イ、作成の有無について
(ア)原告は、(3)項の利用者の一部について、狭義のケアプランを作成しなかったことを認めている(前記アにおいて、そもそも作成義務がないと主張するものを含む。利用者番号14.15.19.20.27.30.44.46。なお、利用者番号44については、別紙「ケアプラン(広義)等の作成対照表」の「当事者の主張」・「原告の主張」欄に作成の有無について記載がないが、「備考」欄に「更新あるも(サービス内容に)変更なし」旨記載されていることのほか、作成を証する証拠の摘示がないことなどにもかんがみれば、作成自体はされていないとする趣旨に解される。)

(イ)また原告は、上記(ア)を除く(3)項の利用者の一部について、狭義のケアプランを作成期限後に作成したことを認めている(利用者番号1.2.4.6.7.9.12.18.22.31.33.35.41ないし43)。

(ウ)原告は、上記(ア)及び(イ)を除くその余の(3)項の利用者については、狭義のケアプランを作成期限までに作成した旨主張する(利用者番号3.5.23ないし25.29.36.40のもの。以下「原告主張作成済み利用者」という。)。
a そこで検討するに、原告は、まず、狭義のケアプランを作成する上で要求される利用者の同意については、原告が作成済みと主張するものにはすべて狭義のケアプラン自体に利用者の同意署名を得ていたなどと主張する。
 しかしながら、本件基準によれば、「介護支援専門員は・・・当該居宅サービス計画の原案の内容について利用者又はその家族に対して説明し、文書により利用者の同意を得なければならない。」とされ(本件基準13条10号)、被告〇〇においては、かかる同意の方式として、狭義のケアプラン(第1表)自体に利用者の署名押印をもらう方式(乙1)や、別文書(「居宅サービス計画書に関する同意書(兼受領書)」)で、狭義のケアプランと第7表及び第8表とを併せて利用者の署名押印をもらう方式(乙18、34ないし37。以下「別文書方式」という。)、又はこれを併用する方式が存在していたところ(証人〇〇)、原告主張作成済み利用者については、狭義のケアプラン自体に又は別文書で利用者に同意を得たことを示す証拠は提出されていない。そして、前記(2)のとおり、原告から居宅介護支援専門員の業務を引き継いだ〇〇は、本件基準29条2項2号に基づき被告〇〇に保管されている利用者のファイルや、原告がケアプランの作成に使用していたパソコン内を確認した上で、平成18年5月7日、本件チェック票を作成したものであるところ、本件チェック票(乙127.132)によれば、原告主張作成済み利用者のうち、3.5.23.25.36及び40については狭義のケアプランは作成されているものの利用者の同意を確認することができず、24及び29については作成自体の確認ができなかったとされており、〇〇は、これらを含む未作成プラン等について原告に問い合わせたが、同月末になっても原告から提出はされなかったのであり(前記(2))、さらに、被告〇〇は、〇〇〇〇に対し、平成18年11月13日付け「平成17年度書類不備報告について」と題する書面を送付し、本件チェック票を踏まえ、原告主張作成済み利用者について、いずれも作成なしとして報告し(乙8)、〇〇〇〇においても、関係書類を点検したところ、いずれについても作成なしと認例されている(〇〇〇〇点検結果。乙4。)。この点、原告は、原告が利用者から同意署名を得た原本は被告〇〇が所持しているとも主張し、同旨の供述もするが(原告本人)、被告〇〇が、本件基準に従った運営をしなかったとして重大な不利益処分を受ける恐れのある状況下で、利用者の同意署名を得た原本があるのにあえてそれを提出せずに不作成であった旨虚偽の申告をするとは考え難く、原告の上記の主張は採用できない。
 以上にかんがみれば、原告主張作成済み利用者について、そのうち利用者番号24及び29のものについては作成自体がされておらず、その余のものについては、狭義のケアプラン自体への同意署名又は別文書による同意署名は存在しないものと認めるのが相当である。

