今、僕は熊本県に向かう途中である。今日の夜18:30〜水俣市文化会館で、明日19:00〜熊本市御船カルチャーセンターで、それぞれ「人を語らずして介護を語るな〜感動できなきゃ介護じゃない」というテーマで講演を行うために移動最中である。

両方の会場ともほぼ満席に近く、合計で1.300人近い方が受講して下さる。平日の夜に行われることに加え、わずかな額とは言え無料ではない講演であるにもかかわらず、このように多くの方々が参加して下さることは驚きである。そしてそれはとてもありがたい事である。受講される皆さんと主催者の方に心より感謝申し上げます。

こうした会場で、様々な方々とお逢いして繋がりができることが僕の最大の財産だ。物やお金はいずれなくなるが、人のつながりは永遠となる可能性があるからだ。だから僕は全国どこへでも足を運ぶことを厭わない。

さて旅の道すがらに記事更新したい。今日は難しい事はあまり書くつもりはなく、昨日当施設で行われた今年の餅つきの模様を画像で紹介したい。

餅つきといえば、数年前に近隣地域にできた道内最大級の定員200名という老健施設では、利用者の前で餅つきを行いながら、「餅は危険な食べ物だから」という理由で、それを利用者に提供することはせず、鏡餅として飾るだけで「雰囲気を味わってもらう」と自慢げにコメントし、それが新聞記事として報道されたりしている。世間の人々はこの新聞記事を読むと、介護施設は利用者に餅を食わさないことが安全を担保する唯一の方法で、それが当たり前なんだと勘違いしないか心配である。

この老健の「安心・安全な暮らし」の主語は、きっと利用者ではなく施設自信なのだろう。まったく馬鹿げている。この施設の介護支援専門員をはじめとした職員は、いくら研修で良い話を聞いても、こういう状況に疑問を抱いて変えようとしない限り、利用者の過去の生活習慣を守って、利用者本位のサービスを行うということには程遠いだろう。自分がそういう施設に働いていることを、自分の施設がそういう施設だということを誇ることができるのだろうか?

どちらにしても、その老健に入所したが最後、餅をついても食べることのできないバリアに囲まれて生活する人々に、この画像の中の笑顔を持つ機会は一生涯訪れないという意味だ。

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この広いホールに居られる全員がお餅を食べている。その中には当施設の最高齢者である106歳の方も含まれている。高齢者だからという理由だけで、餅を食べる機会を奪う施設の管理者や職員は、自らもその仕事を続けている限り餅を食べるなと言いたい。

勿論そのためには事前のアセスメントは不可欠で、どのような状態で、どうすればお餅を食べられるのかを、一人ひとり検討する。食べさせないのは簡単だが、我が施設の理念の一つに「制限は馬鹿でもできるが、できる可能性を見つけ出すのが専門家である」という考えがあり、この実現のために、全ての職員が皆で汗を流す。

だからお餅を食べている人の傍らで会話をしながら何気なく見守るために、事務職員なども総出である。100%事故は防ぐことができるとは言い切れないが、お餅という高齢者の大好物を食べる機会を設けようともしない施設と、そのための工夫を凝らして、食べることができる方法を考える施設のどちらに入所したいと思うのだろうか?

介護の現場に立つ職員は、利用者に我慢を強いるために存在するものではなく、利用者の笑顔を引き出すために存在するのだという「介護の原点」をもう一度見つめ直すべきである。

ブログ書籍化本発刊から11ケ月。衝撃のデビューから待望の続編発刊決定。2012年1月25日「人を語らずして介護を語るな2」刊行予定。下のボタンをプチっと押して、このブログと共に応援お願いします
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