今日はケアマネジャーや、居宅サービス事業所の職員が勘違いしやすい医療リハビリと介護保険制度のリハビリの適用関係について整理してまとめてみる。この4月からケアマネ業務についている方も、今一度このことを確認整理していただきたい。
平成18年の診療報酬改定で、脳卒中などの患者が医療保険で受けるリハビリに日数制限規定が設けられた。それは特定疾患を除き、90〜180日の期間に限定して診療報酬を算定するというものであった。しかしこのことについては「医療保険のリハビリが必要な日数には病気の種類や個人差が大きい、また介護保険で行われるリハビリは医学的に十分とはいえない」という批判の声が高まり、現場の医師・患者から48万人の署名が厚労省に提出され、国会でも野党が激しく反対した結果、翌・平成19年3月14日、柳沢厚労相(当時)が中央社会保険医療協議会(中医協)に対しリハビリテーション料の緊急見直しについて諮問を行い、即日答申を得た。
これによりリハビリによる改善の見込みがある患者は算定日数上限を超えた以後もリハビリを継続できるよう、除外患者(筋萎縮性側索硬化症(ALS)、悪性関節リウマチなど約50種の特定疾患)に新たに急性心筋症梗塞、狭心症、慢性閉塞性肺疾患を追加した。さらに、これらの疾患以外でも改善の見込みがあると医師が判断したときは、リハビリの延長を認めるとした。これにより事実上、18年改正時のリハビリ日数制限ルールは形骸化したのである。
しかし国のリハビリテーション医療に関する基本方針は「急性期のリハビリは医療保険で、維持期リハビリは介護保険で」というものであり、平成20年3月28日・保医発第0328001号・『「療担規則及び薬担規則並びに療担基準に基づき厚生労働大臣が定める掲示事項等」及び「保険外併用療養費に係る厚生労働大臣が定める医薬品等」の実施上の留意事項について』等の一部改正について、を定め医療保険の外来リハビリ(診療報酬)と、介護保険のリハビリテーション関連サービスの適用関係を明確化した。
この50ページでは
6 リハビリテーションに関する留意事項について
要介護被保険者等である患者に対して行うリハビリテーションは、同一の疾患等について、医療保険における心大血管疾患リハビリテーション料、脳血管疾患等リハビリテーション料、運動器リハビリテーション料又は呼吸器リハビリテーション料(以下「医療保険における疾患別リハビリテーション料」という。)を算定するリハビリテーション(以下「医療保険における疾患別リハビリテーション」という。)を行った後、介護保険における訪問リハビリテーション若しくは通所リハビリテーション(リハビリテーションマネジメント加算又は短期集中リハビリテーション実施加算を算定していない場合を含む。)又は介護予防訪問リハビリテーション又は介護予防通所リハビリテーション(運動器機能向上加算を算定していない場合を含む。)(以下「介護保険におけるリハビリテーション」という。)に移行した日以降は、当該リハビリテーションに係る疾患等について、手術、急性増悪等により医療保険における疾患別リハビリテーション料を算定する患者に該当することとなった場合を除き、医療保険における疾患別リハビリテーション料は算定できない。
ただし、患者の状態や、医療保険における疾患別リハビリテーションを実施する施設とは別の施設で介護保険におけるリハビリテーションを提供することになった場合などでは、一定期間、医療保険における疾患別リハビリテーションと介護保険のリハビリテーションを併用して行うことで円滑な移行が期待できることから、必要な場合には、診療録及び診療報酬明細書に「医療保険における疾患別リハビリテーションが終了する日」を記載し、当該終了する日前の1月間に限り、同一の疾患等について介護保険におけるリハビリテーションを行った日以外の日に医療保険における疾患別リハビリテーション料を算定することが可能である。
また、医療保険における疾患別リハビリテーションが終了する日として最初に設定した日以降については、原則どおり、同一の疾患等について医療保険における疾患別リハビリテーション料は算定できないものであるので留意すること。
上記の通り示されており、つまりこの部分の規定と通知全体およびQ&Aで示されているルールをまとめると
1)(特例移行期間の1月を除くと)介護保険で、通所リハビリ、介護予防通所リハビリ、訪問リハビリ、介護予防訪問リハビリを受けている方は、同一疾患では医療保険でのリハビリは受けることが出来ない。
2)一度、介護保険でのリハビリを受けてしまうと、そのサービスを休止しても、その後「疾患別リハビリテーション」と呼ばれる集中して行われるリハビリは受けることが出来ない。
以上のようなルールが設けられた。
これはケアプランを立案するケアマネは当然知っておかねばならないルールだ。なぜなら、通所リハビリなどの必要性を「かかりつけ医」に確認してケアプランに通所リハビリを位置づけた時に、(考えにくいが)その「かかりつけ医」とは別な医療機関で外来リハビリを受けている場合に、通所リハビリを利用することを当該医療機関が知らずに外来リハビリを継続していた場合、特例移行期間の1月以降の外来リハビリは診療報酬を算定できなくなるのに、そのことを知らずに外来リハを実施し診療報酬を請求していた場合、後に診療報酬の返還指導が行われた際に、計画担当者であるケアマネにクレームが挙がってくることが考えられ、それは場合によっては損害賠償という事態にもなりかねないからだ。
