介護保険制度改正の絵を描く有識者と呼ばれる人々のなかで、昨今学者と呼ばれる人々の流行語は「財源論なき制度改正論は絵にかいた餅である」というものだ。

なるほど財源を考えずに制度設計をしても、それは空論であるというわけである。

彼らは介護給付費を引き上げるべきであるという意見に対して「財政的な裏付けを欠き、社会的公正さを無視した無責任な言動であり、すべてを国家(行政)に求めるというパターナリズム」であると批判し、「介護は、お国が面倒をみてくれるもの、財源が天から降ってくるものだという不届きな考え方」であると切り捨てる。

しかし彼らのいう財源論とは、官僚のいうがままの財源論であり、国の無駄遣いなど現行の税金の使われ方を無視して、財源はないという官僚の言葉を鵜呑みにするだけの財源論でしかない。しかもそれは介護サービスに関わる給付費を抑制するだけの能のない財源論である。

そもそも高齢者人口が爆発的に増えているのだから、介護にかかる費用総額が増えるのは当たり前である。その時に保険料負担だけでは限界があるので、介護給付費に対する公費負担割合が今のままでよいのか、そのための財源として消費税等の税率をどうするのかということが議論されていくことは当然必要であるし、新たな国民負担は必要不可欠である。しかしそれとは別次元で、介護サービスの制度設計をする立場の有識者が、給付抑制という視点しかない財源論をベースに介護制度を設計しているのは勘違いも甚だしい。

そういう制度設計では社会のセーフティネットとしての機能は放棄せざるを得ず、何のための有識者会議かということになる。

本来、制度を設計する有識者会議の中の学者の使命は、本当に必要とされる制度を考えることであって、財源を考えるのは政治家の役割である。介護保険制度であれば、制度を設計する有識者が超高齢社会という人類がかつて経験したことがない状況の中で、この国の国民が老後を安心して過ごすための方策を示すのが第1義的に必要とされることであり、そのための財源をどうするのか、国民負担をどうするのか、負担ができない場合はよりましな給付へと水準を下げるのか、それを考えるのは学者の役割ではなく、政治の役割である。政治はその選択肢を国民に提示した上で高度な政治判断により最終的な制度の形を決定すべきで、世間知らずの頭でっかちの学者連中がいじくりまわすものではない。財源論なき制度設計は無責任だという理屈で幻想世界を作り出してどうするのか。そんな有識者会議ならいらない。

そもそも彼らが18年制度改正時に考えた、新予防給付を始めとした当時の「新しい制度設計」はフィクションで終わっているではないか。介護予防のフィクション化をすべて政治のせいにしてよいのか?老人保健法等で繰り返されている介護予防の過去の歴史から我々が学んだことは、制度で介護予防は出来ないということだ。特に18年改正は介護給付と予防給付を区分し、サービス計画担当者も保健師と介護支援専門員とに分断して、ワンストップサービスでなくなることや、予防と介護サービスの連続性が失われることの懸念や、予防サービスの定額報酬制で必要なサービスが提供できなくなることの懸念が当初から指摘されていたではないか。

結果をみれば、18年の改正は給付制限機能しか発揮できていないではないか。それも国家の財源全体とすれば意味のないゴミのような金額でしかない給付制限で、それによって一部の高齢者が必要な介護を受けられず、生活がズタズタに切り裂かれている実態を鑑みれば、彼らの制度設計ほど罪なものはなく、その罪は万死に値する。その責任を学者連中はなぜとりもせずに、再びおかしな制度設計に関わっているんだ。同じ連中が今回の制度改正の設計にも携わって、また同じ過ちを起こそうとしている。破廉恥きわまりない。

財源論をいうなら、例えば1年限りの埋蔵金ではない、特別会計等から支出されている様々な職能団体への意味のない研究補助金の削減などになぜ切り込まない。給付制限の視点しかもたない考え方が財源論だとでも思っているのか。馬鹿も休み休み言え。

ましてや生活水準も文化も、経済状況も家族状況も高齢化率も異なる外国と給付水準を比較して、実際に「贅沢な暮し」をしているわけではない介護サービス利用者への給付を、外国の低い水準に落とそうという考え方はどんな発想から出てくるのか?今必要なのは、この国で暮らす、この国の人々の、この国での将来を支える介護の在り方で、諸外国の数字など持ち出す必要はさらさらない。

有識者介護がわずか10数年の介護保険制度において果たしてきた役割は、社会の混乱と不幸を創出してきた結果でしかない。こんな委員会にも国民の税金は使われ、こんな委員の懐にも国民の税金が入れられ消えていく。制度改正を議論する専門委員会や、あり方会議などの各種専門会議と、その委員。これほど世の中にとって無駄なものはない。

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