10/20〜22日まで札幌市で行われた「全国老人福祉施設大会・北海道大会」において、中田老施協会長は「財源の合理化や効率化にはユニット型ではない既存特養の増床が必要」として、施設整備には多床室を含めた既存特養の新設を認める必要があることを強調した上で、全国で20万床の緊急整備を要望する発言を基調報告の中で行った。

このことは社会保障審議会介護給付費分科会会長で東大名誉教授の大森彌氏が、同分科会で従来型多床室とユニット型個室を合築した特別養護老人ホーム(特養)などの「一部ユニット型施設」について、多床室とユニット型施設をそれぞれ別施設として指定することとしたことを「多床室容認」との報道や評価もあるとの意見に対し、『決してそうではありません。現に多床室は存在し、相当の期間残るわけですから変わりはありません。それよりも大事なことは、今後も個室ユニット化を推進するという国の立場をこれまで以上に明確に打ち出したということです。12年度以降の整備の在り方については「ユニット型施設のみに助成を行うことを検討すべき」と明記しています。』と多床室整備を完全に否定していることと全く逆の考え方である。

今後、老施協と介護給付費分科会の間で、厚生労働省の向きをどちらに持ってくるかで水面下での激しい綱引きが行われることが予測される。

しかし簡単に20万床の緊急整備とは言うが、財政論ではなく、人材論はそこできちんと議論されているのかが一番の問題だ。

既に施設サービスの現場では、待遇を改善して職員を募集しても、人材どころか、人員そのものが募集人数に達しないという状況が、そこかしこで報告されている。多業種と比較しての待遇改善をより一層進めよと言われても、定員が規定され定額のパイの中でしか人件費を捻出できない施設サービスにおいて、青天井の給与アップは不可能であり、この状況で人手を確保するのは大変な問題である。20万人の新たな施設サービス利用者に対応できる介護職員の確保問題に結論や結果が出されていない状況で「ベッドがあっても、介護なし」という状況が生まれかねない。

待機者解消も大事だが、老施協はまずこの人材問題の整備に取り組むべきであり、政策提言の優先順位を間違っているのではないかと首を傾げてしまう。そもそも施設整備の問題より、根幹となる介護保険制度改悪阻止に向け、現場から提言すべき問題はもっと別なところにあるだろうと思うのは僕だけだろうか?

また同大会で、特別報告した参議院議員の中村博彦老施協常任顧問は、介護職員の医療行為に対し「新しい資格をつくらなければならない」と発言している。確かに「インスリン注射などの在宅で同居家族が行っている行為」を担おうとしない介護福祉士など、下級資格になるか、あるいはなくなってもよい国家資格でしかないのかもしれないが、この資格取得に600時間の新たな義務研修を課すという議論が行われているさなか、更に別な資格を創設して「医療行為ができる介護職員」を作ろうとするなどナンセンスで、そんなものができても、その資格を取得するために、研修等を受講するために、現場の職員が業務を離れて時間を割くことで、介護サービスの現場はさらに疲弊して、人材が寄り付かなくなるだろうし、その費用負担も決して軽くないだろう。

我々が求めているのは決して「医療行為ができる介護職員」ではない。医療行為自体は、医師や看護師などの「医療の有資格者」だけがその行為を担うべきである。このことは時代や社会がいかに変わろうとも未来永劫変える必要はない。

しかし医療行為の概念自体が、医師法や医療法ができた当時から何も変わっていないのは問題で、特養等の介護施設で生じている問題は、家族でもできる行為まですべて医療行為の括りの中に入れてしまうことで介護職員が「なにもできない」ということなんだから、状態の安定している人の喀痰吸引や、経管栄養処置、インスリン注射など、在宅で家族ができている行為は、「医療行為」の括りから外して、介護職員ができるようにすべきである。

ここが老施協と僕の考え方の決定的に違っている部分であるが、中村顧問の考え方では、いくら新しい資格を作っても、膨大な書類や前提条件が無くならないだろうし、現場で今生じている問題解決には決して繋がらないであろうことを中村顧問や、中田会長より現場を知る身として発言しておく。

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