5/31・衆議院厚労委で修正を行い、6項目を付帯決議したうえで可決し、6/15参議院本会議で可決成立した法案は「介護サービスの基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律案」であり、介護保険法だけの改正案ではなく、関連法案として社会福祉士及び介護福祉士法の一部改正なども含まれている。それによると

社会福祉士及び介護福祉士法の一部改正[平成24年4月1日施行]
一 介護福祉士による喀痰吸引等の実施
1 介護福祉士は、喀痰吸引その他の身体上又は精神上の障害があることにより日常生活を営むのに支障がある者が日常生活を営むのに必要な行為であって、医師の指示の下に行われるもの(厚生労働省令で定めるものに限る。)を行うことを業とするものとすること。(第2条第2項関係)
なお、厚生労働省令においては、喀痰吸引(口腔内・鼻腔内・気管カニューレ内部)及び経管栄養(胃ろう・腸ろう・経鼻経管栄養)を定める予定であること。
2 介護福祉士は、保健師助産師看護師法の規定にかかわらず、診療の補助として喀痰吸引等を行うことを業とすることができるものとすること。(第48条の2第1項関係)
二 認定特定行為業務従事者による特定行為の実施
1 介護の業務に従事する者(介護福祉士を除く。)のうち、認定特定行為業務従事者認定証の交付を受けている者は、保健師助産師看護師法の規定にかかわらず、診療の補助として、医師の指示の下に、特定行為(喀痰吸引等のうち当該認定特定行為業務従事者が修了した喀痰吸引等研修の課程に応じて厚生労働省令で定める行為をいう。以下同じ。)を行うことを業とすることができるものとすること。(附則第3条第1項関係)
2 認定特定行為業務従事者認定証は、介護の業務に従事する者に対して認定特定行為業務従事者となるのに必要な知識及び技能を修得させるため、都道府県知事又はその登録を受けた者が行う喀痰吸引等研修の課程を修了したと都道府県知事が認定した者でなければ、その交付を受けることができないものとすること。(附則第4条第2項関係)


このように来年4月以降(同修正法案の施行は24年4月1日である)喀痰吸引等の実施は介護福祉士については「業」として実施が認められた。介護福祉士資格のない者も「認定特定行為業務従事者」の要件を満たすことで同じく「業」として喀痰吸引等が実施できるわけである。

ただし喀痰吸引等が業として認められる介護福祉士とは、研修体制が整う2015年以降の介護福祉士資格取得者で、それ以前の資格取得者は「認定特定行為業務従事者」に認定されなければならない。よって来年4月からの3年間については「認定特定行為業務従事者」による喀痰吸引等が業として認められるという意味になる。

この中の「等」の意味は経管栄養に関わる行為も含んでいるという意味であるほかに、国は「法律は代表するものだけで、細目は厚生労働省令で定める。中間まとめでは将来的な拡大の可能性を視野に入れるため、「喀痰吸引及び経管栄養」に限定していない。」(2011年4月14日厚生労働省ヒアリングにおいて老健局担当者が回答)との考え方を示している。その詳細は今後、厚生労働省令などで示される。このように一部の行為であっても医療・看護の有資格者以外にその行為を認めたことはある意味、画期的であり、歴史的な意味があると評価できるかもしれない。なぜなら一部の行為を介護職の業として認めたということは、その範囲が今後広がる可能性があるからだ。

しかし今回の法改正をもって、介護福祉士や認定特定行為業務従事者であれば、どこでも喀痰吸引等を業務として行うことができるというのは誤った理解である。

なぜなら有資格者自身の業として認められているとしても、同法第48条の三では「自らの事業またはその一環として、喀痰吸引等(介護福祉士が行うものに限る)の業務(以下、「喀痰吸引等業務」という。)を行おうとする者は、その事業所ごとに、その所在地を管轄する都道府県知事の登録を受けなければならない。」とし、登録要件を定めた同条同項第2号の四では「その他厚生労働省令で定める事項」が明記されており登録した事業所に限って業として喀痰吸引等業務を行うことができると定められているのである。

つまり今後定められる条件(研修や記録など)に合致しない事業所は「登録喀痰吸引等事業者」の登録ができず、そこでは介護福祉士の喀痰吸引等業務は実質できないということになる。

つまり介護福祉士の業として喀痰吸引等業務が認められたとはいっても、それが実施できる場所は同法でいう「登録喀痰吸引等事業者」に限られているという意味だ。

しかも同法48条の五は都道府県知事が登録申請した場合登録しなければならない要件を定めた規定であるが、その三には「医師、看護師その他の医療関係者による喀痰吸引等の実施のための体制が充実しているため介護福祉士が喀痰吸引等を行う必要性が乏しいものとして厚生労働省令で定める場合に該当しないこと」という項目がある。

この意味がお分かりか?

つまり医師や看護師配置が充足していると考えられる医療機関や施設は厚生労働省令に於いて「介護福祉士が喀痰吸引等を行う必要性が乏しいものとして」定め置くので「登録喀痰吸引等事業者」として登録できない=介護福祉士が喀痰吸引等を業として行えない、という意味だ。

よって医療機関はこの登録ができずつまり来年4月以降も老医療機関(介護療養型医療施設を含む)では介護福祉士による喀痰吸引等はできないという意味である。

登録できる機関は、
・ 介護関係施設(特別養護老人ホーム、老人保健施設、グループホーム、有料老人ホーム、通所介護、短期入所生活介護等) ・ 障害者支援施設等(通所施設及びケアホーム等) ・ 在宅(訪問介護、重度訪問介護(移動中や外出先を含む)等) ・ 特別支援学校である。

このように喀痰吸引や経管栄養に関する行為が業として介護福祉士や認定特定行為業務従事者に認められたと言っても、それは限定的な要件のもとで認められているに過ぎず、その要件を満たすために膨大な書類が必要となり、かつ研修などの費用負担も大きいということを認識しておく必要があるということだ。

少なくともこの改正で介護福祉士の「できる行為」が無条件に拡大したと考えるのは錯覚である。

このように喀痰吸引や経管栄養に関する行為が業として介護福祉士や認定特定行為業務従事者に認められたと言っても、実施できる要件は「喀痰吸引等事業者」の登録を受けた特養、特定施設、グループホーム、訪問介護事業所等に所属して、その事業範囲でサービス提供を行う場合に限られている。その要件を満たすために膨大な書類が必要となり、かつ研修などの費用負担も大きいということを認識しておく必要があるということだ。
 なお医療行為の範囲や研修カリキュラムなど具体的な運用については、本年9月以降に省令で示す考えだ。今後この内容に注目する必要があるだろう。どちらにしてもこの改正で介護福祉士の「できる行為」が無条件に拡大したわけではないという理解が必要である。

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