新しい年を迎え昨年をあらためて振り返ってみると、当施設で暮らしていた幾人かの人々と永のお別れをした。施設の中で看取った方も多い。

当施設では看取り介護を行った場合は、対象者がお亡くなりになった後、デスカンファレンスとしての「看取り介護終了後カンファレンス」というものを行い、必ず評価し、さらなるサービスの質の向上及び現在の質の維持に努めている。そして看取り介護の終了とは、その評価を終えた時点のことをいうようにしている。

いつもベストのケアを提供できるように心がけているが、カンファレンスにおいて反省点がなくなることはない。「気づきがあるからそれはよいことだ」とする考え方もあるが、そこには対象者がいて、その対象者の命が燃え尽きる最期の瞬間に係る以上、我々が目指すべきは「反省点のない最高のケア」でなければならないことは言うまでもない。

いつになったらその頂(いただき)にたどり着けるのだろう。

しかし反省点の中には、失敗の反省ではなく、さらなるサービスの質の向上に向けたポジティブな反省点があるのだから、これはやはり「気づき」として評価してもよいのか?少なくとも我々が、我々の施設で「看取り介護」を実践する決定段階においては、全職員一丸となってベストを尽くそうという「気構え」は持っていなければ嘘である。

最近看取った方の反省の中にも、ポジティブな改善に向けた「気づき」がある。例えば次のようなものだ。

≪ベッド周辺や居室の環境面については毎回、カンファレンスで意見交換され、以前に「看取りだからって急にベッド回りや環境を飾るのは、どうなんだろう・・・・」という意見があったように「看取りだから」ではなく、日頃からその方の生活の場、環境が整理されていると“突然の環境変化”に「不安」を感じること無くその人らしい生活環境の場で最後を迎えられると思う。いつ御家族が来園されても家族が「うちのお父さん(お母さん)は本当に職員から大事にされている」と言う事が伝わるような生活の場を作る思いやりが大事だと感じた。今後に繋げていきたいことはその方の一番好きな事、一番うれしい事、一番幸せと感じる事を日々の関わりの中で見出し、発信、提供し穏やかに過ごせる為のケアをユニットスタッフ、他職種と一緒にチームで提供できるよう関わりたいと思う。≫

まさに生活の質とは「QOL」だけではなく「QOD」という視点から考えられるべきだろうという反省だと思う。きっとこういう「気づき」が今後の施設サービスを変え、遅々とした歩みではあっても今以上のサービスができる改善へと繋がって行くのだろうと思う。

この方は褥そうリスクが高かったが、ぎりぎりまで入浴を行い、入浴が行えなくなった後は、清拭で清潔保持し、経口から食事が摂取出来なくなった後も、担当ユニットの副主任を中心にして、何か味わうことができないか、常に気を配って対応されていた。体調が悪く苦しそうな時期もあったが、必要な医療・看護処置により最終的には苦痛も取れ、最期は穏やかで安らかに時を過ごすことができた。そのことは評価の中で次のように記されている。

まず家族の評価については、奥さまから
「デイサービスの頃も含めて、大変お世話になりました。本当にありがとうございました」との言葉をいただいた。

この方は奥様と2人の高齢者世帯に属する方であったが、奥さまも体調が悪かったことから、意のままに面会にも来ることができない状態で関わったケースである。自宅で自分が看取りたいという思いがあっても、そのほかの家族が遠方で在宅ケアに協力が得られない家庭では、家庭に代わる場所として、奥さんが体調に応じて参加できる施設の支援による介護施設内の「看取り介護」というものにはそれなりの意味があり、今回はそのことを強く実感したケースである。

以下職員の評価より抜粋して、本日の記事を締めたい。

痩せてきており褥創リスクが高かったがマッサージを行う事で褥創予防ができていた。〇日から〇日までは状態が悪かったが、○日・○日と痰がらみもなく発熱・呼吸苦も治まり穏やかに過ごす事が出来ていた。大好きなテレビや歌謡曲を楽しむ事もできていた。奥様も○日には泊りたいとの思いはあった様で準備をしてきていたが、自身の体調も悪く不本意ながら帰宅された。奥様のその思いはご本人にも話し理解して頂けたと思う。

亡くなる数時間前の朝の顔清拭は夜間ケアワーカーと早出ケアワーカーが行い丁寧に行う事ができた。その際にも穏やかな表情だった。息をひきとる時には家族は誰も付き添う事が出来なかったが夜勤ケアワーカーがこまめに様子を見に行くことで寂しい思いを感じなかったと思う。最期の瞬間は夜勤者が看取った。住みなれた自室でいつもの様に朝を向かえ、眠る様に息をひきとられた。最期の時まで自分の部屋で過せたことで不安無く安心できたと思う。亡くなった時の表情が穏やかでうっすらと笑みを浮かべているかのようだった。

合掌。

↓応援して下さる方、共感してくださる方はプチッと押してください。
人気ブログランキングへ

blogram投票ボタン
↑こちらのボタンをクリックしていただくと、このブログの解析がみれます。
介護・福祉情報掲示板(表板)