もうずいぶん昔の話であるが、精神医学の分野では、総合失調症等の様々な症状に対応する新療法が考案され、例えば「電気ショック療法」なども盛んに行われていた。しかし現在では、このような治療はほとんど効果がないとして、ごく稀な症例を除いて行われることはなくなった。

同じように「温浴療法」「入浴療法」などと言われる取組も行われた時期があり、これは1日に複数回、一定時間、一定温度の湯船に浸かることで、暴力行為などの精神症状が改善する療法であると言われた。しかしその方法をよく調べてみると、かなり長い時間、しかも1日に3回も4回も湯船に浸かっており、これじゃ精神症状がある人も、湯あたりするか、のぼせて行動がダウンするだろうと思えるものである。

こういうことも現在では行われなくなっている。

しかし例えば、鬱症状のある方に対し「光」が効果あるとして5,000〜10,000ルクス程度の照度を30分-1時間程度照射する「光療法」なるものも行われていて効果があるとされている。これはしっかりとしたエビデンスのある治療法となっていくのだろうか?

「電気ショック療法」にしても「温浴療法」にしても、その当時はしっかり有効であるという「科学的データ」が示されているのに、なぜ時がたつとそれが否定されるような状況になっているのか。それほど医学というのは不確実な要素を数多く抱えていると言えるのだろうが、少なくともその当時に有効であるとされた理由は何かあるんだろう。

それはおそらく新療法ということで、それに関わる関係者が、新療法の対象となる患者に、非常に近いところで濃厚に関わるという人間関係が生じていたという所に理由があるのではないか?効果があるのではないかと一生懸命療法に関わり、効果の検証のために一生懸命患者の傍らで状態を観察し、コミュニケーションを交わした、ということにその効果のモトダネがあるのではないか?

なぜ今更こんなことを考えているかというと、最近、認知症の高齢者の症状改善に繋がるということで「学習療法」が大流行だからである。この療法にそんなに効果があるのかと、疑い深い性格の僕は首を傾げたくなるのである。

認知症高齢者に対する学習療法とは、音読と計算を中心とする教材を用いた学習を、学習者と支援者がコミュニケーションを取りながら行うことで、学習者の認知機能やコミュニケーション機能、身辺自立機能などの前頭前野機能の維持・改善を図るもので、一度特定の機能を獲得した神経細胞がほかの機能を獲得する能力を意味する「脳の可塑性(かそせい)」に着目した療法である。

認知症高齢者に対しては、脳を活性化していくことによって認知症の進行スピードを緩め、場合によっては進行をくい止めたり、症状が軽くなる可能性があり、学習療法はこの効果に期待したものである。

この療法を推奨する東北大学の川島隆太教授の講座などは大人気で、受講者を募集すれば制限しなければ軽く千人を超える希望者が集まることもまれではない。そして各地に学習療法を実践する事業所ネットワークとしての「学習療法研究会」が立ちあげられており、北海道でも今月それが発足した。

認知症高齢者に対する学習療法は川島教授と某民間営利企業が作る研究所の登録商標で、勝手に名乗ったり使ったりできるものではない。

この効果について、それを実践している人々に聞くと、効果があり見当識や記憶の改善がみられるケースがあったり、症状が出る前にテスト結果から認知症の進行や症状の発症の兆候がみられるという肯定的な意見が多い。

しかしなお疑い深い僕は、これとて眉唾に聞いているのである。

それは学習療法自体の効果なのか、あの療法に取り組みにおける1対1の利用者と担当者の関係と時間の共有の効果なのか、これは少し時間をかけての検証が必要だ。

そもそもこれを川島教授とのタッグで推奨している研究所の母体は、子供の学習法で有名な企業だから、少子化で子供の学習だけでは収益の先が見える状況を見越して、需要の大幅増が見込める認知症高齢者にターゲットを絞った商業戦略に乗ったものではないかなどと穿った見方をしてしまう。

こうした先入観はいかんと自分でも感じているが、どちらにしても世間のこの療法に対する現在の「免疫なき受容状態」は少し異常だと思っている。

少なくとも、僕が携わるサービスの現場では、療法よりも関係を大事にしたい。関係を紡ぐ(つむぐ)方法論の一つに、そうした療法という機会があってもよいとは思うが・・・・。

介護・福祉情報掲示板(表板)

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