2010年3月に札幌市北区のグループホーム「みらい とんでん」で起きた火災死亡事故を覚えている関係者は多いだろう。その火災では入居していた7人の方々が亡くなっている。
この火災の原因について、札幌市消防局は2012年3月27日に最終の調査結果を発表した。あの事故から2年を経ての結論である。
それによると、出火原因は1階食堂の石油ストーブ上に布類が接触したことであると断定している。ただし布が接触した経緯については証拠が少なく特定できなかったとした。
出火原因を石油ストーブ上に布類が接触したことによるものとした理由については、ストーブの天板の上から、直径約1ミリの綿の繊維片を検出したことにより、布類が引火したと断定したものであると説明している。
布が接触した経緯は、誰かがストーブ上に布類を載せたか、食堂が吹き抜け構造のため、2階に干してあった洗濯物が落ちたかの2点に絞られたが、特定には至らなかったという。ホームではシーツやタオル、衣類を2階の吹き抜け部分の手すりに日常的に干していたといい、洗濯ばさみなどで固定はしていなかったとみられる。
この火災原因を特定するに際し、札幌市消防局は2011年2月に綿の含有率の異なるパジャマ3種類を使い、同型のストーブ上に置いて再現実験を行っている。その結果、約8分で着火し、約10分で1メートルほどの炎が立ち、壁に延焼することを確認している。
ホームでは出火当時、職員は別室でおむつ交換を行っていたとされており、吹き抜け構造だったことなどから火の回りが早かったとみられ、職員が食堂に戻った時には、すでに自力消火ができない状態だったと結論付けている。
このように石油ストーブ上(天板)に布類が接触したことが出火原因ということは確定したものの、「誰かがストーブ上に布類を載せたか、食堂が吹き抜け構造のため、2階に干してあった洗濯物が落ちたかの2点に絞られたが、特定には至らなかった。」という不明部分は残されているわけだ。
しかし分かったことからだけでも学ばねばならないこと、改善しなければならないことがある。まずこの画像をご覧いただきたい。

これは「みらい とんでん」の火災を引き起こした原因となった石油ストーブである。消火後の現場検証時に撮影されたものだ。ご覧のように天板に薬缶などをおくとお湯が沸かせるタイプのものだ。ここに直接手を置けば火傷をする。
もしここ(食堂)に設置されていたストーブが、天板が熱くならない石油ファンヒーター等であったなら、この火災は起きていなかったと断言できる。7人の命は奪われなかったのである。
北国の方はご存知だろうが、このような天板が熱くなる石油ストーブは年々その数が減っている。それはストーブ本体が熱くならないタイプでも、広い室内を充分暖めることのできる性能のよいストーブが多くなったからである。小さな子供のいる家庭、出産をひかえた家庭なら、安全面からストーブ本体が熱くならないタイプのものに買い替える場合も多い。
少なくとも「室温」を理由にして、天板が熱くなる石油ストーブを選ぶ必要性はない。グループホームは家庭の延長線上にあり、昔から使いなれた「馴染みの家具」を置いた方が良いとされるが、だからと言って暖房機後までわざわざ古いタイプのものを使う必要はない。そもそも現在グループホームに入っている方々の若い頃の暖房器具は、石油ストーブではなく、薪ストーブや石炭ストーブだったのだから、石油ストーブのタイプを古いものにする理由なんて全くないのだ。
どのような理由があろうと、認知症の方を対象にしたグループホームが、ストーブ本体が熱くなって、可燃物が置かれたら燃え上がる可能性のあるタイプのものを使用してはいけない。どんなに注意してもヒューマンエラーというものは100%なくならないし、そもそも危険認知に欠ける認知症の方、見当識障害のある方に、ストーブにものを置いては危険だと言っても始まらないのである。
小規模で、家庭的な環境を重視するグループホームは、一面燃えやすい建物構造であるのだから、火の元には細心・最大の注意が必要だ。スプリンクラーも大事だが、安全な暖房器具を選ぶことは火災予防には最も重要な視点である。
人の命を預かる介護サービス事業者は、今回の悲惨な火災事故の原因を教訓にして、天板など、ストーブ本体が熱せられ、燃えやすいものを置けば着火する危険性のある暖房器具は即刻捨てて、安全な暖房器具に替えるべきだ。幸い季節は春に向かい、暖房器具も安く手に入る時期である。画像のストーブと同じタイプのものを使っている事業者は、すぐに買い替えを検討すべきである。
なお事故が起こった当時、札幌市消防局は再発防止策として、市内に約240施設あるグループホームや認知症関連施設にストーブの周りに物が置かれていないかなどをチェックする自主点検リストを配ったり、自動火災報知設備や非常通報設備を設置したりしている。しかしいくらものをストーブ周辺から片付けても、何らかの理由で、ストーブに可燃物が触れることを100%防ぐことは不可能だし、通報装置はあくまで後追い策だ。火災の危険性をできるだけ少なくできる暖房器具の設置こそ急務である。
なお僕はこの火災事故の裁判に関連して、有識者の一人として意見陳述人となっており、その際に知り得た情報については守秘義務により情報提供できないため、このブログ記事については、新聞に書かれている内容のみを元にして書いていることを付記しておく。
新刊のネットからの購入は
楽天ブックスはこちら
アマゾンはこちら
↑それぞれクリックして購入サイトに飛んでください。
介護・福祉情報掲示板(表板)
この火災の原因について、札幌市消防局は2012年3月27日に最終の調査結果を発表した。あの事故から2年を経ての結論である。
それによると、出火原因は1階食堂の石油ストーブ上に布類が接触したことであると断定している。ただし布が接触した経緯については証拠が少なく特定できなかったとした。
出火原因を石油ストーブ上に布類が接触したことによるものとした理由については、ストーブの天板の上から、直径約1ミリの綿の繊維片を検出したことにより、布類が引火したと断定したものであると説明している。
布が接触した経緯は、誰かがストーブ上に布類を載せたか、食堂が吹き抜け構造のため、2階に干してあった洗濯物が落ちたかの2点に絞られたが、特定には至らなかったという。ホームではシーツやタオル、衣類を2階の吹き抜け部分の手すりに日常的に干していたといい、洗濯ばさみなどで固定はしていなかったとみられる。
この火災原因を特定するに際し、札幌市消防局は2011年2月に綿の含有率の異なるパジャマ3種類を使い、同型のストーブ上に置いて再現実験を行っている。その結果、約8分で着火し、約10分で1メートルほどの炎が立ち、壁に延焼することを確認している。
ホームでは出火当時、職員は別室でおむつ交換を行っていたとされており、吹き抜け構造だったことなどから火の回りが早かったとみられ、職員が食堂に戻った時には、すでに自力消火ができない状態だったと結論付けている。
このように石油ストーブ上(天板)に布類が接触したことが出火原因ということは確定したものの、「誰かがストーブ上に布類を載せたか、食堂が吹き抜け構造のため、2階に干してあった洗濯物が落ちたかの2点に絞られたが、特定には至らなかった。」という不明部分は残されているわけだ。
しかし分かったことからだけでも学ばねばならないこと、改善しなければならないことがある。まずこの画像をご覧いただきたい。

