介護保険のどの法令を見渡しても、報酬改定時期を規定したものはない。しかし実際に介護報酬は3年ごとに改定が行われている。

これは介護保険法・附則において、介護保険事業計画・介護保険事業支援計画が「3年に1度」の見直し義務があることから、それと連動して見直されているものだ。そしてその根拠は「医療保険福祉審議会の議論」の中で「関係者の合意」により「介護報酬の見直しを3年ごとに行うこと」とされたという極めてあいまいなものである。

一方、介護保険制度については介護保険法附則第2条において「介護保険制度については、〜(略)〜この法律の施行後五年を目途としてその全般に関して検討が加えられ、その結果に基づき、必要な見直し等の措置が講ぜられるべきものとする。」 とする規定があり、この見直し根拠に基づいて制度改正が行われる。

制度改正の実際のタイムスケジュールとしては、制度の5年目に本格的な議論を終了させ、6年目に国会に法案を提出し、審議可決したものを7年目の始めから新制度として実施している。この途中において国会で可決したものについては、即実施するものもある。(最初の制度改正である06年4月に先駆けて、05年10月から居住費と食費の自己負担化が行われた例などが、これに該当する)

つまり制度は6年をひとつの単位として実施されているので、報酬改定の偶数回については必然的に制度改正と連動することになる。

また診療報酬は2年ごとに改訂されているのだから、必然的に2×3=6の倍数ごとに、介護保険制度改正+介護報酬改定+診療報酬改定のトリプル改定となっている。

この時に介護と医療がタッグを組んで報酬獲得に動くという構図にはなっていない。それぞれが限られた財源というパイの奪い合いに神経をすり減らして報酬を確保するというのが現実の姿だ。勝ち負けの差が、そのまま報酬単価に反映される形である。

それが来年4月からの、2度目の介護保険制度改正の意味でもある。

ところで今回の介護報酬改正では、地域包括ケアシステムを中心に制度設計されたが、介護報酬は改定率+1.2%(在宅1%・施設0.2%)とされた。

しかし現在介護報酬の外枠で支給されている介護職員処遇改善交付金は、介護報酬の中に「処遇改善加算」(仮称)を新設される予定であるが、この費用総額は介護報酬のおよそ2%にあたる。つまり処遇改善交付金が内枠化されてなお改定率が+1.2%という意味は、実質マイナスで本当の改訂率は在宅−1%、施設−1.8%という意味ではないのか。

しかも地域区分の見直しで下の4区分の地域は0.6%−なのだから、最大施設は2.4%のマイナスと言うことになる。これは大きな減額である。北海道の全地域はこれに該当する。

当初は処遇改善交付金分の2%分はアップするのではないかといわれていた介護報酬は実質マイナスとなっていることは間違いない。

※老施協情報によると
施設0.2%アップの意味は、施設と在宅が「50:50」であるなら、施設単価は「+0.4」となる。そして地域区分の「その他地域」(全体の70%を占める地域)を例にとると
1.処遇改善交付金−2%、地域区分見直し−0.6%に今回のアップ分+0.4%を加ええても全体では−2.2%。

2.従来型多床室は−2.6%〜−3%のダウン額が推計される・

3.−3%だと、年額で50人特養で約五百万円、80人特養で八百万円の減収。

4.居宅サービスの+1%は、在宅関係単価のアップ2%となり、介護職員処遇改善交付金の−2%分で、プラスマイナス0になる。地域区分のみ影響する。しかし24時間巡回サービスの財源確保のため、既存サービスはそれ以上ダウンとなる。


一方では、マイナス改訂が必至と言われていた診療報酬が、窓口での患者負担のアップなどの財源確保が見送られたにもかかわらず、わずかながらもアップしプラス改定になっている。

この結果をみる限り、政治的な動きとしての結果は、医療に介護が負けたと結論付けることができる。

特に施設サービスが居宅サービスに比しいも厳しい現状となった一要因として、特養の内部留保批判に、老施協という職能団体がきちんと「それは違う」という反論をしてこなかった事が挙げられる。その責任は大きい。
(参照:内部留保批判に老施協はなぜ反論しない?

介護給付費分科会でも、せっかく委員を出しているのに、「科学的介護」などと他のメンバーが誰も理解出来ないような、意味のない主張を繰り返すのみで、内部留保批判に正面から反論しない姿勢は、会員から糾弾されてしかるべきだろう。村上さん、あなたはとても良い人だし、能力もある人だけど、この部分では大いに期待外れだぞ。

老施協はなんのために国会議員を送り出して、運動資金も一生懸命集めているんだろう?馬鹿らしいにもほどがある。老施協はこの結果を会員施設にどのような形でアナウンスするのだろう。

この結果を、診療報酬の結果と対比して評価せねば誰も納得できないだろう

どちらにしても来年4月からの、介護サービス経営は非常に厳しい状況下に置かれる。特に多床室を数多く抱える既存型特養は最大級の逆風に見舞われるだろう。

少なくとも3年間は、その状況で耐え忍ぶ方策を模索せねばならない。暗黒の3年間をどう乗り切ることができるだろうか・・・。

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