表の掲示板では、様々な制度におけるルールの確認の質問が寄せられるが、それに対する回答については、必ず「根拠」を確認したり、それを具体的に示すことを求めている。しかし同時に、その根拠とは法令に求めるもので「行政担当者がこう言っていた」ということは根拠とはならないこともアナウンスしている。
こういう地道な根拠確認を省いてしまえば、間違った理解や解釈で終わってしまう場合があり、それは時には報酬返還とか、運営基準違反指導に結びついてしまう恐れがある。そうでなくとも正しいルールを根拠と共に理解しないと、せっかく使えるサービスや社会資源を使えないという不利益を被ることがある。
今回、医療保険の通院(外来)リハビリと介護保険リハビリの併用制限に対する誤ったルール解釈が生じたケースからそのことを考えてみた。
とある介護サービス関係者から次のような愚痴を聞いた。一旦介護保険の通所リハビリテーションを利用するようになったら、通院リハビリができなくなるので、おちおち別な病気にもなれないというのである。
彼が相談するケースは、脳血管障害後遺症で入院されていた方が在宅復帰し、その後外来リハビリを受けていたが、症状も固定したので、維持期という判断から介護保険の通所リハビリテーションを利用するようになった。この場合医療保険リハビリと介護保険リハビリの併用期間は1月だけで(あくまでその必要性を医師が認めた場合のみ)、その後は介護保険リハビリが優先適用され医療保険の外来リハビリが使えなくなるので、その後に別な病気や怪我でリハビリが必要と判断されても、通所リハビリを使いながら外来リハビリ治療を受けることはできないのは困った問題だというのである。
あれっ?それって一部の理解はあっているけど、一部は違うのではないの?必ずしも外来リハビリと、介護保険の通所リハビリは併用できないとは限らないんではないの?といったら、そんなことはない根拠として、僕の管理する掲示板ではない、別の掲示板のスレッドを紹介された。
当該スレッドはこちら。会員以外はレスポンスが見られないだろうから解説しておくと、この質問に対する最初の回答は「医療保険のリハビリは、介護保険の通所リハ(デイケア)でのリハビリと原則併用不可ですが、通所介護(デイサービス)での機能訓練とは併用可能だから、通所介護は使えますよ」というもので、そのまま結論となっている。
医療の外来リハビリと通所介護の併用は可能という結論は間違いではないが、そこにたどり着く論拠に瑕疵がある。それは「医療保険のリハビリは、介護保険の通所リハ(デイケア)でのリハビリと原則併用不可」という部分である。
こうした掲示板のスレッドのみを根拠にすること自体が間違いだが、間違った解釈を何万人もの人が見て、それが修正されないまま流れてしまうのも問題だと思った。そもそもこのスレッドには併用不可の根拠が何も示されていないことが解釈を間違える一番の原因である。
「医療保険のリハビリは、介護保険の通所リハ(デイケア)でのリハビリと原則併用不可」という解釈を放置したままで、その結論に達して終わりでは正しいルール解釈にはならない。
僕は普段そのサイトは見ないし(そもそも他掲示板を見ることはほとんどない)、そこの情報がどのような頻度で、どのような形で修正されているかは不明であるが、この情報のまま(当該スレッドは時間経過と共に変わるかもしれないので、この記事の投稿時間以前の内容につき評価しているもので、この記事以降の時間の情報については関知しない)流れるのは問題だろうと思う。
現在までの情報では、このスレッドを見た人は単純に、「医療保険リハビリと介護保険の通所リハビリは原則併用不可」という理解にしか結びつかない。
しかし医療保険の外来リハビリと、介護保険の通所リハビリが併用できないルールは『「療担規則及び薬担規則並びに療担基準に基づき厚生労働大臣が定める掲示事項」等及び「保険外併用療養費に係る厚生労働大臣が定める医薬品等」の実施上の留意事項について」等の一部改正について(保医発第0328001号)平成20年3月28日 』で定め置かれたもので、その取り扱いは、「同一疾患で医療保険の疾患別リハビリテーション料算定後に、介護保険の通所リハビリ等に移行した後は、併用期間の1月を除いて医療保険の疾患別リハビリテーション料は算定できない。」というものである。
※当該ルールの最新通知は「医療保険と介護保険の給付調整に関する留意事項及び医療保険と介護保険の相互に関連する事項等について」の一部改正について(保医発0330第1号)平成22年3月30日 」を参照ください。
逆に言えば現在通所リハビリが必要となった疾患とは別な疾患でリハビリテーションが必要になる場合は、「同一疾患で医療保険の疾患別リハビリテーション料算定後」というルールに当てはまらないので、通所リハビリに通っている利用者でも、別な疾患で外来リハビリに通って医療保険の「疾患別リハビリテーション料」を算定することは可能である。