このルールはあくまで診療報酬算定ルールで、介護サービス事業者(訪問リハビリ及び通所リハビリ)の介護報酬算定ができなくなるというものではないが、診療報酬を算定する医療機関とトラブルにならないように注意が必要である。
場合によっては、このルールを知らない医師がいて、自分が介護保険のリハビリ導入するように勧めて、なおかつ外来リハビリも続けようとするケースも報告されている。その結果、困るのは診療報酬を算定できない医療機関であり、その責任は当該医師にすべて帰属するのであるが、この場合も、後々のトラブルを避けるためにも、このブログで示した通知文を根拠に、(外来リハの継続は、)できないことはできない旨きちんと説明する必要がある。
通所リハビリや訪問リハビリ事業所の職員もそのことを知っておく必要があり、自分が所属する通所リハビリや訪問リハビリの利用者が、外来リハビリに通っているとしたら「それって変じゃない」という疑問を持ち、担当者に確認するように促すべきである。
ところで、ここで問題となるのは「訪問看護7」はどうなのかということである。
ケアマネなら知らない人はいないと思うが「訪問看護7」とは訪問看護ステーションからセラピスト(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)が派遣され、居宅に於いてリハビリテーションを実施するものであり、実質「訪問リハビリ」と変わらず、現に訪問リハビリの資源が少ない地域では、その替りに「訪問看護7」を計画に位置付けることが普通に行われている。
しかし通院リハビリとの適用関係通知には「訪問看護7」との適用関係は示されておらず、あくまで「訪問看護7」は「訪問リハビリ」ではないということを鑑みれば、「訪問看護7」と外来リハビリの併用で、診療報酬の算定は不可能ではないという結論を導き出さざるを得ない。
これは大きな矛盾であるが、完全なる法ルールはあり得ないという現実に於いて生じている矛盾で、その理由を説明できる人はいないだろう。
よって通院で医療保険リハビリを受けている人に、「訪問看護7」を計画することは可能である。このことに関し法の網をかいくぐるような不適切プランではないかと主張する人がいるが、そもそも維持期のリハビリテーションが、既存の介護保険リハビリだけで充分で、医療保険のリハビリの必要がないという根拠自体が不明瞭で、適用関係ルールが医療費の給付抑制策として創られたものであることを鑑みると、必ずしもそうしたプランが不適切とは言えないのではないかと考える。
要は担当者会議等で「かかりつけ医師」の意見を踏まえ、訪問看護事業担当者と、医療と介護リハビリの併用の必要性が検証されることが大事ではないだろうか。
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介護・福祉情報掲示板(表板)
平成18年の診療報酬改定で、脳卒中などの患者が医療保険で受けるリハビリに日数制限規定が設けられた。それは特定疾患を除き、90〜180日の期間に限定して診療報酬を算定するというものであった。しかしこのことについては「医療保険のリハビリが必要な日数には病気の種類や個人差が大きい、また介護保険で行われるリハビリは医学的に十分とはいえない」という批判の声が高まり、現場の医師・患者から48万人の署名が厚労省に提出され、国会でも野党が激しく反対した結果、翌・平成19年3月14日、柳沢厚労相(当時)が中央社会保険医療協議会(中医協)に対しリハビリテーション料の緊急見直しについて諮問を行い、即日答申を得た。
これによりリハビリによる改善の見込みがある患者は算定日数上限を超えた以後もリハビリを継続できるよう、除外患者(筋萎縮性側索硬化症(ALS)、悪性関節リウマチなど約50種の特定疾患)に新たに急性心筋症梗塞、狭心症、慢性閉塞性肺疾患を追加した。さらに、これらの疾患以外でも改善の見込みがあると医師が判断したときは、リハビリの延長を認めるとした。これにより事実上、18年改正時のリハビリ日数制限ルールは形骸化したのである。
しかし国のリハビリテーション医療に関する基本方針は「急性期のリハビリは医療保険で、維持期リハビリは介護保険で」というものであり、平成20年3月28日・保医発第0328001号・『「療担規則及び薬担規則並びに療担基準に基づき厚生労働大臣が定める掲示事項等」及び「保険外併用療養費に係る厚生労働大臣が定める医薬品等」の実施上の留意事項について』等の一部改正について、を定め医療保険の外来リハビリ(診療報酬)と、介護保険のリハビリテーション関連サービスの適用関係を明確化した。
この50ページでは
6 リハビリテーションに関する留意事項について
要介護被保険者等である患者に対して行うリハビリテーションは、同一の疾患等について、医療保険における心大血管疾患リハビリテーション料、脳血管疾患等リハビリテーション料、運動器リハビリテーション料又は呼吸器リハビリテーション料(以下「医療保険における疾患別リハビリテーション料」という。)を算定するリハビリテーション(以下「医療保険における疾患別リハビリテーション」という。)を行った後、介護保険における訪問リハビリテーション若しくは通所リハビリテーション(リハビリテーションマネジメント加算又は短期集中リハビリテーション実施加算を算定していない場合を含む。)又は介護予防訪問リハビリテーション又は介護予防通所リハビリテーション(運動器機能向上加算を算定していない場合を含む。)(以下「介護保険におけるリハビリテーション」という。)に移行した日以降は、当該リハビリテーションに係る疾患等について、手術、急性増悪等により医療保険における疾患別リハビリテーション料を算定する患者に該当することとなった場合を除き、医療保険における疾患別リハビリテーション料は算定できない。
