少ない掛金でわずかな金額の退職金しかない事業者も多くなっている。この場合、月の給与手取り額は共済会費のない分高くなるのだが、実質年収は共済会に入っている職場よりかなり低くなるので、生にはその部分も注視して欲しいところである。しかしなかなかそこまで見て職場を選ぶ学生は少ない。せっかく選べる立場にいるのに、もったいないと思う。
どちらにしても学生諸君は、身分だけではなく、その内容もきちんと見て職場を選んだほうが良い。選ぶことができないのであれば仕方ないが、売り手市場なのだから、自らがスキルを高めれば、自ずとそれらを選ぶことができる立場に置くことができるというメリットを活かす自分教育をすべきである。
10年後の自分が、自分自身を後悔しないように。
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介護・福祉情報掲示板(表板)
>そもそもそこの管理者のスキルに首を傾げざるを得ない事業者で、若い新卒の介護福祉士がまっすぐ育つわけがないと思う。才能を開花させるのも、枯れさせるのも、最初に出会った上司に左右されるという面もあるのだから、新卒者を教育する介護現場の職員は心して欲しい。
拝読し、改めて背筋が伸びました。可能性の芽は誰にでもあり、それを育てるのか、それとも摘み取ってしまうのか。果たして良い職員という基準は何なのか、誰にとって良い職員なのか。それを伝えていく事ができているのか、いないのか。育成について考えない日って無いですね。
“教育は共育、共に育つ”、という言葉。僕が好きな言葉の一つです。