このブログに何度か書いてきたが、介護保険法において、「居宅サービス計画」と「施設サービス計画」は法的位置付けが異なっている。
今年、介護支援専門員の資格を得た人は、この違いについてしっかり把握しておいてほしい。なぜならこのことを理解していないと、ケアプランをなぜ作るのか?という根本的な理由が不明瞭になり、それは自分の仕事の意味を失うことになりかねないからだ。
だから今日の記事は重要である。当たり前のことを書いているだけだが、知らない人が実に多い。もしケアプランの法的位置付けを分かっていない人がいたら、この記事を読むように勧めていただきたい。特に今年、介護支援専門員の資格を取得した人は、実務に携わる前にこの理解をきちんと持っていただきたい。
介護保険法第41条は「市町村は、要介護認定を受けた被保険者(以下「要介護被保険者」という。)のうち居宅において介護を受けるもの(以下「居宅要介護被保険者」という。)が、都道府県知事が指定する者(以下「指定居宅サービス事業者」という。)から当該指定に係る居宅サービス事業を行う事業所により行われる居宅サービス(以下「指定居宅サービス」という。)を受けたときは、当該居宅要介護被保険者に対し、当該指定居宅サービスに要した費用(特定福祉用具の購入に要した費用を除き、通所介護、通所リハビリテーション、短期入所生活介護、短期入所療養介護及び特定施設入居者生活介護に要した費用については、食事の提供に要する費用、滞在に要する費用その他の日常生活に要する費用として厚生労働省令で定める費用を除く。以下この条において同じ。)について、居宅介護サービス費を支給する。ただし、当該居宅要介護被保険者が、第三十七条第一項の規定による指定を受けている場合において、当該指定に係る種類以外の居宅サービスを受けたときは、この限りでない。」
と規定している。つまり居宅介護サービス費(サービス利用料の保険給付分:通常はサービス料金の9割)は市町村から、利用者に直接支払われるものと規定している。よって介護保険制度のサービス利用料金算定の原則は、利用者はそのサービス費用全額をサービス事業所に支払って、当該事業所からサービス提供証明書を発行してもらい、それを添付して市町村に払い戻し請求をすることで、支払った利用料金の9割分を還付してもらうという「償還払い」である。
しかし同条6項では、「居宅要介護被保険者が指定居宅サービス事業者から指定居宅サービスを受けたとき(当該居宅要介護被保険者が第四十六条第四項の規定により指定居宅介護支援を受けることにつきあらかじめ市町村に届け出ている場合であって、当該指定居宅サービスが当該指定居宅介護支援の対象となっている場合その他の厚生労働省令で定める場合に限る。)は、市町村は、当該居宅要介護被保険者が当該指定居宅サービス事業者に支払うべき当該指定居宅サービスに要した費用について、居宅介護サービス費として当該居宅要介護被保険者に対し支給すべき額の限度において、当該居宅要介護被保険者に代わり、当該指定居宅サービス事業者に支払うことができる。」
としている。つまりこの規定は、指定居宅サービスが「当該指定居宅介護支援の対象となっている場合」に適用されるのであるから、その意味は居宅介護支援事業所により居宅サービス計画が立てられている場合は、市町村が直接利用者に支払うべき9割分を、居宅サービス事業者に支払うことができると定めたものだと解釈できる。
このように「居宅サービス計画」が立てられている場合に、利用者はサービス利用の際に1割の自己負担をするだけでよく、9割分はサービス事業者が直接請求して支払を受けるという「現物給付」が可能になるのだ。
よって「居宅サービス計画」とは、居宅サービス利用に必要となる計画ではなく、あくまで償還払いを現物給付化する手段であり、もし利用者が償還払いでサービス利用することを厭わない場合、居宅サービス計画を作らずにサービス利用することは可能であり、法的にみてもそれは問題ないと言える。
だから各サービス事業者の省令では「居宅サービス計画が作成されている場合は、当該計画に沿った指定訪問介護を提供しなければならない」として、居宅サービス計画がない場合もあり得ることを示しており、これは何も緊急利用に限っているわけでもないのである。
ところでこの場合、居宅サービスに位置づけられている「特定施設」は、居宅介護支援を受けることのないサービスである。そのため特定施設は、サービスを現物給付化する手段として、別に基準省令第百八十条 に「老人福祉法第二十九条第一項 に規定する有料老人ホームである指定特定施設において指定特定施設入居者生活介護を提供する指定特定施設入居者生活介護事業者は、当該指定特定施設入居者生活介護を法定代理受領サービスとして提供する場合は、利用者の同意がその条件であることを当該利用者に説明し、その意思を確認しなければならない。」として、利用者同意を現物給付化の条件にしているものである。