b もっとも、原告は、狭義のケアプランに対する同意の様式について、第7表及び第8表への利用者の署名押印で足るものと主張し、原告の担当していた各利用者についてはいずれも第7表及び第8表に利用者の署名押印を得ていることから、これをもって狭義のケアプランへの同意があったと主張する。
 しかしながら、本件チェック票によれば、原告主張作成済み利用者のうち、利用者番号25の平成18年3月分の第7表に利用者の署名は確認されなかったものであるが、このことを措いても、本件基準によれば、文書により利用者の同意を得なければならない対象については、「当該居宅サービス計画の原案の内容」とされるところ(本件基準13条10号)、居宅サービス計画の原案に記載される内容とは、利用者及びその家族の生活に対する意向、総合的な援助の方針、生活全般の解決すべき課題、提供されるサービスの目標及びその達成時期、サービスの種類、内容及び利用料並びにサービスを提供する上での留意事項をいう(同条8号)から、これらを標準様式で示される様式に則していえば、狭義のケアプラン、第7表及び第8表の内容を指すものと解される。そして被告〇〇においても、狭義のケアプラン、第7表及び第8表について利用者の同意署名を得ることが必要である旨指導されており(乙110)、実際に、被告〇〇において採用されていた別文書方式においても、第7表及び第8表のほか、狭義のケアプランも同意の対象とされていることからすれば、被告〇〇においても、狭義のケアプランも同意と第7表及び第8表に対する同意とは別であるとの解釈の下で運用されていたものといえる。原告は第7表及び第8表への同意をもって足りる旨主張するが、第7表及び第8表の記載事項では、前記居宅サービス計画の原案の記載内容(同条8号)を網羅するものといえないことから、同条10条にいう同意として十分なものといえず、原告の上記主張は採用できない。

c 以上より、原告主張作成済み利用者については、そのうち利用者番号24及び29のものについては作成自体がされておらず、その余のものについては利用者の文書による同意がないものといえる。
したがって、(3)項の利用者の狭義のケアプランについては、いずれも適切に作成されたものということはできないことになる。

(4)被告主張未作成ケアプラン等のうち、アセスメント表又は第4表について(利用者番号1ないし7.9.10.12ないし15.18ないし25.27.29ないし31.33.35ないし46.49。以下「(4)項の利用者」という。)

ア、作成義務の有無について
原告は、(4)項の利用者のうち、利用者番号1.2.4.6.9.12.14.18ないし20.22.24.27.30.31.33.41.44ないし46については、前任者において作成すべきこと又は期間更新時にサービスの変更がないことから、いずれも原告に作成義務が生じない旨主張するが、これらの利用者は、すべて(3)項の利用者に含まれており、狭義のケアプランを作成する前提としてアセスメントを行い、その結果に基づいて居宅サービス計画の原案を作成してサービス担当者会議を主宰するなどすることになるから、いずれについてもアセスメント表や第4表の作成義務が生ずることになるものと解され、原告の上記主張は採用できない。

イ、作成の有無について
原告は、(4)項の利用者のうち、利用者番号7(〇〇〇〇)については作成済みである旨主張するが、別紙「ケアプラン(広義)等の作成対照表」の同利用者に係る「当事者の主張」、「原告の主張」欄では、いずれも平成18年4月以降の作成である旨記載されている。そして前記(3)ア(ア)のとおり、要介護更新認定がされた場合には、改めてケアプランを作成すべきところ、同利用者に係る要介護更新認定後(有効期間平成18年1月1日から平成19年12月31日まで)のアセスメント表及び第4表については、遅くとも更新に係る有効期間の始期である平成18年1月1日までに作成すべきことになるから、原告主張の作成時期を前提としても、いずれも作成期限後の作成となる。
 また、利用者番号22(〇〇〇〇)についても、原告は、別紙「ケアプラン(広義)等の作成対照表」の同利用者に係る「当事者の主張」、「原告の主張」欄で「作成あり」との主張をするが、その作成日は認定の有効期間の開始時点以降としていることから、作成期限後の作成である。
 利用者番号7及び22を除くその余の(4)項の利用者については、別紙「ケアプラン(広義)等の作成対照表」において、原告も不作成を認めるもの(そもそも作成義務がないと主張するものも含む。利用者番号1ないし3.5.10.13.15.19.21.23.25.29.33.35.ないし37.40.42.43.49)と、作成の有無の記載のないもの(利用者番号4.6.9.12.14.18.20.24.27.30.31.38.39.41.44.ないし46)とがある。後者について、いずれも作成を証する証拠は提出されていないところ、利用者番号24.38.45のアセスメント表については、第4表が作成されていないこと、また、その余の利用者については、狭義のケアプランが作成されていない(期限後の作成を含む。)ことにもかんがみると、これらはいずれも作成されていないと認めるのが相当である。

