北海道では介護保険事業についての実地指導については、その地域を所管する振興局(旧支庁)が担当している。

これは道の組織であるから、あくまで道としての実地指導であり、各振興局で指導内容が違うということはあり得ないはずである。

しかし実際には、各振興局の担当者により、指導内容が微妙に違ってくる場合がある。これは大いなる問題であり、各サービス事業者は疑問点を放置せず、正しい根拠を示すように求めるべきである。場合によっては道の本庁の見解を求める必要もあるだろう。

というのも、漏れ聞く情報によると、担当者によって明らかに法令を理解していないおかしな見解によって事業者が混乱している例があるからだ。(※当事業所が所属する胆振ではない)

これは実地指導ではなく、とある事業所が職員配置の変更についての打診段階で担当者が法令解釈を誤っていることで、法令違反ではない職員配置方法が認められず事業者が大変困っているケースである。

その事例とは、とある認知症対応型通所介護事業所で「看護師兼機能訓練指導員」が退職となったため、一時的に不在期間が生ずる。この状態は運営基準違反であるので、新任の「看護師兼機能訓練指導員」が着任するまでの間、併設特養の看護師を兼務で通所介護の「看護師兼機能訓練指導員」しようとするものである。勿論この場合、この事業者は特養では兼務予定の看護師を除いても看護職員の配置基準を満たしており、個別機能訓練加算も算定していないので、当該看護師は特養及び通所でそれぞれ常勤換算し、加算も算定しないという扱いである。

ところがこのことを事前に担当課に打診したところ、基準省令(厚生労働省令第三十四号第42条3項)に於いて「機能訓練指導員は、日常生活を営むのに必要な機能の減退を防止するための訓練を行う能力を有する者とし、当該単独型・併設型指定認知症対応型通所介護事業所の他の職務に従事することができるものとする。」という規定を盾にとって併設特養との兼務は認めないというものである。

しかしこの規定は認知症対応型通所介護事業所に勤務しているときに兼務できる職種を示したに過ぎず、認知症対応型通所介護事業所に勤務していない時間帯は何をしても問題ないという理解がないことによる解釈ミスである。

つまり併設特養と通所介護の職務に従事するといても、それはそれぞれを常勤換算するのであるから、非常勤扱いと同様で、兼務というより一人の人物が非常勤職員として2つの事業者の職務に就いていると同じことである。このことに関する禁止規定など存在しない。

このような常勤換算の扱いをした兼務を認めていないなら、通所介護の看護職員が休みの場合に、その日のみあらかじめ兼務発令している特養の看護師が通所介護の「看護師兼機能訓練指導員」として従事して、その時間のみ常勤換算するという取り扱いさえ認められないことになるが、これは多くの事業者で行われていることである。

そもそも15年のルール改訂で通所介護の看護職員の「サービス提供時間を通じた従事規定」が廃止されたことで、看護師兼機能訓練指導員である職員が、サービス提供時間中に併設施設の看護業務に従事できることは常識にさえなっている。

また介護老人福祉施設及び地域密着型サービスに関するQ&Aでも
Q. 基準省令第42条第1項第2号の「専ら当該認知症対応型通所介護の提供に当たる看護職員又は介護職員が1 以上」に当たる職員は、一般の通所介護事業所を併設している場合、その職務に当たることもできるか。

A. 当該職員については、認知症対応型通所介護事業所に勤務しているときにその職務に専従していればよく、認知症対応型通所介護事業所に勤務していない時間帯に一般の通所介護事業所に勤務することは差し支えない。

であり生労働省令第三十四号第42条3項規定も認知症対応型通所介護事業所に勤務しているときに機能訓練指導員が兼務できる状態を示したもので、それは「当該単独型・併設型指定認知症対応型通所介護事業所の他の職務」に限るけれども、併設特養の業務に従事する場合で常勤換算を行う場合は「認知症対応型通所介護事業所に勤務していない時間帯」だから、どんな職務でどんな仕事をしようと問題ないのである。

こんな常識的な法令理解のない担当者によって実地指導が行われるとしたら、これは恐ろしい事である。

よって各サービス事業者は、実地指導担当者の指導内容については、かならず根拠を求める癖をつけないとならないし、数年ごとに変わる担当者の法令理解など、我々のようにその変更の背景を知っている専門家より、ずっと素人的な理解力しか持っていない担当者もいる、ということを前提にして実地指導場面に臨まねばならないだろう。

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