このことは「疑義解釈資料の送付について」の問18に掲載されている扱いである。この場合、現在通所リハビリを利用している方が、そこで行っているリハビリが必要となった疾患とは別な疾患でリハビリテーションが必要になる場合は、あらたに外来受診して「疾患別リハビリテーション料」を算定できるわけであり、この際に、現在利用している通所リハビリテーションを利用してはならないというルールは存在しない。
よって、一旦介護保険の通所リハビリに移行した後に、併用期間を過ぎた後も、通所リハビリの利用継続をしながら、別な疾患の発症により再度医療保険の外来リハビリに通って、両者を併用するケースはレアケースではあっても充分にあり得るのである。(その場合は、元の疾患のリハビリとして通所リハビリを継続し、新たな疾患のリハビリとして医療外来リハを受けるということになる。)だから「医療保険のリハビリは、介護保険の通所リハ(デイケア)でのリハビリと原則併用不可」という考えは正しくない。そんな原則は存在しないのである。
つまり正しい理解は「同一疾患で医療保険の疾患別リハビリテーション料算定後に介護保険リハビリ(通所リハビリもしくは訪問リハビリ:介護と予防の両者)に移行した後は併用期間の1月を除いて医療保険リハビリと、介護保険の通所リハビリ及び訪問リハビリは併用不可」である。
こうした正しい解釈がされずにスレッドが流れれば少なからずルールを誤って解釈して終わりという人が増えるだろう。これはネット掲示板の一番の弊害であり、その弊害を生む原因は「併用不可」の根拠を示していないことにある。この掲示板全体をざっと読んでみても、根拠のない思いこみによるレスポンスが実に多い。これでは正しい知識を得る以上に、あやまった理解と解釈が横行する元凶になってしまうだろう。
僕の管理サイト掲示板でも間違った情報が流れないということはないが、しかし必ず根拠を示すということを推奨しているため、間違った解釈のままで流れることは少ない。
本ケースにしても、根拠となる元通知を示せば、それを読むことで正しいルールを理解できる人もいて、その人が間違った解釈を当該スレッドの中で指摘する可能性もあるのだ。
だから根拠に基づく議論が大事なのである。ネット掲示板では、自分がこのように解釈しているというルールの根拠を確認してレスポンスをつけることが大事だし、「誰かが、こういっていた。」は何の根拠にもならないことをもう一度肝に銘じて正しい理解に努めるべきだろう。
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こういう地道な根拠確認を省いてしまえば、間違った理解や解釈で終わってしまう場合があり、それは時には報酬返還とか、運営基準違反指導に結びついてしまう恐れがある。そうでなくとも正しいルールを根拠と共に理解しないと、せっかく使えるサービスや社会資源を使えないという不利益を被ることがある。
今回、医療保険の通院(外来)リハビリと介護保険リハビリの併用制限に対する誤ったルール解釈が生じたケースからそのことを考えてみた。
とある介護サービス関係者から次のような愚痴を聞いた。一旦介護保険の通所リハビリテーションを利用するようになったら、通院リハビリができなくなるので、おちおち別な病気にもなれないというのである。
彼が相談するケースは、脳血管障害後遺症で入院されていた方が在宅復帰し、その後外来リハビリを受けていたが、症状も固定したので、維持期という判断から介護保険の通所リハビリテーションを利用するようになった。この場合医療保険リハビリと介護保険リハビリの併用期間は1月だけで(あくまでその必要性を医師が認めた場合のみ)、その後は介護保険リハビリが優先適用され医療保険の外来リハビリが使えなくなるので、その後に別な病気や怪我でリハビリが必要と判断されても、通所リハビリを使いながら外来リハビリ治療を受けることはできないのは困った問題だというのである。
あれっ?それって一部の理解はあっているけど、一部は違うのではないの?必ずしも外来リハビリと、介護保険の通所リハビリは併用できないとは限らないんではないの?といったら、そんなことはない根拠として、僕の管理する掲示板ではない、別の掲示板のスレッドを紹介された。
当該スレッドはこちら。会員以外はレスポンスが見られないだろうから解説しておくと、この質問に対する最初の回答は「医療保険のリハビリは、介護保険の通所リハ(デイケア)でのリハビリと原則併用不可ですが、通所介護(デイサービス)での機能訓練とは併用可能だから、通所介護は使えますよ」というもので、そのまま結論となっている。
医療の外来リハビリと通所介護の併用は可能という結論は間違いではないが、そこにたどり着く論拠に瑕疵がある。それは「医療保険のリハビリは、介護保険の通所リハ(デイケア)でのリハビリと原則併用不可」という部分である。
