僕にはどうも理解出来ない理屈がある。

24時間巡回サービス(来年からの新介護保険制度では定期巡回・随時訪問型訪問介護看護というふざけた名称のサービス)を推奨する人々は、このサービスを在宅中重度者(要介護3以上と言う意味)の暮らしを支える中核サービスであると位置付けている。

しかし短時間の滞在サービスを中心に地域巡回するという意味は、ヘルパーの1日複数回の滞在時間に利用者が常にそこにいるという意味だから、利用者を居室に縛り付け外出機会を失わせる側面を持つ。

しかも「居宅」の概念は自宅に限らず、サービス付き高齢者向け住宅等に「住み替える」ことを含めた議論であるから、必ずしもその場所は在宅中重度者の「住み慣れた地域」ではないわけであり、それは特養などの介護施設に入所することとほとんど変わりない。それなのに施設入所を否定し、居宅サービスというカテゴリーにこだわる理由はなんだろうか?定期巡回・随時訪問型訪問介護看護は特養の多床室の費用と同じ程度にするというのだから、給付費抑制ということでもないらしい。そうなるとこのサービスを考えた連中の「面子」以外のなにものでもないだろう。

定期巡回・随時訪問型訪問介護看護は「居宅」という名の仮想地域を作りだし、逆に要介護高齢者をその中の「居室」に引きこもらせ、地域住民の息吹を感じ取ることができない仮想地域を日本中に創りだす結果を生むだろう。当然そこでは、利用者の「暮らし」を無視した、家族と事業者だけの価値観と理屈に基づいたサービス提供が横行し、利用者の尊厳を損なうサービスがたくさん生まれるだろう。

そういう意味では仮想地域を創りだす定期巡回・随時訪問型訪問介護看護は、望む・望まざるに関わらず、必然的にそのケアを密室化させる方向に進むだろう。

定期巡回・随時訪問型訪問介護看護の計画に携わる介護支援専門員(ケアマネジャー)は、このことに充分な注意が必要であるが、多くの場合、担当ケアマネは定期巡回・随時訪問型訪問介護看護サービス事業所の併設事業者であることが想定され、適切なチェック機能が働くかどうかが疑わしい。

しかも定期巡回・随時訪問型訪問介護看護サービスについては、居宅サービス計画に、当該事業所の「計画作成責任者(仮称)」が共同アセスメントの形で介護支援専門員の計画立案に事実上の「介入」を行うことができる仕組みになっている。しかもサービスの提供時間や回数は巡回サービスの側が決めることになっており、この回数や時間が不自然であっても、居宅介護支援事業所のケアマネはこれに介入して異議を唱えることができないという事業者にとって都合のよいルールだ。

巡回サービスのあり方を示したシンクタンクの最終報告書には、このチェック機能を保険者の役割としているが、定期巡回の数や時間は訪問事業者のアセスメントで、訪問事業者自身が決定できるルールであるのに、保険者がどのような尺度や根拠で、それが違うということができるのだろう。アセスメントをしない保険者に、このようなチェック機能は求められないだろうし、事業者主体でサービスの主たる内容が決めることができるサービスとの整合性はとれないだろう。

つまり訪問回数は事業者都合で設定される可能性が高く、密室化した自宅という名の仮想地域で、誰にも知られることなく必要最低限のサービスしか受けられない状態が生まれるだろう。極端な場合、息をするだけが精いっぱいの生活が、この制度の影の部分として数多く出現しかねない。利益優先に考える事業者であればなおさらこの状況は深刻化、潜在化させられる。

もともと地域巡回サービスは、特養のケアを地域展開しようというコンセプトで創設されたが、30分で移動できると言っても数十件の利用者宅を定期巡回するのだから、巡回サービスを受ける間隔は数時間生ずる。その間に随時対応する職員は別に配置されていると言っても、その数は1名が基準であるから、その職員が随時対応サービスを行っている間は、事実上他の数十名の利用者に随時対応してくれる職員は存在しない。

特養なら、夜間であってもコールを押せずに転倒したら、必ず夜勤者が気づいて、数分もかけずに対応できるが、このサービスでは、夜間に転倒してコールを押せない状態であったら、数時間後の巡回サービスまで放置され、場合によってはそれは夜中から朝までの放置となり得るサービスだ。施設サービスと同じケアが、このサービスでできるわけがない。

そんなサービスが、認知症の方々も含めて、在宅重介護者の居宅生活を支える切り札になるなんて考えるのは空論でしかない。

単に事業者都合の巡回時間に合わせられる利用者が選別され、事業者都合の形式的サービスが増えるだけである。

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