制度改正というものは、全体の制度の構造が国民の福祉の向上という目的に合致しているかという部分を見極めながら、そうではない部分を修正して、より国民の福祉の向上に資する目的で調整していくために必要とされているのではないのか。

財源論とか、持続可能性という政策的視点とは別に構造改革を語るとしたら、それは上記の視点で制度の全体を見渡した上での調整という視点が基本となるはずだ。

しかしである。通所介護における「お泊りサービス」への保険給付問題は、この基本を全く無視して、ある特定地域の特定事業所の意見を、厚生労働政務官という立場にある一国会議員が鵜呑みにして、大臣の手をひっぱり、全体構造は無視して決めてしまったという所に問題点がある。

これは通所介護の延長加算の対象時間をさらに延ばし、宿泊についても保険給付対象とするものだ。そのための宿泊整備補助金については来年度予算の概算要求を通ってしまった。

この早急過ぎるような保険給付化に向けた動きは「ショートステイの利用ができない地域で、通所介護のお泊りサービスが実質的に介護する家族の負担軽減をし、居宅生活を支えている」という理由によるものである。

しかしショートの緊急ベッドが十分に確保されている地域も全国にはたくさんあるのに、都市部の論理だけでこのサービスに保険給付することが今緊急に必要だという理屈はとても納得できるものではない。

全体の制度サービスのあり方を検証する中で「お泊りデイ」の保険給付化が必要であるというならともかく、このサービスだけを突出させ優遇するのはどうかしている。

むしろ既存サービスの中でショート対応ベッドが何故常に空いていないのかを考えた時、介護保険制度創設時の介護報酬より現行報酬が下がっている実態が、ベッドの稼働率を上げないと収益が出ない構造にしていることで、緊急対応のためのベッド確保ができない状況を生んでいるという根本的問題を考えながら、既存ショートのあり方を変える方向から問題解決を図っていかないと、根本問題が解決しないまま安易な泊まりサービスが増大し、通所介護への長期滞在という変な状況が生まれてしまうだろう。

特に通所サービスの宿泊は宿泊日前後の通所サービス利用を条件にしている事業所が多いことから、必要性を伴わない泊まるための不必要な通所利用が増える可能性を否定できない。

しかも同じ制度内の小規模多機能居宅介護の宿泊サービスや、実質そのモデルとなった宅老所での宿泊サービスとの整合性はどう取るのか?

さらにいえば、18年改正に先駆けて、17年10月に、入所サービス及び滞在サービスにおいては光熱水費などを含むホテルコストが保険外とさて、1泊2日のショートステイ利用においては利用者は2日分の滞在費を1割自己負担とは別に支払っている。「滞在コストは保険給付しない」という原則と照らせば、お泊りデイだけこの部分を保険給付するのは極めておかしな理屈で、制度の根幹にかかわる問題である。このことにより場合によっては、ショートの充足地域でも、費用負担が少ないという理由での「お泊りデイ」利用が増える可能性がある。

お泊りデイサービスの必要性と、保険給付の必要性は実は全く別の論議であって、もしショートステイ以外のお泊りサービスが保険サービスとして必要であるとすれば、全体の中でショートの利用ルールを見直した上で、通所介護以外の宿泊サービスとの差別化あるいは整合性をとった上で、何のサービスに保険給付するかという根拠が必要だ。

少なくとも、今一番求められている制度改革が「お泊りデイの保険給付化」ではないことは間違いない。

しかも政治主導でこのことが決まったデメリットと言えると思うが、財政の厳しいなかで先行して新たなサービスに対する保険給付がまずありきでは、その分だけ他の保険給付サービスから削減しなければならないと厚生労働省・老健局担当者が語っていることを関係者はどう考えるのか?まさに「お泊りデイの保険給付化」は他のサービスにおいては給付抑制の理由にされているのである。

もともと厚生労働省老健局の中には、都内を中心にフランチャイズ展開している通所介護事業所が行っている保険外の宿泊サービスについて、800円という安価で行われているが、その実態が「雑魚寝 雑居」であるとして「環境として劣悪」であると考える向きがあって、しかしそれが保険外であるがゆえに設備や人員配置基準を適用できないということに対するジレンマが存在していた。そこに別ルートで「お泊りデイ」があたかも制度改正のメインサービスとして有効と吹き込まれた政務官が、この保険給付を持ち出し、局内でもこのことに積極的姿勢をとっている有力者が存在したことから「仕方ないけど、まあ取り締まりもできるからいいっか」的な乗りで決まってしまったというふうにも見える。

しかしどうしてこんなに短時間で、このような問題に結論を出すんだろうか?長妻前大臣と山井前政務官とが手をつないでお泊りデイを見学したのはたった1回ではないか。それで何が分かるんだい!!

どうもこの大臣と政務官のコンビは、国民の期待が高かったわりに何の実績も挙げていない。ミスター年金は所詮はそれだけか!という人もいるが、それはまだ優しい意見で、年金処理さえきちんとできなかった無能大臣と決めつける人もいるし、山井氏に対してはツイッターで意味もなくつぶやき続ける無能政務官と断じている人も多い。関係者の失望感はかなり大きなものがある。

そんな中、党首選後の内閣改造で、大臣と政務官として現ポストに残れないことがはっきりしていたから、何かの形で実績を残したくて焦って決めたことではないのか?歴史に名を残したいがために関係者が「これなら支持してくれるだろう」と考えたのが、お泊りデイへの保険給付化ではないのか?

どちらにしても、期待された手腕を発揮できなかった政治家の「置き土産」で制度がおかしな方向に向かうのは何とも迷惑な話である。

勘違いしてほしくないのは、この記事で主張している問題は「お泊りデイサービスの是非」ではない。お泊りデイサービス自体の役割は十分理解できるし、それは既に制度の中で動いているサービスなのである。

そうではなくいま議論すべきは、他のサービスをまったく考慮せず、通所介護の宿泊サービスを介護給付対象とする「お泊りデイサービスの保険給付化の是非」なのである。

この違いをしっかり理解してもらわねば問題の所在が見えてこない。

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