産経新聞9月18日(土)1時33分配信記事より転載
大阪府箕面市の社会福祉法人「あかつき福祉会」が運営するケアホーム(共同生活介護施設)で、介護職員が糖尿病の入所者に対するインスリン注射などの医療行為を7年間にわたり無資格で行ってことが17日、分かった。大阪府は、無資格の医療行為を禁じた医師法や保健師助産師看護師法などに違反する可能性があるとして、近く施設を立ち入り調査する方針を固めた。

あかつき福祉会によると、少なくとも平成15年1月以降、同法人が運営する箕面市内の授産施設に勤務する介護職員が、I型糖尿病の男性入所者に対し、1日2回、インスリン注射を投与。男性には重度の行動障害があり、入所前は自宅で男性の家族がインスリン注射を行っていたという。

医師法などによると、医療行為を業務として行えるのは、厚生労働省の通知などで示された行為を除いて、原則として医師または医師の指示を受けた看護師などに限定。糖尿病患者本人や家族は、医師や看護師からインスリンの取り扱い方や注射器の使い方などの詳細な指導を受けてインスリン注射を行っている。

同法人は産経新聞の取材に対し「男性が自分で注射を打てるよう施設で練習したがうまくいかなかった。行動障害もあり、自分で注射するのは危険と判断し、やむを得ず職員が注射を打った」と説明。「ペン型注射器が普及し始めた時期で、職員でも安全に打てるだろうと考えていた」としている。

あかつき福祉会は昭和53年、重度の障害者のケアを担うため、箕面市などが出資して設立。障害者福祉センターや知的障害者の通所施設など、同市の3施設の指定管理者になっている。

(転載以上)

この記事を読んで最初に何を感じたろうか?勿論、多くの方が介護職員に医療行為を日常的にさせていたのは「やばい」よな、ということであろう。

僕はかねてから家族ができる行為は「医療行為」から除外して、介護職員でも誰でも行為として可能にするべきであると主張し、その代表的行為として「インスリン注射」を挙げている。

しかしだからと言って、自らの施設の介護職員に「インスリン注射」を行わせていることはない。現に今は、これらの行為は「医療行為」とされ、同居の家族が行えても、施設の介護職員等は同様の行為を行えないというルールが厳然として存在している以上、そのルールに反対だからと言って、それを守らない、ということにはならず、そんなことが許されれば社会秩序は崩壊する。

ルールを変えてほしいと声を挙げ、何らかの形でそのことを国に伝え、ルールを変えるようにアクションを起こしていくことは大事だが、それが正論として認められる唯一の条件は、法律を守った上でその理不尽さや、矛盾点を論理的かつ冷静に訴えていくことである。

よっていかなる理由があろうと、本ケースのように現在禁止行為であることが明らかな行為を、違法性を承知の上で社会福祉法人が、介護職員に命じて業務の中で日常的に行っていたことに言い訳はできないと思う。

しかし同時に、このような問題を批判だけで終わらせて良いのか、という気持ちもある。

例えば、この男性は居宅生活においては、家族が本人に替ってインスリン注射を行いながら暮らしを支えていた。その同じ男性がケアホームという(共同生活介護施設)場に、生活の本拠を移さざるを得なかったことには、相応の理由があるだろう。この時

>男性が自分で注射を打てるよう施設で練習したがうまくいかなかった。行動障害もあり、自分で注射するのは危険

という状況で、この法人が実質とり得る対応策が、違法性を承知で介護職員にそれを行わせるか、インスリンを自己注射できないことで対応困難という理由で退所を勧めるか、という2者択一しか方法がないことについて、そのことについてはもっと社会的な問題として考えられなければならない。
(※注釈として付記するが、このようなケースでインスリンだけを理由に受け入れてくれる医療機関はないだろうし、看護師が常駐する施設に入所するにしても時間がかるし、そのことも現在の居住場所から退所することに変わりはないという意味で2者択一と表現している。)

インスリン注射は、居宅ではどこの家庭でも家族が安全に行うことができている行為なのである。

これからはインスリン注射で血糖値管理すれば、入院せずとも様々な居住場所で暮らせる高齢者がますます増えるのである。その時に、家族ではないという理由だけで、家庭で専門家ではない人々が日常的に施設等で行えないことによる行き場のない高齢者が増える問題にいつまでも顔をそむけ続けてよいのだろうか。

はやく「インスリン注射」は医療行為ではないとすることが必要だ。政治判断でも何でも良いから、一刻も早く決断すべきである。

これは医療行為の介護職員への解禁ではない。医療行為自体を時代のニーズ、医療器具の発達の状況変化の中で見直すという問題である。

未来永劫、医療行為は医師や看護師などの有資格者しか出来なくてよいから、医療法ができた当時では想定できなかった超高齢社会の中の状況変化を考えて、医療行為の解釈を変えていく必要があるのだ。

このケースの問題や報道を、相違側面からマスコミも取り上げてほしいと節に願うものである。

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