昨日書いた記事と関連するが、来年4月からの介護報酬が、かなりヤバイことになっている。介護サービス従事者の皆さんには、このことにより年収が減るという形で影響が出る可能性が高い。この現状認識を関係者は持っているのだろうか?

まず参考として先日書いた「地域区分は7区分の方向へ」の続報記事として読んでいただきたい。

第78回社保審介護給付費分科会は、冒頭からこのことが議論の中心となった。Shanさんの「UMM Ver.Clear」でこのやり取りを確認できるので是非ご参照いただきたい。

またそこで議論のたたき台となった資料については、「資料1介護報酬の地域区分の見直しについて〜基本方針について〜」を参照していただきたい。

厚生労働省の主張は次の通りである。(shanさんのブログに掲載された宮島老健局長の発言を中心にまとめてみた。)

1.介護報酬については各地域ごとの人件費の差を調整するため、介護保険創設時より国家公務員の地域手当の地域区分を基本とした地域区分を設定している。

2.平成18年には国家公務員の地域手当の地域区分が見直され、平成22年4月から本格的に導入された。

3.平成17年の人事院勧告において、民間賃金の地域差を公務員給与に反映させるということで、民間賃金の低い地域を考慮して俸給表水準を全体として平均4.8%程度引き下げた上で、その替りに地域の平均賃金が高い地域には、3%から18%の地域手当を支給する見直しが行われた。

4.平成21年度の介護報酬改定では、地域区分見直しについて、公務員給与と同様に一律4.8%引き下げてその上で地域調整を行うことについては、「その他地域」に所在する事業所が多い介護保険の事業所に対する給付に適用することが適切であるか否かについては議論があることなどから、地域の区分方法については見直しを行わず、今後の検討課題として宿題とされた。

5.平成24年度の介護報酬改定においては、このような経緯を鑑みてあらためて全体の水準を引き下げた上で(ただし国家公務員のマイナス4.8%にという数字ということがどうかというのはまた議論があるが)、国家公務員の地域手当を基本とした上乗せ割合を検討すべきではないか

6.地域区分の見直しと言うのはやはり財政中立が原則である。これは限られた保険給付費の中で地域差の調整を行わなければならない。そのことを考えると、引き下がる地域もあれば、引き上がる地域もある

7. 公務員の場合は4.8下げたからプラスがあった。4点下げたことで18まで上げることが可能になった地域がある。

8.介護報酬の場合は、その他地域にいっぱい介護事業者がいるわけですから4.8下がらない。プラスする部分の方の事業者が少ないんだから、そこは4.8そのままじゃない。国家公務員は『その他地域』が少ないので、その部分は異なってくる。要するに格差があるのを民間給与に準じて是正しますと言う事だから、当然、下げるところもあり得る。下げた分は給与水準の高い地域に上乗せする。だから財政中立であり、格差是正である。

↑国の論旨はだいたいこのようなところである。平たく言えば地域区分を現在の5区分から7区分に変え、東京都などの(都内の一部地域を除く)平均給与水準が高い地域の報酬単価の加算率を引き上げるために、まず全体の報酬水準を引き下げた上で、引き下げて捻出した費用をそれらの加算地域の報酬に回すという意味である。

全体のパイは変えずに加算率引き上げ地域を創るということだから、これによって多くの地域の介護報酬は現行より引き下げられることになる。

上で示した資料の中の(資料4)介護保険制度の地域区分を機械的に人事院規定で定める地域手当の地域区分に当てはめた場合、という表があるが、この表の網掛けされている部分が加算率が現行と変わらず、網掛け部分を境にして左下部分が加算率が増え、右上部分が加算率が減る地域である。これを見たら加算率が減る地域より増える地域が多いし、網掛け地域は現行通りと勘違いしやすい。しかしそもそもが加算のベースとなる報酬を下げたうえで、この表のようになるのだから、網掛け部分とその右上の地域はすべて報酬減である。こんなことがあってよいのか?

しかし「民間賃金の低い地域を考慮して俸給表水準を全体として平均4.8%程度引き下げた上で、その替りに地域の平均賃金が高い地域には、3%から18%の地域手当を支給する見直しが行われた」という公務員給与の論理をここに当てはめるのはどうなんだろう。そもそもそれらの地域だけではなく、公務員より高い給料をもらっている介護サービス従事者などいないだろう。

宮島課長はこの表で網掛け地域とその右上地域より、加算率の上がる右下地域が多いから「プラスする部分の方の事業者が少ないんだから、そこは4.8そのままじゃない。」というが、もともと公務員より収入が低い介護サービス受持者の給与状況を鑑みずに、そのベースとなる介護報酬を一律引き下げたうえで新しい地域区分を設定しようというのだから、介護サービス従事者の収入も、介護サービス事業者の経営状況も「報酬が下がったなりに自己責任でどうにでもすれ」という乱暴な理屈である。

そうであるならこの見直しは同時に、公務員ベースまで給与が引き上げられた上で行うのが筋なのに、実際には報酬引き下げの論理のみ国家公務員給与の改定方法に準拠して、給与水準自体は準拠しない、という意味だ。

だからこれによって来年度以降の介護サービス従事者の給与は間違いなく引き下げの方向に向かう。その時「民間賃金の低い地域を考慮して俸給表水準を全体として平均4.8%程度引き下げた」数字より、さらに民間賃金は下がる。国家公務員給与はそれに基づいて再引き下げするつもりはあるのか?

どちらにしても介護職員処遇改善交付金の存続問題など吹っ飛ぶ報酬引き下げ案である。

これでは現在でも全産業平均で見ると大幅に低い介護職員をはじめとしたサービス従事者の給与水準は益々低くなり、離職率はさらにアップし、介護サービス事業運営が続けられない事業者を増やすだろう。

それは少子化以上に、人手不足、サービス不足を招く危機要因であることに政治家や官僚は気がついているのだろうか?

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