(5)被告主張未作成プラン等のうち、第6表又はモニタリング表について
(全利用者)
ア、作成義務の有無について
(ア)原告は、利用者番号3.13.25.29.35ないし37.42について、利用開始日が平成18年1月10日意向であるとして作成義務の不履行はない旨主張するところ、その趣旨は、1か月に1度以上作成すべき第6表と異なり、モニタリング表は3か月に1度作成すべきものであるところから、利用開始日が上記のとおりであれば、原告が介護支援専門員としてこれらの利用者を担当していた平成18年3月31日までに、モニタリング表の作成義務は生じなかった旨主張するものと解される。
 前提事実(2)エ(イ)fのとおり、本件基準では、少なくとも3か月に1回モニタリングの結果を記録することが求められており、このことを踏まえ、前記(1)ウ(カ)のとおり、モニタリング表は、少なくとも3か月が経過するごとに速やかに作成すべきことが求められているものと解される。
 原告の上記主張のうち、利用者番号3.13.35ないし37及び42のモニタリング表については、そもそも作成義務不履行が解雇理由と主張されているものではない。その余の利用者番号25及び29のモニタリング表については、いずれも平成18年1月中の利用開始であるから(別紙「ケアプラン(広義)等の作成対照表」の利用者番号25及び29に係る「当事者の主張」欄参照)、原告が平成18年3月末までにこれらの利用者のモニタリング表を作成しなかったとしても、作成義務に違反するとまではいうことはできない。

(イ)次に、原告は、利用者番号46(〇〇〇〇)について、要介護更新認定を受けた月と同じ平成17年10月から居宅サービスの利用が停止されたため、第6表の作成義務は生じない旨主張するが、前記(3)ア(イ)に認定したところからすれば、原告には、第6表の作成義務が生ずるものであり、原告の上記主張は採用できない。

イ、作成の有無について
(ア)原告は、利用者番号7(〇〇〇〇)の第6表のうち、平成17年7月分については作成した旨主張し、証拠として当該利用者の当該期間に係る第6表を提出する(甲46の8)。しかしながら、本件チェック票においては、当該第6表の存在が確認された旨は記載されておらず(乙127.132)、また、〇〇〇〇点検結果(乙4)においても、同利用者につき平成17年7月分以降の第6表がないとされていることからすると、原告が、同利用者の平成17年7月分の第6表を期限内に作成し、事務所ファイルにつづっていたものと認めることはできない。
 他方、原告は、同利用者のモニタリング表のうち、認定の有効期間平成18年1月1日からの分については同月27日に作成済みである旨主張するところ、〇〇〇〇点検結果(乙4)においても、同月分のモニタリング表は確認されていることからすると、原告はこれを作成していたものと認めるのが相当である。

(イ)また、原告は、利用者番号22(〇〇〇〇)の認定の有効期間平成18年2月1日からの分について、第6表及びモニタリング表を作成した旨主張するところ、同利用者の上記期間に係る第6表については、そもそも作成義務不履行が解雇理由として主張されているものではなく、また、モニタリング表については、〇〇〇〇点検結果(乙4)によれば、同期間に係るモニタリング票の確認はできた旨記載されていることからして、モニタリング表は作成されていたと認められる。

(ウ)そのほか、利用者番号1ないし3.5.8.10ないし13.15ないし21.2325.2628.29.31.32.34ないし38.40.42.43.47ないし49については、原告も不作成を認めている(別紙「ケアプラン(広義)等の作成対照表」の各利用者についての第6表及びモニタリング表に係る「当事者の主張」・)「原告の主張」参照)。
 また、利用者番号4.6.9.14.24.27.30.33.39.41.44ないし46については、原告は、別紙「ケアプラン(広義)等の作成対照表」に、作成したものかどうか記載していないが、〇〇〇〇点検結果(乙4)によれば、これらはいずれも確認されていないことからして、不作成であったと認められる。

(明日に続く〜明日は原告が主張する不作成理由の妥当性評価から最終判断、主文まで:最終回)

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