6月22日と23日に、登別温泉の「登別グランドホテル」を会場にして、日胆地区老人福祉施設職員研究大会が行われた。

当施設でも4名の介護職員を派遣したが、内容から鑑みて経験の浅い職員を中心に参加者を選抜した。(とはいって当施設の場合は、基本的に参加者と人数については、各ユニットごとに自主的に決めさせている。)

どんな研修内容であれ、他の機関に所属する人の話を聞くことは意味のあることだし、ましてや他施設の同職種の方々と直接情報・意見交換できるということは、その内容がどうあれ、それだけで刺激を受けることだろうから外部研修を受講するということはそれなりに意義がある。

あとはそこでの学びや気づきを、参加者自身が自分の中で充分に咀嚼して、今後の仕事や、自分のモチベーションに生かそうとするポジティブな気持ちがあるかないかにかかってくる問題だろう。

つまり外部研修は自分のスキルをアップさせる「動機づけ」にはなり得るが、本当にスキルアップに繋がるか、否かは、受講者自身の心構えにより決定づけられるもので、少なくとも外部研修を受講したという行為事実だけでは何の意味もないということを知るべきである。

当然、職員を派遣する施設側も、そのことを充分考えた上で、受講者が研修受講という機会を捉えて自己成長し、かつそこで得た情報を施設内にフィードバックすることができるように、復命書等で、自らの気づきを施設の他の職員等へ伝えながら、自分の考えをまとめるという機会を与えているわけである。

今回の参加者の復命書を読んでいると、それぞれに様々な気づきがあり、かつ日常の惰性に流され理念を考えることを忘れがちであった自分に反省している点などが読みとれるので、それなりに意味深い研修機会ではなかったかと考えている。

ところで一人の参加者の復命書には次のような内容が記されている。

「〜強く印象に残った事があった。それは私自身が働いている緑風園の中で現在進行形で行われている様々な業務活動、企画等が極めて先取的であり、先頭を走っているかのような感を持ったことである。他施設では今まさに挑戦しようとしている取組が、緑風園の日常活動に既に組み込まれている事例の何と多い事か。驚きであった。〜」

他施設の研究発表や分科会での情報交換の中から得た印象だろうが、これは決して正しい評価ではなく過大評価だろう。そこまで我が施設のサービスは充実してはいないと思う。(充実したケアを目指していないという意味ではない。)特に僕が提唱する「介護サービスの割れ窓理論」に基づいて、正しい言葉づかいをするように指導しているのも関わらず、日常のケアの場面で丁寧語をごく普通に使えない職員がまだ1/3程度存在する。ここは大きな問題点である。

ただ一つ一つのサービスについて、各パーツを取り上げれば、他施設に誇れる部分があることは事実だろう。個別ケアを職員一人一人が考えるシステムにしても、看取り介護にしても、ケアマネジメントにしても、当施設は間違いなく誰かの後を追ってはいない。

しかしそれは先進的に取り組むことを目的としてきた結果ではなく、当たり前の暮らしとは何か?どうしたら利用者の暮らしはもっと良くなるのか?特養に求められている社会的使命とは何か?ということを問い続けて、変えられるものを変えてきた結果でしかない。

加えて新しい方法を創るに際して、我々は他施設を参考にせず、基本的には自ら創りだした方法論に依っている。看取り介護指針もおそらく日本で最初にそれを作成したのは僕だろう。施設ケアプランの一連の作業システムや、検証システムもどこの施設も参考にしていない。様々なマニュアルや書式もほとんどオリジナルである。どこかに当施設と同じか、類似したものがある場合も、それは当施設のものを誰かが真似ているにしか過ぎない。

つまり自分で創り上げるから、自分で変えられるという意味があるのだ。

理念を高らかに掲げても、その理念の意味さえもわからず、実際には何もしていない施設では意味がないから、理念を掲げるよりも現実を見据えて、そこを変えて暮らしを良くする方法を皆で考えようという積み重ねの結果が現在に至っていることを忘れてはならないのである。

確かに今、日胆地区の研究発表会等で他施設職員の話す内容は、数年前の我々の姿でしかなく、今さらと感じることも多いのかもしれない。しかし我々が上から目線でそれを見て謙虚さを失った時には、またたく間にそれ以下に舞い戻ってしまうのは間違いないのである。

そもそも我々は他施設と競争しているわけではない。本来社会福祉の目的は全地域、全世界、全人類で達せられるべきであり、ナンバーワンを目指すのは、競争相手を蹴落とすためではなく、皆が頂上を目指して全体のサービスレベルを引き上げ、すべての人々が幸福に暮らすことを目的とするためである。そこで本当に目指すべきサービスとは、一人ひとりの利用者を見つめるオンリーワンのサービスである。

だから我々は1日も休むことなく、人の暮らしを守るために考え続けなければならないのである。

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