(3)被告主張未作成プラン等のうち、狭義のケアプランについて(利用者番号1ないし7.9.12.14.15.18ないし20.22ないし25.27.29ないし31.33.35.36.40ないし44.46以下「(3)項の利用者」という) 

ア、原告は(3)項の利用者のうち、要介護更新認定を受けた者(利用者番号1.2.4.6.7.9.12.14.18ないし20.22.24.27.30.31.33.41.44.46。以下、「本件更新利用者」という。)については、提供されるべきサービスの内容に変更がない限り、介護支援専門員には、そもそも新たにケアプラン等を作成する義務が生じない旨主張する。そこで、以下、要介護認定の更新がされた場合におけるケアプラン等の作成の要否について検討する。

a、まず、介護保険法27条によれば、要介護認定の手順は、以下のとおりと解される。
 要介護認定を受けようとする被保険者は、申請書に被保険者証を添付して市町村(保険者。本件においては〇〇〇〇)に申請をする(指定居宅介護支援事業者等が手続を代行する場合もある。)。(同条1項)
 市町村は、当該被保険者の心身の状況等についての調査(委託を受けた指定居宅介護支援事業者等による場合もある。)及び主治医へ意見を求め、それらの結果を介護認定審査会へ通知する。(同条2項、6項、7項)
 介護認定審査会は、要介護状態に該当すること及びその該当する要介護状態区分等に関する審査及び判定を行い、その結果を市町村に通知する。介護認定審査会は、必要があると認めるときは、当該被保険者の要介護状態の軽減又は悪化の防止のために必要な療養に関する事項又は同法41条1項に規定する指定居宅サービス等の適切かつ有効な利用等に関し当該被保険者が留意すべき事項について、市町村に意見を述べることができる。(同条8項)
 市町村は、上記介護認定審査会の通知に基づいて、要介護認定又は要介護者に該当しない旨の判断を行う。なお、介護認定は、その申請のあった日にさかのぼってその効力を生ずる。(同条10項ないし12項)

b 介護支援専門員は、利用者につき、上記の手順を経て要介護認定がされている場合にはその内容を踏まえ、又は要介護認定が未了の場合にはその認定の見込み内容を踏まえ、アセスメントを行う。そして、居宅要介護者等が指定居宅サービス等の適切な利用等をすることができるよう(前提事実(2)ア参照)、アセスメントの結果に基づき、居宅サービス計画の原案を作成し、担当者会議を主宰するなどして専門的意見を聴取し、同原案を修正の上、前提事実(2)オ(イ)の様式に従って、ケアプランを作成する。(前記(1))
 介護支援専門員が作成するケアプランのうち第1表には、要介護認定に関し、認定済みか申請中かの別や、認定の有効期間、要介護状態区分(要支援又は要介護1から要介護5までの中から選択する。)、介護認定審査会の意見及びサービス種類の指定を記載する。(甲56)。
このような記載が求められる理由として、標準様式通知には、以下のように記されている。

(a)認定済みか申請中かの別
 認定により要介護状態区分が確定しているか、初回申請中又は変更申請中で要介護状態区分が変動する等の可能性があるかを明らかにしておく必要がある。
(b)認定の有効期間
 当該ケアプラン作成に係る要介護状態区分の有効期間がいつまで継続するのかを把握することにより、例えば、長時間にわたり要介護状態区分に変化がない事例の点検に資する。
(c)認定審査会の意見及びサービス種類の指定
 介護保険法に「指定居宅介護支援事業者は、指定居宅介護支援を受けようとする被保険者から提示された被保険者証に、介護認定審査会の意見が記載されているときは、当該認定審査会意見に配慮して、当該被保険者に当該指定居宅介護支援を提供するように努めなければならない。」(同法80条2項)などとされていることを受け、被保険者証に認定審査会の意見及びサービスの種類の指定が付されている場合には、これを第1表に転記し、これに沿ったケアプランを作成するとともに、サービス担当者間の共通認識として確認しておく必要がある。

