介護保険制度と診療報酬のダブル改訂は24年4月から実施されるものである。

よって改正議論はまだまだ先の話だとのんきに構えている関係者が多い。とんでもない誤解である。

制度改正議論は骨格部分が既に議論されており、それは地域包括ケア研究会報告書という形で概要が示されている。

この報告書に特に異論がなければ、地域包括ケアを推進できる形で法案を作って、来年1月の通常国会に法案が提出され、そのまま通過する可能性が高い。そうなれば新制度の骨格は「地域包括ケア」という構造を基本として、介護報酬等が決められてしまうんだぞ。

この構想の問題点については「地域包括ケア構想を斬る」で簡単に解説しているが、もっと現場の介護支援専門員や、介護サービス事業関係者がその内容について議論すべきである。そうでないととんでもない制度改悪になるぞ。

次の通常国会(23年1月召集)で関連法案が通った後の改正論議は単純に額の算定基準が主になるだけだから骨抜き議論になりかねない。来年の今頃、基本構造の部分について何を言っても始まらなくなるんだぞ。今だから言っておかねばならないということがあるんだ。

このことを分かっていない関係者が多い。

いま地域のケアマネ会の研修会を行うとしたら、このテーマに触れないで終わらす手はない。どこかの地域の合同研修会みたいに「認知症のケアマネジメント」などやっている場合ではないのだ。もちろん認知症ケア等も大事だが、ケアマネ会が今のんきにそんなテーマだけを公聴するだけで終わって、制度改正議論・地域包括ケア議論に触れないのはあまりに悠長すぎるのである。

中央では我々の仲間が、この問題に関連して、地域包括ケア研究会で示された様々なデータが、いかに現実とは異なる根拠に欠けるものであるかということを示すために、時間のない中で現場のデータを集めて、制度改悪にならないように意見具申しようとしている。我々は、国と直接交渉してくれるそれらの人々の側面支援のために、データ集めや、意見集約に出来る限り協力しようと頑張っているつもりである。

24年4月からのダブル改定に向けた、介護保険制度改正議論は、このように既に峠に近付きつつあり、それを越えれば既に議論は終盤戦にさしかかる。そうであるにも関わらず、もっとも議論されるべき地域包括ケア論が、こんなにも現場の意見が出されないまま、何となく通過してしまってよいのだろうか?

特にこの報告書を読みこんでいって気づくことは、地域包括ケアというパッケージサービスと定額包括報酬の行きつく先は、ケアマネジメントを必要としないサービス体系ではないかということである。居宅介護支援あるいは介護支援専門員という制度の中核を担う役割を否定する結論が近い将来に導き出されるのではないのか?どうもそうした臭いがぷんぷん漂う。

また包括報酬にすることによって、家事援助部分などは、特に給付対象外にしなくともパッケージサービスの中に飲み込んでいくんだから、実質的には軽度介護者を中心に、事業者はサービス抑制に走る可能性が高くなる。必要なサービスが受けられない人が、要支援者及び要介護状態区分の軽度認定者に広く見られるようになる可能性が高い。

施設サービスだって、この流れの中で「介護サービスの外付け」という方向に完全に流されて行きかねない。そうした形での給付費抑制が行われる可能性をどれだけの関係者が気付いているのか?

昨日行われた「社会保障審議会介護保険部会」を傍聴した方からはメールで次のような情報をいただいた。

『先日行った、国会集会の影響か、委員さんの話す内容も変わり、風向きが変わってきたように思えました。「ヘルパーの生活援助を介護保険から外すべき!」という動きが一転して、「必要なものである」「残すべき」という意見も出ていました。』

しかし僕はこのことについても穿った見方をしてしまうのである。つまりこの裏を読めば、地域包括ケアによってサービス包括になれば、事業者の利益を考えればサービスは出来るだけ少なく効率よく地域を巡回せざるを得ず、あえて家事を保険外にしなくても、実質保険外として取り扱われるか、別な形で給付抑制になるから、批判が強い家事援助外しをあえて強調しなくてもよいという意味があるのではないかと勘繰ったりしている。

しかし24時間巡回型ホームヘルプのもう一つの側面は「短時間滞在型」という意味だから、1回の訪問で十分な時間を取れず、利用者との人間関係を深く構築できないまま複数回の短時間訪問を行うことで、在宅における認知症高齢者の混乱はより助長され、訪問のたびに行動・心理症状(BPSD)の悪化がみられるだろう。

そのほか昨日の介護保険部会では、あいかわらず「専門的な教育を受けたボランティアによって、認知症の人を地域で24時間見守る」などという机上の空論が繰り返されているほか、医師会や看護協会は、自己権益を守る発言が相次いでいるそうである。これらの意見からは、この国の福祉サービスを守ろうとする姿勢はまったく見えない。

だからもっと現場の介護サービス従事者、介護サービス関係者の生の声を国に届けて改悪を防がなければならないし、そのための時間はあとわずか、そう数ケ月しかなくて、来年の今頃、このことを論じても始まらないのである。

是非このことに多くの関係者が気づいて、声をあげていってほしい。

↓※この記事に共感できる部分があった方はプチッと押してください。
人気ブログランキングへ

blogram投票ボタン
(↑下のボタンをクリックしていただくと、このブログの解析がみれます。)

介護・福祉情報掲示板(表板)