グループホームも同様に居宅サービスであり、かつ居宅介護支援を受けることのないサービスであるが、それは地域密着型サービスに位置づけられており、介護保険法第四十二条の二、6項で「要介護被保険者が指定地域密着型サービス事業者から指定地域密着型サービスを受けたとき(当該要介護被保険者が第四十六条第四項の規定により指定居宅介護支援を受けることにつきあらかじめ市町村に届け出ている場合であって、当該指定地域密着型サービスが当該指定居宅介護支援の対象となっている場合その他の厚生労働省令で定める場合に限る。)は、市町村は、当該要介護被保険者が当該指定地域密着型サービス事業者に支払うべき当該指定地域密着型サービスに要した費用について、地域密着型介護サービス費として当該要介護被保険者に対し支給すべき額の限度において、当該要介護被保険者に代わり、当該指定地域密着型サービス事業者に支払うことができる。」
としている。つまり地域密着型サービスについては、後述する施設サービスと同様に、地域密着型サービスを利用することそのものが現物給付の手段となっており、利用者同意や地域密着型サービス計画等を現物給付化の条件にしているわけではないのである。
施設サービス計画についても、介護保険法上に現物給付化する手段であるという規定は存在しない。
なぜなら介護保険法第四十八条では、居宅サービスと同様に、市町村は「当該要介護被保険者に対し、当該指定施設サービス等に要した費用(食事の提供に要する費用、滞在に要する費用その他の日常生活に要する費用として厚生労働省令で定める費用を除く。以下この条において同じ。)について、施設介護サービス費を支給する。」としているものの、これを現物給付化するために、市町村が介護保険施設に施設サービスの費用を、当該施設に直接支払うことを定めた同条第4項規定は「要介護被保険者が、介護保険施設から指定施設サービス等を受けたときは、市町村は、当該要介護被保険者が当該介護保険施設に支払うべき当該指定施設サービス等に要した費用について、施設介護サービス費として当該要介護被保険者に支給すべき額の限度において、当該要介護被保険者に代わり、当該介護保険施設に支払うことができる。」としている。
つまり施設サービス費は「要介護被保険者が、介護保険施設から指定施設サービス等を受けたとき」に現物給付化されるのである。地域密着型サービスの条件と同じである。
しかしこれらは、なんともおかしな規定条文で、それなら最初から償還払いの原則規定を作らなければよいようなものだ。だって施設サービス費の支給が必要になる状態とは、要介護者が施設サービスを利用している以外にあり得ないのだからである。しかし実際に法律がそうなっている以上は、素直にその条文に従う以外ない。この規定で分かるように、施設サービスは、施設サービス計画の作成有無に関わらず「要介護被保険者が、介護保険施設から指定施設サービス等を受けたとき」に現物給付化されるのである。
では居宅サービス計画が、サービス利用の際に利用者がサービス事業者に1割負担分を払うだけでよくなる「現物給付」の手段であるのに対して、施設サービス計画が「現物給付化」の手段でないとしたら、それはどういう意味があるのだろう。
ここで介護保険法を読んでみると、介護老人福祉施設を定めている第8条24項には、
「この法律において「介護老人福祉施設」とは、老人福祉法第二十条の五に規定する特別養護老人ホーム(入所定員が三十人以上であるものに限る。以下この項において同じ。)であって、当該特別養護老人ホームに入所する要介護者に対し、施設サービス計画に基づいて、入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話、機能訓練、健康管理及び療養上の世話を行うことを目的とする施設をいい、「介護福祉施設サービス」とは、介護老人福祉施設に入所する要介護者に対し、施設サービス計画に基づいて行われる入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話、機能訓練、健康管理及び療養上の世話をいう。」とされている。つまり介護老人福祉施設は施設サービス計画に基づいて行われるとされている。
基準省令でも、例えば特別養護老人ホーム(指定介護老人福祉施設)の場合は、厚生省令第三十九号第一条で、「指定介護老人福祉施設は、施設サービス計画に基づき、可能な限り、居宅における生活への復帰を念頭に置いて、入浴、排せつ、食事等の介護、相談及び援助、社会生活上の便宜の供与その他の日常生活上の世話、機能訓練、健康管理及び療養上の世話を行うことにより、入所者がその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるようにすることを目指すものでなければならない。」と定めている。