これは「みらい とんでん」の火災を引き起こした原因となった石油ストーブである。消火後の現場検証時に撮影されたものだ。ご覧のように天板に薬缶などをおくとお湯が沸かせるタイプのものだ。ここに直接手を置けば火傷をする。
もしここ(食堂)に設置されていたストーブが、天板が熱くならない石油ファンヒーター等であったなら、この火災は起きていなかったと断言できる。7人の命は奪われなかったのである。
北国の方はご存知だろうが、このような天板が熱くなる石油ストーブは年々その数が減っている。それはストーブ本体が熱くならないタイプでも、広い室内を充分暖めることのできる性能のよいストーブが多くなったからである。小さな子供のいる家庭、出産をひかえた家庭なら、安全面からストーブ本体が熱くならないタイプのものに買い替える場合も多い。
少なくとも「室温」を理由にして、天板が熱くなる石油ストーブを選ぶ必要性はない。グループホームは家庭の延長線上にあり、昔から使いなれた「馴染みの家具」を置いた方が良いとされるが、だからと言って暖房機後までわざわざ古いタイプのものを使う必要はない。そもそも現在グループホームに入っている方々の若い頃の暖房器具は、石油ストーブではなく、薪ストーブや石炭ストーブだったのだから、石油ストーブのタイプを古いものにする理由なんて全くないのだ。
どのような理由があろうと、認知症の方を対象にしたグループホームが、ストーブ本体が熱くなって、可燃物が置かれたら燃え上がる可能性のあるタイプのものを使用してはいけない。どんなに注意してもヒューマンエラーというものは100%なくならないし、そもそも危険認知に欠ける認知症の方、見当識障害のある方に、ストーブにものを置いては危険だと言っても始まらないのである。
小規模で、家庭的な環境を重視するグループホームは、一面燃えやすい建物構造であるのだから、火の元には細心・最大の注意が必要だ。スプリンクラーも大事だが、安全な暖房器具を選ぶことは火災予防には最も重要な視点である。
人の命を預かる介護サービス事業者は、今回の悲惨な火災事故の原因を教訓にして、天板など、ストーブ本体が熱せられ、燃えやすいものを置けば着火する危険性のある暖房器具は即刻捨てて、安全な暖房器具に替えるべきだ。幸い季節は春に向かい、暖房器具も安く手に入る時期である。画像のストーブと同じタイプのものを使っている事業者は、すぐに買い替えを検討すべきである。
なお事故が起こった当時、札幌市消防局は再発防止策として、市内に約240施設あるグループホームや認知症関連施設にストーブの周りに物が置かれていないかなどをチェックする自主点検リストを配ったり、自動火災報知設備や非常通報設備を設置したりしている。しかしいくらものをストーブ周辺から片付けても、何らかの理由で、ストーブに可燃物が触れることを100%防ぐことは不可能だし、通報装置はあくまで後追い策だ。火災の危険性をできるだけ少なくできる暖房器具の設置こそ急務である。
なお僕はこの火災事故の裁判に関連して、有識者の一人として意見陳述人となっており、その際に知り得た情報については守秘義務により情報提供できないため、このブログ記事については、新聞に書かれている内容のみを元にして書いていることを付記しておく。
新刊のネットからの購入は
楽天ブックスはこちら
アマゾンはこちら
↑それぞれクリックして購入サイトに飛んでください。
介護・福祉情報掲示板(表板)


感動の完結編。

重い言葉だと感じました。