ただし、患者の状態や、医療保険における疾患別リハビリテーションを実施する施設とは別の施設で介護保険におけるリハビリテーションを提供することになった場合などでは、一定期間、医療保険における疾患別リハビリテーションと介護保険のリハビリテーションを併用して行うことで円滑な移行が期待できることから、必要な場合には、診療録及び診療報酬明細書に「医療保険における疾患別リハビリテーションが終了する日」を記載し、当該終了する日前の1月間に限り、同一の疾患等について介護保険におけるリハビリテーションを行った日以外の日に医療保険における疾患別リハビリテーション料を算定することが可能である。
また、医療保険における疾患別リハビリテーションが終了する日として最初に設定した日以降については、原則どおり、同一の疾患等について医療保険における疾患別リハビリテーション料は算定できないものであるので留意すること。
上記の通り示されており、つまりこの部分の規定と通知全体およびQ&Aで示されているルールをまとめると
1)(特例移行期間の1月を除くと)介護保険で、通所リハビリ、介護予防通所リハビリ、訪問リハビリ、介護予防訪問リハビリを受けている方は、同一疾患では医療保険でのリハビリは受けることが出来ない。
2)一度、介護保険でのリハビリを受けてしまうと、そのサービスを休止しても、その後「疾患別リハビリテーション」と呼ばれる集中して行われるリハビリは受けることが出来ない。
以上のようなルールが設けられた。
これはケアプランを立案するケアマネは当然知っておかねばならないルールだ。なぜなら、通所リハビリなどの必要性を「かかりつけ医」に確認してケアプランに通所リハビリを位置づけた時に、(考えにくいが)その「かかりつけ医」とは別な医療機関で外来リハビリを受けている場合に、通所リハビリを利用することを当該医療機関が知らずに外来リハビリを継続していた場合、特例移行期間の1月以降の外来リハビリは診療報酬を算定できなくなるのに、そのことを知らずに外来リハを実施し診療報酬を請求していた場合、後に診療報酬の返還指導が行われた際に、計画担当者であるケアマネにクレームが挙がってくることが考えられ、それは場合によっては損害賠償という事態にもなりかねないからだ。
このルールはあくまで診療報酬算定ルールで、介護サービス事業者(訪問リハビリ及び通所リハビリ)の介護報酬算定ができなくなるというものではないが、診療報酬を算定する医療機関とトラブルにならないように注意が必要である。
場合によっては、このルールを知らない医師がいて、自分が介護保険のリハビリ導入するように勧めて、なおかつ外来リハビリも続けようとするケースも報告されている。その結果、困るのは診療報酬を算定できない医療機関であり、その責任は当該医師にすべて帰属するのであるが、この場合も、後々のトラブルを避けるためにも、このブログで示した通知文を根拠に、(外来リハの継続は、)できないことはできない旨きちんと説明する必要がある。
通所リハビリや訪問リハビリ事業所の職員もそのことを知っておく必要があり、自分が所属する通所リハビリや訪問リハビリの利用者が、外来リハビリに通っているとしたら「それって変じゃない」という疑問を持ち、担当者に確認するように促すべきである。
ところで、ここで問題となるのは「訪問看護7」はどうなのかということである。
ケアマネなら知らない人はいないと思うが「訪問看護7」とは訪問看護ステーションからセラピスト(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)が派遣され、居宅に於いてリハビリテーションを実施するものであり、実質「訪問リハビリ」と変わらず、現に訪問リハビリの資源が少ない地域では、その替りに「訪問看護7」を計画に位置付けることが普通に行われている。
しかし通院リハビリとの適用関係通知には「訪問看護7」との適用関係は示されておらず、あくまで「訪問看護7」は「訪問リハビリ」ではないということを鑑みれば、「訪問看護7」と外来リハビリの併用で、診療報酬の算定は不可能ではないという結論を導き出さざるを得ない。
これは大きな矛盾であるが、完全なる法ルールはあり得ないという現実に於いて生じている矛盾で、その理由を説明できる人はいないだろう。
よって通院で医療保険リハビリを受けている人に、「訪問看護7」を計画することは可能である。このことに関し法の網をかいくぐるような不適切プランではないかと主張する人がいるが、そもそも維持期のリハビリテーションが、既存の介護保険リハビリだけで充分で、医療保険のリハビリの必要がないという根拠自体が不明瞭で、適用関係ルールが医療費の給付抑制策として創られたものであることを鑑みると、必ずしもそうしたプランが不適切とは言えないのではないかと考える。
要は担当者会議等で「かかりつけ医師」の意見を踏まえ、訪問看護事業担当者と、医療と介護リハビリの併用の必要性が検証されることが大事ではないだろうか。
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