つまり施設サービスは「施設サービス計画に基づき」提供される必要があるという規定で、施設サービス計画のないサービス提供を認めていないということになる。
(このことは、居宅サービス計画に位置づけられ、サービス提供される居宅サービスについて、計画作成義務のあるサービス事業所の計画:訪問介護計画や通所介護計画、特定施設やグループホームの計画等:も同じ扱いである。)
よって結論としては、居宅サービス計画は、あくまで償還払いのサービスを現物給付化する手段であり、その計画がない場合も償還払いであればサービス提供は可能である。そしてその内容は、最も適切なサービスの組合せを検討し、サービススケジュールを組み立てることを主としている。
一方、施設サービス計画は、サービスの現物給付化とは関係はないが、サービス提供の必須条件とされているため、それがないサービス提供は認められていない。そしてその内容は、施設サービスとして提供する介護サービスの具体的内容を示したもので、個別支援計画と言い換えることができるものだ。(下図参照)

そうなると、施設入所初日から原則「施設サービス計画」がない状態でのサービス提供が許されないということになる。
しかしすべてのケースにおいてアセスメントを行い、サービス担当者会議または紹介により施設サービス計画書原案を作成し、利用者又は家族に説明し、同意を得てサービスを開始できるとは限らない。
緊急的な入所も含めて、充分にアセスメントができない状態での施設入所も考えられるためだ。
この場合でも施設サービス計画は必ず作成する必要があり、そのために「暫定ケアプラン」と言う方法がある。暫定ケアプランと言うのは、サービス担当者会議等の一連の手続を踏まずに作成して、後に必要な手順を踏むことで、それを本プランと変更するものである。
よって緊急入所も含めて、介護施設に入所する際は、施設サービス計画として、少なくとも暫定ケアプランは作っておく必要があるという理解が必要である。
暫定ケアプランもない状態で入所受け入れをしてしまえば、最悪、法令に沿わないサービス提供として、介護給付費の返還指導があり得るという注意が必要である。
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今年、介護支援専門員の資格を得た人は、この違いについてしっかり把握しておいてほしい。なぜならこのことを理解していないと、ケアプランをなぜ作るのか?という根本的な理由が不明瞭になり、それは自分の仕事の意味を失うことになりかねないからだ。
だから今日の記事は重要である。当たり前のことを書いているだけだが、知らない人が実に多い。もしケアプランの法的位置付けを分かっていない人がいたら、この記事を読むように勧めていただきたい。特に今年、介護支援専門員の資格を取得した人は、実務に携わる前にこの理解をきちんと持っていただきたい。
介護保険法第41条は「市町村は、要介護認定を受けた被保険者(以下「要介護被保険者」という。)のうち居宅において介護を受けるもの(以下「居宅要介護被保険者」という。)が、都道府県知事が指定する者(以下「指定居宅サービス事業者」という。)から当該指定に係る居宅サービス事業を行う事業所により行われる居宅サービス(以下「指定居宅サービス」という。)を受けたときは、当該居宅要介護被保険者に対し、当該指定居宅サービスに要した費用(特定福祉用具の購入に要した費用を除き、通所介護、通所リハビリテーション、短期入所生活介護、短期入所療養介護及び特定施設入居者生活介護に要した費用については、食事の提供に要する費用、滞在に要する費用その他の日常生活に要する費用として厚生労働省令で定める費用を除く。以下この条において同じ。)について、居宅介護サービス費を支給する。ただし、当該居宅要介護被保険者が、第三十七条第一項の規定による指定を受けている場合において、当該指定に係る種類以外の居宅サービスを受けたときは、この限りでない。」
と規定している。つまり居宅介護サービス費(サービス利用料の保険給付分:通常はサービス料金の9割)は市町村から、利用者に直接支払われるものと規定している。よって介護保険制度のサービス利用料金算定の原則は、利用者はそのサービス費用全額をサービス事業所に支払って、当該事業所からサービス提供証明書を発行してもらい、それを添付して市町村に払い戻し請求をすることで、支払った利用料金の9割分を還付してもらうという「償還払い」である。