こうした掲示板のスレッドのみを根拠にすること自体が間違いだが、間違った解釈を何万人もの人が見て、それが修正されないまま流れてしまうのも問題だと思った。そもそもこのスレッドには併用不可の根拠が何も示されていないことが解釈を間違える一番の原因である。
「医療保険のリハビリは、介護保険の通所リハ(デイケア)でのリハビリと原則併用不可」という解釈を放置したままで、その結論に達して終わりでは正しいルール解釈にはならない。
僕は普段そのサイトは見ないし(そもそも他掲示板を見ることはほとんどない)、そこの情報がどのような頻度で、どのような形で修正されているかは不明であるが、この情報のまま(当該スレッドは時間経過と共に変わるかもしれないので、この記事の投稿時間以前の内容につき評価しているもので、この記事以降の時間の情報については関知しない)流れるのは問題だろうと思う。
現在までの情報では、このスレッドを見た人は単純に、「医療保険リハビリと介護保険の通所リハビリは原則併用不可」という理解にしか結びつかない。
しかし医療保険の外来リハビリと、介護保険の通所リハビリが併用できないルールは『「療担規則及び薬担規則並びに療担基準に基づき厚生労働大臣が定める掲示事項」等及び「保険外併用療養費に係る厚生労働大臣が定める医薬品等」の実施上の留意事項について」等の一部改正について(保医発第0328001号)平成20年3月28日 』で定め置かれたもので、その取り扱いは、「同一疾患で医療保険の疾患別リハビリテーション料算定後に、介護保険の通所リハビリ等に移行した後は、併用期間の1月を除いて医療保険の疾患別リハビリテーション料は算定できない。」というものである。
※当該ルールの最新通知は「医療保険と介護保険の給付調整に関する留意事項及び医療保険と介護保険の相互に関連する事項等について」の一部改正について(保医発0330第1号)平成22年3月30日 」を参照ください。
逆に言えば現在通所リハビリが必要となった疾患とは別な疾患でリハビリテーションが必要になる場合は、「同一疾患で医療保険の疾患別リハビリテーション料算定後」というルールに当てはまらないので、通所リハビリに通っている利用者でも、別な疾患で外来リハビリに通って医療保険の「疾患別リハビリテーション料」を算定することは可能である。
このことは「疑義解釈資料の送付について」の問18に掲載されている扱いである。この場合、現在通所リハビリを利用している方が、そこで行っているリハビリが必要となった疾患とは別な疾患でリハビリテーションが必要になる場合は、あらたに外来受診して「疾患別リハビリテーション料」を算定できるわけであり、この際に、現在利用している通所リハビリテーションを利用してはならないというルールは存在しない。
よって、一旦介護保険の通所リハビリに移行した後に、併用期間を過ぎた後も、通所リハビリの利用継続をしながら、別な疾患の発症により再度医療保険の外来リハビリに通って、両者を併用するケースはレアケースではあっても充分にあり得るのである。(その場合は、元の疾患のリハビリとして通所リハビリを継続し、新たな疾患のリハビリとして医療外来リハを受けるということになる。)だから「医療保険のリハビリは、介護保険の通所リハ(デイケア)でのリハビリと原則併用不可」という考えは正しくない。そんな原則は存在しないのである。
つまり正しい理解は「同一疾患で医療保険の疾患別リハビリテーション料算定後に介護保険リハビリ(通所リハビリもしくは訪問リハビリ:介護と予防の両者)に移行した後は併用期間の1月を除いて医療保険リハビリと、介護保険の通所リハビリ及び訪問リハビリは併用不可」である。
こうした正しい解釈がされずにスレッドが流れれば少なからずルールを誤って解釈して終わりという人が増えるだろう。これはネット掲示板の一番の弊害であり、その弊害を生む原因は「併用不可」の根拠を示していないことにある。この掲示板全体をざっと読んでみても、根拠のない思いこみによるレスポンスが実に多い。これでは正しい知識を得る以上に、あやまった理解と解釈が横行する元凶になってしまうだろう。
僕の管理サイト掲示板でも間違った情報が流れないということはないが、しかし必ず根拠を示すということを推奨しているため、間違った解釈のままで流れることは少ない。
本ケースにしても、根拠となる元通知を示せば、それを読むことで正しいルールを理解できる人もいて、その人が間違った解釈を当該スレッドの中で指摘する可能性もあるのだ。
だから根拠に基づく議論が大事なのである。ネット掲示板では、自分がこのように解釈しているというルールの根拠を確認してレスポンスをつけることが大事だし、「誰かが、こういっていた。」は何の根拠にもならないことをもう一度肝に銘じて正しい理解に努めるべきだろう。
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