先週10日、今年の介護支援専門員実務研修受講試験(つまりは実務研修を受けるための筆記試験)合格発表が行われた。

今年も合格率は全国平均で20%弱だろうが、これによって新たに全国で数万人の新しい介護支援専門員が誕生するわけである。

それらの合格者は今後「実務者研修」を受けて、介護支援専門員として登録して実務に携わるわけであり「新人ケアマネです」という心境で現場に配置される人も多いのだろう。しかしそれらの人々は、保健・医療・福祉分野で何らかの関連実務5年以上の経験を持つ者であり「新人だから何も知らない」ということが許されるわけではなく、現場の即戦力であるという自覚を持ってほしい。

目の前の利用者は、新人だかという理由で失敗を許してくれるほど寛容でもないし、経験者と比べてサービスの質の差があってもよいとは決して考えていない。そもそも失敗は即「暮らしの質の低下」に繋がっていくことを自覚してほしい。

そういう意味で、今回資格を新たに得た人、今までに資格を得て実務に携わっている人々、すべてのケアマネジャーに考えてほしいことがある。

制度改正議論、報酬改定議論の際には常にケアマネジメントの質が論じられている。

ケアマネジャーの資質そのものに対する疑問も数多く呈されている。そのすべての指摘が正しくないし、大変優れた能力を持つケアマネがいて、地域で頼られる人になっている場合があることも事実である。

しかし同時に、資格はあってもケアマネジメント技術を持っていないケアマネジャーがいることも事実だ。ケアプランを書いても日本語になっていない文章力のないケアマネ、法律そのものの理解がないケアマネなど、問題とされる有資格者が存在する。このデコボコをなんとか解消していかないと、将来的にこの資格は制度から消えて無くならざるを得ないという危機感を持っている。

特に真摯に勉強しようとせず、資格が一種の権力であるかのようにふるまう有資格者は最低である。

居宅サービスにおける介護支援専門員は、サービスプランを立てる人であり、居宅サービス事業者はそこに位置付けてもらう立場だし、各居宅サービス事業所の計画は、ケアマネの立案した「居宅サービス計画」に沿ったものにしなければならないので、あたかもケアマネと居宅サービス事業者の関係は上下関係で、ケアマネの管理下に居宅サービス事業者が置かれているように勘違いされる場合がある。しかし両者の関係は「サービス担当者」として同列であり、お互い協力連携する立場であり、ケアマネはその要の役割を担って、他事業・他職種のつなぎ役という位置に立っていることを忘れてはならない。

ところで、ケアプラン作成の要役であるはずのケアマネジャー自身が、ケアプラン作成に関する基本法令とルールを知らない事例が数多くある。

例えば僕の周辺で起こっていることとして、ケアマネジャーが、各サービス事業所のケアプランについて、長期目標と短期目標に分かれていないことを駄目だと指導するケースがある。

なるほど、ケアマネが立案する「居宅サービス計画」については、基準省令で「当該アセスメントにより把握された解決すべき課題に対応するための最も適切なサービスの組合せについて検討し、利用者及びその家族の生活に対する意向、総合的な援助の方針、生活全般の解決すべき課題、提供されるサービスの目標及びその達成時期、サービスの種類、内容及び利用料並びにサービスを提供する上での留意事項等を記載した居宅サービス計画の原案を作成しなければならない。」とされ「提供されるサービスの目標及びその達成時期」は必須項目であるし、これについて老企22号(7)の⑧で目標については「提供されるサービスについて、その長期的な目標及びそれを達成するための短期的な目標並びにそれらの達成時期等を明確に盛り込み〜」と長短期目標に分けることが示されている。そして老企第29号において標準様式が示され「原則として開始時期と終了時期を記入することとし、終了時期が特定できない場合等にあっては、開始時期のみ記載する等として取り扱って差し支えないものとする。」というルールが示されている。