しかし同条6項では、「居宅要介護被保険者が指定居宅サービス事業者から指定居宅サービスを受けたとき(当該居宅要介護被保険者が第四十六条第四項の規定により指定居宅介護支援を受けることにつきあらかじめ市町村に届け出ている場合であって、当該指定居宅サービスが当該指定居宅介護支援の対象となっている場合その他の厚生労働省令で定める場合に限る。)は、市町村は、当該居宅要介護被保険者が当該指定居宅サービス事業者に支払うべき当該指定居宅サービスに要した費用について、居宅介護サービス費として当該居宅要介護被保険者に対し支給すべき額の限度において、当該居宅要介護被保険者に代わり、当該指定居宅サービス事業者に支払うことができる。」
としている。つまりこの規定は、指定居宅サービスが「当該指定居宅介護支援の対象となっている場合」に適用されるのであるから、その意味は居宅介護支援事業所により居宅サービス計画が立てられている場合は、市町村が直接利用者に支払うべき9割分を、居宅サービス事業者に支払うことができると定めたものだと解釈できる。
このように「居宅サービス計画」が立てられている場合に、利用者はサービス利用の際に1割の自己負担をするだけでよく、9割分はサービス事業者が直接請求して支払を受けるという「現物給付」が可能になるのだ。
よって「居宅サービス計画」とは、居宅サービス利用に必要となる計画ではなく、あくまで償還払いを現物給付化する手段であり、もし利用者が償還払いでサービス利用することを厭わない場合、居宅サービス計画を作らずにサービス利用することは可能であり、法的にみてもそれは問題ないと言える。
だから各サービス事業者の省令では「居宅サービス計画が作成されている場合は、当該計画に沿った指定訪問介護を提供しなければならない」として、居宅サービス計画がない場合もあり得ることを示しており、これは何も緊急利用に限っているわけでもないのである。
ところでこの場合、居宅サービスに位置づけられている「特定施設」は、居宅介護支援を受けることのないサービスである。そのため特定施設は、サービスを現物給付化する手段として、別に基準省令第百八十条 に「老人福祉法第二十九条第一項 に規定する有料老人ホームである指定特定施設において指定特定施設入居者生活介護を提供する指定特定施設入居者生活介護事業者は、当該指定特定施設入居者生活介護を法定代理受領サービスとして提供する場合は、利用者の同意がその条件であることを当該利用者に説明し、その意思を確認しなければならない。」として、利用者同意を現物給付化の条件にしているものである。
グループホームも同様に居宅サービスであり、かつ居宅介護支援を受けることのないサービスであるが、それは地域密着型サービスに位置づけられており、介護保険法第四十二条の二、6項で「要介護被保険者が指定地域密着型サービス事業者から指定地域密着型サービスを受けたとき(当該要介護被保険者が第四十六条第四項の規定により指定居宅介護支援を受けることにつきあらかじめ市町村に届け出ている場合であって、当該指定地域密着型サービスが当該指定居宅介護支援の対象となっている場合その他の厚生労働省令で定める場合に限る。)は、市町村は、当該要介護被保険者が当該指定地域密着型サービス事業者に支払うべき当該指定地域密着型サービスに要した費用について、地域密着型介護サービス費として当該要介護被保険者に対し支給すべき額の限度において、当該要介護被保険者に代わり、当該指定地域密着型サービス事業者に支払うことができる。」
としている。つまり地域密着型サービスについては、後述する施設サービスと同様に、地域密着型サービスを利用することそのものが現物給付の手段となっており、利用者同意や地域密着型サービス計画等を現物給付化の条件にしているわけではないのである。
施設サービス計画についても、介護保険法上に現物給付化する手段であるという規定は存在しない。
なぜなら介護保険法第四十八条では、居宅サービスと同様に、市町村は「当該要介護被保険者に対し、当該指定施設サービス等に要した費用(食事の提供に要する費用、滞在に要する費用その他の日常生活に要する費用として厚生労働省令で定める費用を除く。以下この条において同じ。)について、施設介護サービス費を支給する。」としているものの、これを現物給付化するために、市町村が介護保険施設に施設サービスの費用を、当該施設に直接支払うことを定めた同条第4項規定は「要介護被保険者が、介護保険施設から指定施設サービス等を受けたときは、市町村は、当該要介護被保険者が当該介護保険施設に支払うべき当該指定施設サービス等に要した費用について、施設介護サービス費として当該要介護被保険者に支給すべき額の限度において、当該要介護被保険者に代わり、当該介護保険施設に支払うことができる。」としている。
つまり施設サービス費は「要介護被保険者が、介護保険施設から指定施設サービス等を受けたとき」に現物給付化されるのである。地域密着型サービスの条件と同じである。
