介護支援専門員はケアプランを作る人ではない。

ケアプランというツールを使いこなし、人の豊かな暮らしに繋がる援助活動に携わることができる専門家が介護支援専門員であるのだ。

だからその略称はケアプランナーではなく、ケアマネジャーというのである。

しかし適切なアセスメントを行い、生活課題からニーズを引き出して、それに基づいたケアプランを立案したとしても、チームとして連携すべき他のメンバーと意思疎通がうまくとれず、チームとして意思統一できず、ケアプランが機能しなければ、それはただの紙切れに過ぎなくなる。ただの紙切れを作るだけの職種ならば、ケアマネジャーではなく「書類作成人」に過ぎなくなる。

しかし実際には実地指導のために必要とされる書類でしかなく、現場のサービスに利用できない空虚なケアプランを作成しているケアマネが存在する。

特に施設サービスにこの傾向が強い。

居宅サービスの場合は、所属事業所が異なる様々な事業関係者がチームを作ることになるが、居宅介護支援事業所のケアマネジャーが利用者の居宅サービス計画を立案する場合、そのサービス計画に載せられてはじめてサービス提供できるということになるから、ケアマネとサービス事業所の担当者に職制上の上下関係はなくとも、ごく自然とチームの要にケアマネが位置することになるし、居宅サービス計画が立案されている場合は、各サービス事業所のプランも、それに沿った内容で立案されなければならないという法令上のルールがある。よってごく自然と居宅介護支援事業所のケアマネジャーがリーダーシップを得ることになる場合が多い。

しかし施設サービスの中で、ケアプランを立案するケアマネジャーの立場は様々で、ケアプランを作成するというだけでは職場でリーダーシップを発揮する立場に立つことには必ずしもならない。そこには施設という組織の中での歴全とした職制が立ちはだかる場合が多いからである。

そうなると例えば、ケアマネより上司に当たる現場の看護師や介護主任が、サービスプランを立案しようとして話しあう過程で、必要性があるサービスをケアマネジャーがアセスメントの結果として提案しても、「そんなことはできない」で終わってしまうことがある。ケアプランに必要性があるとして載せたサービスであっても、「プランはそうでも現場ではそんなことはできない」ということだって現実に起こっている。

これではサービスは永遠に向上しない。

ケアプランとは一連のケアマネジメントの結果から導き出される必要なサービスを具体化するツールであるのだから、場合によっては現状のルーティンワークを、その必要性に基づいて変える必要も示すものである。つまり施設サービス計画が、利用者の生活全般、まさに365日24時間の生活部分に提供すべきサービスや、その関わり方に焦点を当てるものであるとしたら、それは「どんなサービスを提供するか」「現在の施設サービスのどれと利用者を結ぶか」という視点に留まらず、そのサービス提供の改良や方法の転換まで考えが及ばざるを得ない。この時サービスのスタンダードを変えなくとも個別の方法を組み込む必要も出てくる。

つまり施設サービス計画とは、施設のシステムやサービス内容がこれで良いのか、という部分まで踏み込むものであるはずなのだ。

そうなるとサービス担当者会議で議論される内容も、こういう課題に対し、こういう対応を行なうことにより、こういう目標を達成することができる、という視点をベースに、ケアの展開過程を精査し、場合によってはサービス提供システム自体を変える必要性の検討にも及ばざるを得ない。

このときケアマネがアセスメントし、ケアプランを作成する上でのリーダーシップをとらねばならないのに、いざその計画を実践しようとする入り口で、ケアの現場のリーダーシップや権限がケアマネに持たされていないことにより、その内容が受け入れられない、という問題が出現するのであれば、この計画は意味のないものになり、サービス担当者会議は「しない理由」「できない理由」を確認するだけの機能不全会議となるだろう。

これでは施設サービスのケアマネジャーを配置している意味はない。人件費の無駄である。

よって施設管理者は、この無駄を生じさせないために、ケアマネジメントという多くの業務時間と手間をかける作業を現場のサービスに生かすシステムを創らねばならない。

計画担当ケアマネジャーがケアプランを作り人に終わらせず、ケアプランというツールを使って現場のサービスの品質の維持・向上を図り、利用者の暮らしをより良いものにするための配置職としなければならない。そうであればケアマネジャーは、その計画をチームの要として現場サービスに生かすための権限やリーダーシップを持たねばならないことになる。

相談援助などの前職経験を5年も経て初めて資格を取得させるという意味は、そういう立場に立てる経験者であるという意味でもあるのだ。

だからケアマネジャーはそうした権限を持つという意味でも、ソーシャルケースワーカーとして、相談援助業務を束ねる職制上の地位と、知識、技術を持ったものを任命すべきである。

看護職員や介護職員等と兼務しながら、数件のケアプランを立案する兼務者がケアマネと称しているだけでは意味がないのである。

※昨日のブログに貼り付けた投票アンケートに、たくさんの皆さんから介護福祉士を目指す学生に対するメッセージをいただき感謝します。このメッセージは必ず生徒全員に伝えます。投票は18日まで実施していますので、まだメッセージを送られていない方は、是非それまでに投票メッセージをお願いします。右サイドバーにも投票ツールを表示していますので、そちらもご利用ください。
なお投票は1PCから1回しかできず、同じPCから複数のメッセージを送った場合、前のメッセージが消えてしまいますのでご注意ください。)


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