しかしながら訪問介護や通所介護および通所リハビリテーション、ショートステイ等のサービス計画については、基準省令では

「指定訪問介護の目標、当該目標を達成するための具体的なサービスの内容等を記載した訪問介護計画を作成しなければならない。」(訪問介護)
「機能訓練等の目標、当該目標を達成するための具体的なサービスの内容等を記載した通所介護計画を作成しなければならない。」(通所介護)
「リハビリテーションの目標、当該目標を達成するための具体的なサービスの内容等を記載した通所リハビリテーション計画を作成しなければならない。」(通所リハビリ)
「サービスの目標、当該目標を達成するための具体的なサービスの内容等を記載した短期入所療養介護計画を作成しなければならない。」(短期入所療養介護)

となっているだけで、解釈通知の老企25号でも同様の記述があるだけである。つまり目標達成期間を明示しなければならないとか、目標を長期・短期と区分しなければならないという規定はない。

よって各サービス事業所の計画は、ケアマネが掲げた総合的援助の方針を達するために、その目標に沿った内容になっておればよいだけの話で、各サービス事業所としては「サービスの目標」と「当該目標を達成するための具体的なサービスの内容」が書かれておれば問題ないのである。

※ただし例外として、予防通所介護と予防通所リハビリテーションの「運動器機能向上加算」算定ルールについては「イ.理学療法士等が、暫定的に、利用者ごとのニーズを実現するための概ね3月程度で達成可能な目標(以下「長期目標」という)及び長期目標を達成するために概ね1月程度で達成可能な目標(以下「短期目標」という)を設定すること。長期目標及び短期目標については、介護予防支援事業者において作成された当該利用者に係る介護予防サービス計画と整合が図れるものとする。」というふうに、当該加算上の長短期目標設定のルールがあることに注意が必要で、かつこの長短期目標は、概ね3月と1月として定められていることも注意が必要だ。

またケアプランの交付義務について、居宅介護支援事業所の基準省令では「介護支援専門員は、居宅サービス計画を作成した際には、当該居宅サービス計画を利用者及び担当者に交付しなければならない。」とており、居宅サービス計画は利用者のみならず、必ず「担当者」、つまり居宅サービス計画に位置付けた各サービス事業所の担当者に交付しなければならず、それを担当者に交付しなければ、居宅介護支援事業所が運営基準違反で指導対象となるものだ。

しかし各サービス事業所の基準省令では、例えば短期入所療養介護では「指定短期入所療養介護事業所の管理者は、短期入所療養介護計画を作成した際には、当該短期入所療養介護計画を利用者に交付しなければならない。」とされ、この規定は他の居宅サービスも同様で、利用者に交付する義務はあるが、居宅介護支援事業所の担当ケアマネにこれを交付する義務は定められていない。よって必ずしも各サービス事業所は、自らの事業所で立案したケアプランそのものを担当ケアマネに渡す必要はなく、サービス担当者会議で、その内容を明らかにするだけでも特に問題はないのである。

もちろん両者の連携上の問題としては、それぞれのプラン内容を照らして確認する必要もあるだろうが、あくまで法令上の定めはこう出るという基本を知っておかないと、交付義務があるケアマネの方は、さっぱりサービス事業所にケアプランを渡さず、事業者のプランだけを求めて威張っているなんていうおかしな状況が生じかねないので、基本法令を知って、コンプライアンスの視点からサービスや、連携の在り方を考えるというのは重要な視点である。

特に今回資格を取った介護支援専門員の皆さんは、最初から自らの仕事について、法令ではどうなっているのか、今行っている方法が正しいという根拠がどこにあるのか、ということを常に考える癖をつけてもらいたいものである。

一番ダメなのは「保険者の担当者が言っていた」とか、「先輩ケアマネがこう言った」ということに根拠を置いてしまうということだ。間違っている人は周囲に必ず存在するのだから、基本法令に根拠を求めてほしい。

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