制度改正や報酬改定時には将来へ向けた様々な布石が打たれている。しかしそのことは同時に巧妙に隠されてもいる。

例えば介護保険制度が施行された後、最初の報酬改定が行われた2003年は、マイナス2.3%の改訂率が一番の話題であったが、その時に制度の中に初めて位置づけられたのがユニットケアの新型特養であった。そしてこの時、新型特養では利用者から「ホテルコスト」を別途徴収できる仕組みを作った。

これが2006年の制度改正に先駆けて2005年10月に先行実施された、介護保険3施設の居住費と食費の利用者自己負担化への布石であったことは、2003年当時から僕が指摘していたことである。
(このことについて僕は当時、介護保険施設のホテルコストを全利用者から徴収するための橋頭保が新型特養であると指摘していた。)

06年改正は、定額報酬サービスを居宅サービスの中心にする布石が打たれた。だから来年度からの制度改正は、一応地域包括ケアシステムの完成形を目指したものと定義づけられるが、定額パッケージ報酬の「定時巡回・随時対応型訪問介護看護」をその基礎的サービスに位置付けている。

そこで今回の制度改正では、何がどの部分に、どのような布石が打たれているのかを探した時、「介護予防・日常生活支援総合事業導入」がそれにあたるだろうと読むことができる。そしてそれは近い将来の軽度者の給付除外、家事援助外しの布石ではないかということは容易に想像がつく。

介護予防・日常生活支援総合事業とは、今回の制度改正で新しく創設されるサービスで、利用者の状態像に合わせて、見守り・配食等を含めた、生活を支えるための総合的で多様なサービスとされている。そしてこれは地域支援事業として位置づけられるものである。ただしこのサービスを実施するかどうかはあくまで市町村判断であり、当然実施しないという判断もあり得る。

これを実施する場合は市町村・地域包括支援センターが、利用者の状態像や意向に応じて、予防給付で対応するのか、新たな総合サービス(地域支援事業)を利用するのかを判断するとして以下のイメージ図が示されている。
介護予防・日常生活支援総合事業導入後の選定方法

つまり介護予防・日常生活支援総合事業する市町村では、要支援と認定された場合、現行のように介護予防給付のサービスを必ず利用できるという保障はなく、地域包括支援センターのアセスメントによって介護予防サービス対象者と、新たに創られる「介護予防・日常生活支援総合事業」対象者とに振り分けるということになる。この際、利用者の意向は汲み取ってアセスメントするとはいっても、あくまでケアマネジメントに基づいてサービスが提供されるものであり、「要支援認定者の意向だけで判断されるわけではない。」とされており、要支援者の望まないサービスを使わざるを得ないという状況が考えられる。

その導入後のイメージ図が次である。

介護予防・日常生活支援総合事業導入のイメージ

これをみて感じたことは、このイメージ図は巧妙に問題の本質を隠した図になっているということである。

この図だけを見ると、現行の予防通所サービスや予防訪問サービスに加えて、配食サービスや見守りサービスがセットされるように見えるが、前述したように、この事業はあくまで「地域支援事業」である。

地域支援事業ということは、現行、その予算は介護給付費から支給されるが、その額は介護・予防給付の3%という枠がある。国は現時点で、この枠の見直しもあり得るとしているが、どちらにしても一定の枠内の事業だから、給付費は予防給付よりかなり低くなる。

そして「介護予防・日常生活支援総合事業」の訪問、通所サービスとは、現在の介護予防給付の訪問、通所サービスとは全く別物で、市町村がサービス事業所を独自に指定してよいとされている。つまりNPOでも民間営利企業でも、ボランティア団体でも何でもありという意味だ。訪問サービスもヘルパー資格を特に求められないから、誰でも訪問できる。現在地域支援事業として介護予防の体操などが行われている地区は、それがそのままこの事業の通所サービスに置き換わる可能性が高い。

さらにこの事業の単価は全国統一ではなく、市町村がそれぞれ設定することになり、利用者負担割合も市町村が決めることになっている。逆にいえば市町村格差が大きな事業という意味になる。予算のない市町村は、当然この単価をできるだけ低く設定したいだろうし、その低い単価で提供されるサービスであれば、当然それは人件費をあまりかけずに、安かろう悪かろうが当然のサービスとなるだろう。

どちらにしても「介護予防・日常生活支援総合事業」は、今まで保険給付の対象でなかった配食サービスや、見守りサービスを組み合わせて保険給付されるものだというが、総合事業の中身は現行の介護予防サービスの水準よりはるかに低いサービスで、利用者にとってあまり使いたいサービスにはならないだろう。

そしてこの意味は、介護予防サービス利用者が、地域支援事業しか使えなくなる場合があるということであり、これも要支援者に対する給付制限の一つと言ってよいサービスである。

さらにいえば国は制度改正で地域包括ケアというシステムを構築したのだから、あとはその運用を地域の責任で行いなさいという意味である。各市長村で、その責任と財源に基づいた地域ケアを創る責任を自覚し、結果責任は市町村が負うべきで国に文句は言わせないという意味である。市町村が必要と思うなら、予防対象者は地域支援事業という枠内で面倒見なさいという先には、介護予防対象者を介護保険給付から外すという将来像が見え隠れしている。特に地域支援事業としての「介護予防・日常生活支援総合事業」には生活援助(家事援助)サービスははいっていないことを鑑みれば、これは介護保険給付からの生活援助外しの意図があることは明白である。

このように介護保険料を支払い、権利として介護サービスが利用できる国民が、介護認定を申請し、要支援あるいは要介護と認定されたにも関わらず、アセスメントと称した別基準により特定サービスのみしか使えないという制限ができるという実績が「介護予防・日常生活支援総合事業」により積み重ねることによって、このことを橋頭保として、次期改正ではその制限を拡大すれば給付抑制策はさらに拡大できることになる。

つまりこれは制限拡大のソフトランディングであり、その先には要介護1と2の需給制限も視野に入っており、これにより次期改正では、施設入所の対象者は要介護3以上というルール設定がされるかもしれないという意味があることを、関係者は強く意識すべきである。

※昨日のブログに貼り付けた投票アンケートに、たくさんの皆さんから介護福祉士を目指す学生に対するメッセージをいただき感謝します。このメッセージは必ず生徒全員に伝えます。投票は18日まで実施していますので、まだメッセージを送られていない方は、是非それまでに投票メッセージをお願いします。右サイドバーにも投票ツールを表示していますので、そちらもご利用ください。
なお投票は1PCから1回しかできず、同じPCから複数のメッセージを送った場合、前のメッセージが消えてしまいますのでご注意ください。)


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