介護保険制度改正と報酬改定の時期」で解説しているように、介護保険制度は6年を1サイクルとして改正が行われている。

そうなると診療報酬は2年に一度改定されているのだから、介護保険制度改正は必ず診療報酬改定とリンクすることになる。それは単に医療と介護の財源の奪い合いということを示す問題ではなく、介護保険サービスに関連する診療報酬算定ルールの改正もあり得るということを示している。

今回の診療報酬改訂の中で、何が介護保険サービスに影響してくるだろうか。一番関連性の深い問題は、医療保険リハビリと介護保険リハビリの併用期間の延長だろう。

医療保険リハビリと介護保険リハビリの適用関係を整理する」という記事で今年3月までの適用関係を示しているが、この中で、医療保険リハビリから、介護保険リハビリへの移行期間の1ケ月が併用期間(医療保険リハビリを行い診療報酬を算定しながら、介護保険の通所リハビリや訪問リハビリも利用できる期間)とされていたが、4月からはこの期間が2月に延長されている。

そのルールは以下の通りである。

・リハビリテーションの医療から介護への円滑な移行
第1 基本的な考え方
1.医療保険のリハビリテーションから介護保険のリハビリテーションへの円滑な移行を促進するため、介護保険のリハビリテーションへ移行後に医療保険の疾患別リハビリテーションを算定できる期間を、現在の1月間から2月間に延長する。
2.また、介護保険のリハビリテーションへ移行した後に医療保険の疾患別リハビリテーションを算定している期間中は適宜、介護保険への移行に向けた計画を策定することとし、医療保険の疾患別リハビリテーションの算定可能単位数を逓減制とする。

第2 具体的な内容
1.介護保険のリハビリテーションに移行後に医療保険の疾患別リハビリテーションを算定できる期間を2月間に延長する。
現 行 
【疾患別リハビリテーション】
医療保険から介護保険への円滑な移行が期待できることから、1月間に限り、同一疾患等について介護保険におけるリハビリテーションを行った日以外の日に医療保険における疾患別リハビリテーション料を算定することが可能である。

改定案
【疾患別リハビリテーション】
医療保険から介護保険への円滑な移行が期待できることから、2月間に限り、同一疾患等について介護保険におけるリハビリテーションを行った日以外の日に医療保険における疾患別リハビリテーション料を算定することが可能である。

2.また、当該移行期間の2月目については疾患別リハビリテーションを算定できる単位数を7単位までとする。

現 行
【疾患別リハビリテーション】
[算定要件]
標準的算定日数を超えてリハビリテーションを行った場合は、1月13単位に限り算定できるものとする。

改定案
【疾患別リハビリテーション】
[算定要件]
標準的算定日数を超えてリハビリテーションを行った場合は、1月13単位に限り算定できるものとする。ただし、介護保険への円滑な移行を目的として、要介護被保険者等に2月間に限り医療保険から疾患別リハビリテーションを算定している患者については、2月目について1月7単位に限り算定できるものとする。

以上である。勿論このことは、まず医療関係者が知っておかねばならない問題である。特に「介護保険のリハビリテーションへ移行した後に、医療保険の疾患別リハビリテーションを算定している期間中は適宜、介護保険への移行に向けた計画を策定する」というルールは、介護保険サービス関係者はまったく関知すべき問題ではなく、医療機関の問題で、これを行っていないで診療報酬返還命令を受けるのは医療機関である。

また過去のケースを振り返ると、医療保険リハビリから介護保険リハビリへの移行ルールの混乱の中には、医療機関がそのルールを知らずに、介護保険の通所リハビリなどを紹介後も、医療機関での外来リハビリを継続し、そのことの情報提供がないまま、介護保険リハと併用請求してトラブルになるというケースが数多く含まれており、これも介護サービス関係者が関知すべき問題ではなく、このことに関連して介護サービス関係者(特に居宅サービス計画を作成し、通所リハビリ等を計画した介護支援専門員)が、医療機関側から文句をつけられる筋合いは何もない。

しかしこのルールはもともと「リハビリテーションの医療から介護への円滑な移行」であり、そのためには「医療と介護の円滑な連携」が当然求めらてくるわけで、こういうルールを介護支援専門員始め、介護サービス関係者が熟知し、さらに医療機関は「介護保険への移行に向けた計画」を策定しなければならないのだから、その情報をきちんと求めるための知識と姿勢も不可欠である。

このほか、介護保険サービス関連の診療報酬新ルールとしては次のようなものがある。

医療と介護の円滑な連携について
第1 基本的な考え方
1.在宅医療における介護施設との連携等、介護保険との円滑な連携を推進するため、必要な見直しを行う。
2.訪問看護は医療保険と介護保険の両保険制度に位置づけられており、制度間の報酬上の違いについては、利用者の理解を得られにくい点もあるため、診療報酬と介護報酬の同時改定であることを踏まえ、必要な見直しを行う。

第2 具体的な内容
1.特定施設入居者に対する訪問診療料の引き上げを行う。
2.特養における看取りの充実を図るため、特養の配置医師と在支診・在支病といった外部の医師が連携して、特養における看取りを行った場合について評価を行う。
3.総合評価加算を引き上げるとともに、算定可能病棟を拡充する。
4.退院後の訪問看護
医療依存度の高い状態の要介護被保険者等である患者に対し、退院直後の2週間に限り、特別訪問看護指示に基づき訪問看護が提供できることを明示する。
5.訪問看護療養費の早朝・夜間・深夜加算
現在、医療保険においては、標榜時間外の訪問看護について、その他利用料として自費を徴収しているが、早朝、夜間、深夜加算を介護保険と同様に医療保険においても新設する
6.重症者管理加算の名称変更や要件の見直し
介護保険における同趣旨の特別管理加算との齟齬を解消するために以下の見直しを行う。
(1)医療保険の重症者管理加算を特別管理加算とし、名称を統一する。
(2)重症者管理加算および在宅移行加算における「1月以内の期間に4日以上の訪問看護・指導を行うこと」とする算定要件を削除する。
7.医師の指示書の交付範囲の拡大
介護報酬改定における新サービスの新設および社会福祉士及び介護福祉士法の一部改正により介護職員等のたん吸引等が可能となったことにより、医師の指示書の交付範囲が拡大したことに伴う必要な見直しを行う。

ということで、今後の告示内容に、介護サービス関係者も注目しておく必要があるだろう。

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