今年度から日本社会福祉士会など7団体でつくる「認定社会福祉士認証・認定機構」(橋本正明・運営委員長)が、認定社会福祉士と認定上級社会福祉士の認定を開始する。

それぞれの資格とは以下のとおりである。

認定社会福祉士
社会福祉士及び介護福祉士法の定義に定める相談援助を行う者であって、所属組織を中心にした分野における福祉課題に対し、倫理綱領に基づき高度な専門知識と熟練した技術を用いて個別支援、他職種連携及び地域福祉の増進を行うことができる能力を有することを認められた者をいう。

認定上級社会福祉士
社会福祉士及び介護福祉士法の定義に定める相談援助を行う者であって、福祉についての高度な知識と卓越した技術を用いて、倫理綱領に基づく高い倫理観をもって個別支援、連携・調整及び地域福祉の増進等に関して質の高い業務を実践するとともに、人材育成において他の社会福祉士に対する指導的役割を果たし、かつ実践の科学化を行うことができる能力を有することを認められた者をいう。

このことについて以前僕は、「何のための専門社会福祉士だか・・・。」という記事を書いて、新たな民間資格創設に否定的な立場から論評したことがある。

しかしこのことに関して「上級資格なんていうからおかしくなる」「新しい資格はソーシャルワーカーに序列を持ち込むものではない」「質の担保のために勉強しなさいということ」と反論する馬鹿がいる。

はっきり言ってこうした意見しか吐けない連中は、認識に欠ける傍観者でしかない。

「認定社会福祉士認証・認定機構」は新しく認定する資格を、「実践能力の高い社会福祉士の上級民間資格」と明言しているのだ。明らかに序列として、社会福祉士は新設資格より下位に置かれているのである。

しかもこの資格は特定の職能団体に所属する会員しか認定されない。スキルを高める勉強をしている個人であっても、職能団体の正会員ではない限り認定されないのだ。どこかのお馬鹿がいうように「スキルを高めるために日頃から勉強しなさい」っていう呑気な意味だけではないってことだ。

しかし最大の問題点は、そんなところにあるんじゃなくて、この資格創設の経緯にあることになぜ気がつかないのだろう。

もともとこの資格創設については、07年の社会福祉士及び介護福祉士法の改正の際に、附帯決議に専門社会福祉士の創出が盛り込まれたことに端を発している。

この決議を受け、専門社会福祉士認定制度の在り方が「専門社会福祉士研究委員会」で検討され、専門社会福祉士は分野を超えて「社会福祉士及び介護福祉士法の定める相談援助を行う者であって、福祉についての卓越した技術を用いて、倫理綱領に基づく高い倫理観をもって個別支援、連携、調整及び地域福祉の増進等に関して質の高い業務を実践するとともに、人材育成において他の社会福祉士に対する指導的役割を果たし、かつ実践の科学化をおこなうことができる能力を有することを認められた者をいう」と定義されたものなのだ。

つまり新設資格は、法律の付帯決議という形が発端であるから、政治主動の決議に基づいているものだが、そこに至る経緯から見ると、付帯決議につながるまでに国(厚生労働省)の強い意志を感じざるを得ないものだ。

このことに関連するので紹介しておくが、「第2回介護支援専門員の資質向上と今後のあり方の関する検討会」の中で、日本福祉大学の野中構成員が、資格と制度との関係について次のように述べている。

「ケアマネジャーにとって一番不幸なのは、日本のケアマネにとって一番不幸なのは、日本では医師とか看護とかは技術があって、あとから制度的に制限されてきたというか、制度が出来たわけですが、ケアマネの場合は技術が出来る前から制度が出来てしまったので、何かおかしなことに厚生労働省がケアマネジャーを指導しているわけですね。これは無理です。医師を厚生労働省は指導できません。で、医師を評価するのには、医師が、医師同士が評価するってのは可能ですけれども、厚生労働省が医師を評価しはじめたら、これは技術が荒廃をしてしまいますよね。この辺のそもそも論が少し欠けていたんではないかなというふうに思います。」

このことは極めて重要な視点なのだ。社会福祉士という資格が、どういう経緯で、どのようなプロセスを経て誕生したか思い出して欲しい。

社会福祉士という資格も、現場でソーシャルワークを実践する社会福祉援助の専門家の実践の積み重ねがあって、そうした援助技術を持った人を専門国家資格として認めさせようというソーシャルアクションが生まれたことに端を発している。しかしその資格創設には茨の道があって、そうした国家資格ができると、既存の専門職の職権が狭められたり、専門職に対する人件費支出がより高額になったりすることの懸念からたくさんの抵抗勢力・反対者などにより、様々なかたちで妨害活動が展開されるなどしたが、紆余曲折があって、業務独占ではなく名称独占資格として国家資格化が図られたという歴史と経緯がある。

つまり社会福祉士も技術があって制度化されたもので、それゆえに専門職としての独立性を得て、国の評価によりその援助技術が揺れるような立場にはなっていないのである。名称独占の資格であるのに、遅々としたあゆみではあるが確実に、その資格によって就業できる場所も増えてきている。

しかるに、社会福祉士の上位資格に位置づけ新設される認定社会福祉士と認定上級社会福祉士は、国が主導して付帯決議に盛り込まれた考え方をもとに創設されるものだ。これにより制度がまずありきの上位資格に国がそのあり方、援助技術に介入できるという道をつけてしまったことになる。その下位に位置する社会福祉士も、今以上に国の意思によりその資格のあり方、援助技術がともに介入を受けることになるのだ。

日本社会福祉士会は、本来こうした上位資格は必要ないというアクションを起こすべきだと思うが、そうしないだけではなく、こうした国の意図に気づかず、職能団体会員にしか資格が与えられず、養成研修を実施できるという餌に釣られて、その資格創設に手を貸すという愚かな方向に走った。これはいずれこの団体の最大の罪と悔恨事になるであろう。

「認定社会福祉士認証・認定機構」の橋本運営委員長は、昨年、キャリアブレインの取材に対し、認定社会福祉士制度の意義について、「専門性が明確になり、仕事に対するモチベーションの向上や、キャリアアップ、独立などにつながるのではないか」と述べているが、むしろその結果は、ソーシャルワーク技術を相互評価すべき社会福祉士の有資格者の地位を貶め、国家の社会福祉士という資格に対する介入度合いを強め、その独立性を著しく削ぐ結果にしかならないだろう。

これはいずれ歴史が証明するだろう。

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