24年の介護保険制度改正の骨格は、本年11月中に社会保障審議会介護保険部会で結論が出されることになっている。

その中心となる考え方が「地域包括ケア」であり、それは日常生活圏域で、急性期入院を除く医療・介護・福祉・生活支援などが一体的かつ適切に利用できる提供体制を全国につくろうという提案であり、具体的には24時間短時間巡回型の訪問介護や訪問看護、小規模多機能型居宅介護などを普及させ、要介護度を悪化させないための通所と訪問のリハビリにも重点を置くサービス体系とするものだ。

その一方で、この新体系の前提条件として、生活支援や家事援助はこうしたサービスとは別体系に属すると定義し、それぞれのサービスによって、保険給付と公費援助に加え、自費で利用したり、コミュニティーの互助が機能するようにさせるというものだ。

後者の意味が良くわからないと思うが、これは基本的に軽介護者の家事援助を保険給付から外して、必要なら自費で利用するか、地域の相互扶助で支えなさいという考え方である。地域包括ケアの前提はこうした給付抑制が伴っていることを関係者は理解せねばならない。

さらにこの包括ケアは定額報酬として、事業者と利用者間の契約でパッケージ契約内容を決め、定額報酬の中ですべてのサービスを提供するというものである。支給限度額を超えて現在サービス利用しているケースもこの定額報酬の中に納めてしまえ、という乱暴な理屈も隠されている。なによりサービス量や頻度決定は事業者と利用者の契約によるものなので、将来はケアマネジメントなど必要ないとされる可能性が高い。

こんな大きな改正を、現場議論がほとんどないまま本年11月までに結論を出して、1月の通常国会で法案を通し、24年4月から実施しようとしているのに、現場のケアマネ始めとして関係者の危機感は極めて薄い。今このことを地域で議論して、必要な意見なりデータなりを国に挙げないと、制度はひどい改悪で終わってしまうぞ。何を呑気に構えてるんだい?

滑稽なことに、この時期、当市を含めた3市1町(登別市・室蘭市・伊達市・白老町)の地域ケアマネ会は合同研修会を9/18に予定しているが、そのテーマはなんと「認知症のケアマネジメント」である。それも大事だろうが、時期を考えろ!今のんきに、認知症ケアを論じている場合か!そんなもの1年に何回も勉強しているではないか。そんなテーマでこの時期に4地域の会員を集めている場合じゃないって。この研修企画者はいったい何を考えているんだろうと声を大にして言いたい。定例会を無難にこなすだけしか頭になく、今なにが求められているかを考えていない研修会になり下がった3市1町合同研修会は今年限りで一旦、リセットのために終了すべきだろう。

ところで新しい「地域包括ケア」の中心的サービスに「24時間短時間巡回型の訪問介護」がある。これは既にモデル事業が実施され、成功事例として国の報告書に載せられている。しかしこのモデル事業を行っている全国展開の大手訪問介護事業所2社の関係者から漏れ伝わってくる実態は決して「成功事例」とはいえない。

モデル事業を実施した事業者は、結果的に予定件数を実施できず、モデル事業規模を縮小して終えている。つまり利用者が想定通り集まらなかったという意味だろう。モデル事業でさえそうなのに、実際に制度化された以後、このサービスを望んで、ヘルパーに鍵を預けて、深夜を含む夜間に短時間・複数回の訪問を望む利用者がどれだけいるんだろう?大いに疑問である。

介護保険部会では、この短時間巡回訪問介護について「認知症の人には適応しないのではないか?」という疑問が示されたが、日本看護協会の黒衣の天使は、わずかな成功事例を取り上げ「認知症の方にあわないとは言えない」と反論して議論を尻切れトンボで終わらせている。報告書に掲載するのは数例の成功例を「なんとか探して」いるのが通例だから、この看護協会の能天気委員の発言ほどふざけたものはない。おそらく認知症の方々にとって、その状態が軽度であっても、夜間複数回の短時間の「見知らぬヘルパー訪問」は混乱要素になるだろう。

だが問題はもっと根深いところにある。

実はこのモデル事業で「24時間短時間巡回型の訪問介護」の携わったヘルパーさんの多くの方が「夜間の短時間巡回型訪問介護」の過酷さを訴えているのだ。なかにはモデル事業で「懲りた」から、制度でこのサービスが位置づけられ、自分がその担当にさせられるならば現在の事業所を退職する、と明言している人もいる。それもかなり多い数としての複数人数が同じ訴えをしている。

「24時間短時間巡回型の訪問介護」が制度に位置づけられたら、今以上に夜間に働いてくれるヘルパーの数は必要になるだろう。しかし今以上に、この業務からヘルパーの腰は引けていくだろう。

その時、各地の訪問介護事業所は、夜間巡回ヘルパーを必要な数だけ確保できるのだろうか?確保するとしたら今より当然高い報酬で雇用せねばならなくなるだろうが、軽介護者の家事援助制限で、その分の収益が減った場合、ここにそれだけの人件費をかけられるのだろうか?非常に心配である。

そもそも、この形態の訪問介護業務なら「施設の夜勤の方がましよ。」と3年前に居宅サービスに転身したHさんは言っている。いくら時給を高くしても、給与の夜間手当をアップしても、夜間短時間巡回型訪問介護は「したくない」とリタイヤするヘルパーが増えるだろう。地域包括ケアは、案外こういう部分から崩壊してしまうのではないだろうか。

この点は介護保険部会で全く論議していないのはなぜか?委員が皆サービスの現場を知らない「ぼんくら」ばかりだからだろう。人選が間違っている。

とにもかくにも、夜間巡回訪問介護のヘルパー雇用は簡単ではないし、頑張って夜間訪問に携わるヘルパーさんがいたとしても、認知症独居高齢者などの世帯に、関係づくりが難しい短時間訪問をしながら夜間に地域を移動して訪問の数をこなさねばならないのはかなり過酷な労働である。女性なら夜中の移動の際に事件や事故にあわないかという心配もある。

そうなると、認知症の方々の混乱によるトラブルが増えるリスクが高いという僕の前段の指摘が現実になったとき、そのことと夜間巡回の労務負担がセットでヘルパーの身にのしかかり、ヘルパーさんの「介護うつ」を増やすのではないかと懸念している。訪問介護事業所の関係者はこのことを真剣に考える必要があるぞ。

そのことによりヘルパーさんの多くが退職して、「そして誰もいなくなった」という状況にならなければ良いのだがと心配の種は尽きない。

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