c 要介護認定は、要介護状態区分に応じて定められる期間(有効期間)内に限り効力を有するものである(介護保険法28条1項)が、要介護認定を受けた被保険者は、有効期間の満了日においても要介護状態に該当すると見込まれるときは、要介護更新認定の申請をすることができる(同条2項)。要介護更新認定の手順は要介護認定と同様であり、まず、市町村(保険者。本件においては〇〇〇〇)において、当該被保険者の心身の状況等についての調査及び主治医への求意見がされ、介護認定審査会において、要介護状態に該当すること及びその該当する要介護状態区分等に関する審査及び判定(必要があると認めるときは、市町村に意見を述べる。)が行われ、市町村において、要介護認定又は要介護者に該当しない旨の認定が行われることになる(同条4項、27条(11項を除く。))。要介護更新認定は、要介護認定の有効期間の満了日の翌日にさかのぼってその効力を生ずる(同法28条5項)。

d 以上のように、ケアプランは、介護支援専門員が要介護認定内容(認定未了の場合はその見込み)や認定審査会の意見等を踏まえ、居宅要介護者等が指定居宅サービス等の適切な利用等をすることができるように作成するものであるところ、要介護認定は、認定の有効期間によって終了し、要介護更新認定の申請により、改めて申請者の心身の状況等についての調査がされ、主治医への意見が求められ、介護認定審査会において、要介護状態への該当の有無及び要介護状態区分等に関する意見が述べられるものであることからすると、要介護更新認定がされた場合、改めてアセスメント表を初めとするケアプラン等が作成されるべきことが前提とされているものと解すべきである。
 このことは、第1表に認定の有効期間の記載が求められ、また、第2表に長期目標・短期目標の期間や援助内容等の期間の記載が求められており(前提事実(2)オ(イ))、当該有効期間内のケアプランであるべきことが前提とされていることからも明らかといえる。
 また、本件基準13条14号において、介護支援専門員は、要介護認定を受けている利用者が要介護更新認定を受けた場合、サービス担当者会議を主宰すること等によって、担当者の専門的意見を求めるとされており、かかるサービス担当者会議等の前提として居宅サービス計画の原案を作成しておくべきことが求められると解されることからも、介護支援専門員は、要介護更新認定がされた場合に改めてケアプランを作成すべきことが求められているものと解される。
 原告は、「居宅サービス計画ガイドラインを使った課題分析と介護サービス計画の作り方」と題する文書(甲58)に、「本様式は、当初の介護サービス計画原案を作成する際に記載し、その後、介護サービス計画の一部を変更する都度、別葉を使用して記載するものとする。但し、サービス内容への具体的な影響がほとんど認められないような軽微な変更については、当該変更記録の箇所の冒頭に変更時点を明記しつつ、同一用紙に継続して記載することができるものとする。」と記載されていること(標準様式通知の「記載要領」及びガイドライン(甲56)の記載と同様)や、「介護保険サービス運営ハンドブック」(甲43)に「居宅サービス計画の変更(第15号)」、「介護支援専門員は居宅サービス計画を変更する際には、原則として、基準第13条第3号から第11号までに規定された居宅サービス計画作成に当たっての一連の業務を行うことが必要である。なお、利用者の希望による軽微な変更(サービス提供日時の変更等)を行う場合には、この必要はないものとする。」と記載されていることを根拠に、提供されるべきサービス内容に変更がなければ改めてケアプランを作成する義務は生じない旨主張し、同旨の陳述及び供述をする(甲63、原告本人)が、これらの記載は、その文脈上、認定の有効期間内において、サービス内容が変更される場合における記載要領を述べるものと解され、要介護更新認定の場合とは前提を異にする。前記のように、そもそも、利用者に提供される居宅サービス計画の原案を作成し、サービス担当者会議の主宰等を経て、ケアプランが決定されることになるものであって、原告の上記主張は採用できない。

(イ)なお、原告は、利用者番号46(〇〇〇〇)について、要介護更新認定を受けた月と同じ平成17年10月から居宅サービスの利用が停止されたため、狭義のケアプラン作成義務は生じない旨主張する。(別紙「ケアプラン(広義)等の作成対照表」のうち、同利用者に係る「当事者の主張」・「原告の主張」欄参照)が、証拠(乙4の50、109)によれば、同利用者は、同年11月5日まで通所介護(デイサービス)の居宅サービスを利用していたことが認められるから、原告には同利用者につきケアプランを作成すべき義務が生じていたものであって、原告の上記の主張は認められない。

(ウ)以上より、原告は、本件更新利用者を含む(3)項の利用者について、いずれも狭義のケアプランの作成義務を負っていたものといえる。

(明日に続く〜明日は裁判所の判断4〜作成の有無についてから)

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