しかしこれらは、なんともおかしな規定条文で、それなら最初から償還払いの原則規定を作らなければよいようなものだ。だって施設サービス費の支給が必要になる状態とは、要介護者が施設サービスを利用している以外にあり得ないのだからである。しかし実際に法律がそうなっている以上は、素直にその条文に従う以外ない。この規定で分かるように、施設サービスは、施設サービス計画の作成有無に関わらず「要介護被保険者が、介護保険施設から指定施設サービス等を受けたとき」に現物給付化されるのである。
では居宅サービス計画が、サービス利用の際に利用者がサービス事業者に1割負担分を払うだけでよくなる「現物給付」の手段であるのに対して、施設サービス計画が「現物給付化」の手段でないとしたら、それはどういう意味があるのだろう。
ここで介護保険法を読んでみると、介護老人福祉施設を定めている第8条24項には、
「この法律において「介護老人福祉施設」とは、老人福祉法第二十条の五に規定する特別養護老人ホーム(入所定員が三十人以上であるものに限る。以下この項において同じ。)であって、当該特別養護老人ホームに入所する要介護者に対し、施設サービス計画に基づいて、入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話、機能訓練、健康管理及び療養上の世話を行うことを目的とする施設をいい、「介護福祉施設サービス」とは、介護老人福祉施設に入所する要介護者に対し、施設サービス計画に基づいて行われる入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話、機能訓練、健康管理及び療養上の世話をいう。」とされている。つまり介護老人福祉施設は施設サービス計画に基づいて行われるとされている。
基準省令でも、例えば特別養護老人ホーム(指定介護老人福祉施設)の場合は、厚生省令第三十九号第一条で、「指定介護老人福祉施設は、施設サービス計画に基づき、可能な限り、居宅における生活への復帰を念頭に置いて、入浴、排せつ、食事等の介護、相談及び援助、社会生活上の便宜の供与その他の日常生活上の世話、機能訓練、健康管理及び療養上の世話を行うことにより、入所者がその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるようにすることを目指すものでなければならない。」と定めている。
つまり施設サービスは「施設サービス計画に基づき」提供される必要があるという規定で、施設サービス計画のないサービス提供を認めていないということになる。
(このことは、居宅サービス計画に位置づけられ、サービス提供される居宅サービスについて、計画作成義務のあるサービス事業所の計画:訪問介護計画や通所介護計画、特定施設やグループホームの計画等:も同じ扱いである。)
よって結論としては、居宅サービス計画は、あくまで償還払いのサービスを現物給付化する手段であり、その計画がない場合も償還払いであればサービス提供は可能である。そしてその内容は、最も適切なサービスの組合せを検討し、サービススケジュールを組み立てることを主としている。
一方、施設サービス計画は、サービスの現物給付化とは関係はないが、サービス提供の必須条件とされているため、それがないサービス提供は認められていない。そしてその内容は、施設サービスとして提供する介護サービスの具体的内容を示したもので、個別支援計画と言い換えることができるものだ。(下図参照)

そうなると、施設入所初日から原則「施設サービス計画」がない状態でのサービス提供が許されないということになる。
しかしすべてのケースにおいてアセスメントを行い、サービス担当者会議または紹介により施設サービス計画書原案を作成し、利用者又は家族に説明し、同意を得てサービスを開始できるとは限らない。
緊急的な入所も含めて、充分にアセスメントができない状態での施設入所も考えられるためだ。
この場合でも施設サービス計画は必ず作成する必要があり、そのために「暫定ケアプラン」と言う方法がある。暫定ケアプランと言うのは、サービス担当者会議等の一連の手続を踏まずに作成して、後に必要な手順を踏むことで、それを本プランと変更するものである。
よって緊急入所も含めて、介護施設に入所する際は、施設サービス計画として、少なくとも暫定ケアプランは作っておく必要があるという理解が必要である。
暫定ケアプランもない状態で入所受け入れをしてしまえば、最悪、法令に沿わないサービス提供として、介護給付費の返還指導があり得るという注意が必要である。
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