居宅介護支援事業所には運営基準減算という罰則があり、「サービス担当者会議未開催」等、ケアプラン作成作業を法令で示したルールに基づいて行っていない場合、居宅介護支援費を通常の7割しか算定できなくなる。

ところが施設サービスの場合、職員未配置減算や定員超過減算はあるが、施設サービス計画の作成ルールに関連した未実施減算というものはない。例えば「サービス担当者会議」を実施せずに施設サービス計画を作成していたとしても、それは運営指導対象にはなるが、そのことで介護給付費を減算しなければならないとか、即、算定できなくなるということはない。

このことを「不公平」だと考える関係者がいるとしたら、それは大きな間違いである。

なぜなら居宅介護支援費とは、まさにケアマネジメントを行うための報酬で、それはケアプラン作成作業から給付管理を通じての一連の作業に対する対価であり、その作業に瑕疵があれば、その対価を削るということはごく当たり前だからである。

一方、施設サービスの介護給付費とは、基本的には身体介護を中心にしたサービス提供の対価及びそれに伴う物品費等であり、施設サービス計画の作成費用は含まれていない。なぜならそれはサービス提供する前提条件であり、それがないサービスは認められていないからである。ここは居宅サービス計画が保険給付を現物給付化するための手段である点と大きく異なっているのだ。そのため措置制度から、介護保険制度に変わった際に、施設サービスの介護給付費にケアプラン作成料が上乗せされたという事実はないのだ。

だから施設サービスについては、ケアプラン作成に対する費用支給がされていないため、減算する対象対価がないということなのである。

ただし居宅サービス計画がサービスを現物給付化する手段であり、この計画がなくても償還払いでサービスを受けることは認められているのと異なり、施設サービスについては、施設サービス計画に基づくサービス提供とされているため、それがないサービスは認められていない。つまり暫定プランなど、何らかの形で施設サービス計画がないと、それは保険給付の対象サービスとはならないという意味だから、悪質なルール無視のケアプラン作成作業については運営指導上厳しくみられ、場合によっては減算どころか給付費そのものが支給されないという判断があり得ることを理解しておくべきである。

また居宅サービス計画と、施設サービス計画の両者に共通して必要とされている「サービス担当者会議」について、その中の「担当者への照会」というルールについては、大きな違いがある。このことに気が付いているケアマネは以外と少ない。どういうことかというと、まず居宅介護支援と介護老人福祉施設の運営基準で、その部分を比べるとよくわかる。

まず居宅介護支援については、指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成十一年三月三十一日厚生省令第三十八号)、第13条9項「介護支援専門員は、サービス担当者会議(介護支援専門員が居宅サービス計画の作成のために居宅サービス計画の原案に位置付けた指定居宅サービス等の担当者(以下この条において「担当者」という。)を召集して行う会議をいう。以下同じ。)の開催により、利用者の状況等に関する情報を担当者と共有するとともに、当該居宅サービス計画の原案の内容について、担当者から、専門的な見地からの意見を求めるものとする。ただし、やむを得ない理由がある場合については、担当者に対する照会等により意見を求めることができるものとする。」

↑とされている。つまり「担当者に対する照会」は、あくまで「やむを得ない理由がある場合について」という条件付きで、これはサービス担当者会議を開くために日程調整を行ったが、所属の違う担当者が一同に会する日時の調整が難しく、指定日時に会議にどうしても参加できない担当者については「照会」により会議参加に替えるというもので、最初から「照会ありき」で、サービス担当者会議を開催しないということは認められていないのである。

一方、施設サービス計画におけるサービス担当者会議と照会の位置づけを、指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準(平成十一年三月三十一日厚生省令第三十九号)から読みとると、12条6項「計画担当介護支援専門員は、サービス担当者会議(入所者に対する指定介護福祉施設サービスの提供に当たる他の担当者(以下この条において「担当者」という。)を召集して行う会議をいう。以下同じ。)の開催、担当者に対する照会等により、当該施設サービス計画の原案の内容について、担当者から、専門的な見地からの意見を求めるものとする。」

↑以上のようにされており、施設サービス計画を決定すべきサービス転倒者会議に就いては、別段「やむを得ない理由がある場合について」のみ照会で会議参加に替えるというルールにはなっておらず、むしろ「サービス担当者会議の開催、担当者に対する照会等により」という表現から、サービス担当者会議と照会は同列に扱われていると読みとることが可能である。これは老健や介護療養型医療施設の計画作成ルール上も同様である。

つまり施設サービス計画については、特別な事情がなくとも、あえてサービス担当者会議を開催せず、担当職員の照会で済ます場合があってよいのである。

居宅介護支援と施設サービスにおけるサービス担当者会議の「照会」について、この違いは何か?

おそらく居宅サービスにおいては、各担当者は所属が違う別事業の職員が多いということで、それぞれの担当者の状況確認や意思統一のためには、基本として一定の期間ごとに全メンバーが一堂に会して情報交換を行う必要があるのに対し、施設サービスという単品サービスについては、同じ職場で勤務している職員同士ということで、日常的にコミュニケーションを交わしながら情夫共有が可能であり、あえて会議形式をとらずともケアマネを中心にして情報伝達を行うことでサービス計画の作成や、その内容の把握に問題はないということだろと想像する。

どちらにしても「照会」の取り扱いは、居宅サービスと施設サービスで大きく異なっているという事実を知るべきであり、施設サービスでは、サービス担当者会議の重要性を否定する必要はないが、臨機に「照会」を有効に活用して施設サービス計画を立案するという手法を取り入れたってよいということも知っておくべきである。

こうしたルールなど、法令で認められている部分は有効に利用しない手はないのである。あまり頭を固くして杓子行儀に考えすぎると、プランも硬直的、形式的になってしまうぞ。

ブログ書籍化本、おかげさまで好評発売中。下のボタンをプチっと押して、このブログと共に応援お願いします
人気ブログランキングへ

blogram投票ボタン
↑こちらのボタンをクリックしていただくと、このブログの解析がみられます。
介護・福祉情報掲示板(表板)