現在、本日行う講演のため大阪に移動中である。大阪の今日の気温は35℃を超えるとの事で、道産子の僕にとっては厳しい暑さである。

さて判決文の情報提供記事もいよいよ佳境に入ってきた。判決の核心部分に触れる熱い内容が続く。本情報提供記事は土日も休まず、来週月曜まで続く予定である。

(2)本件解雇に至る経緯 
ア、前提事実及び証拠(甲4ないし6、42.Z10.17.29.127.133.証人〇〇、原告本人、被告〇〇本人)によれば、本件解雇に至る経緯は、以下のとおりであると認められる。

(ア)原告は、平成17年7月6日に被告〇〇に非常勤の被告〇〇指定居宅介護サービス事業・居宅介護支援事業・介護支援専門員(ケアマネージャー)として雇用され(雇用予定期間同年9月30日まで)、同年10月1日から常勤の居宅介護支援事業介護支援専門員となった。
 原告は、平成18年4月1日に居宅介護支援事業介護支援専門員兼地域包括支援センター主任介護支援専門員に任命された。

(イ)〇〇は、原告の後任の介護支援専門員として、平成18年5月1日から、原告の担当していた利用者のうち38名について事務引継を開始した。〇〇が、本件基準29条2項2号に基づき被告〇〇記録棚に保管されている記録を確認したところ、上記利用者のうちの一部についてパソコン内にもそのデータは入力されていなかった。そこで、○○は、同月7日、原告が作成すべき書類についての作成の有無を一覧にした本件チェック票を作成した。
 ○○は、平成18年5月中旬ごろ、原告に対し、本件チェック票を手渡し、書類が作成されていないことについて質問したところ、原告は、整理していないだけなので少し待ってほしい旨述べた。
 しかしながら、原告は、平成18年5月31日に至っても不作成書類を〇〇に提出しなかったので、○○は、原告に対し書類の作成を催促した。これに対し、原告は、監査が入ると分かったら作ればよい旨回答した。
 ○○は、平成18年6月1日、監督機関である〇〇〇〇〇の〇〇〇〇に相談し、同日、被告〇〇の記録棚の確認及びパソコンの再確認をしたが不作成書類は見当たらなかった。そこで○○は、同月5日、本件チェック票を添付した「業務引継ぎに関する不備について」と題する書面(乙127)を作成し、同月6日、被告〇〇に提出した。

(ウ)被告〇〇は、平成18年6月6日、〇〇から提出された上記書面により、原告が介護支援専門員として作成すべき書類の作成を怠っている事実を知り、そのころ、原告を呼んで本件チェック票を示して説明を求めた。これに対し、原告は、作成すべき種類を作成していないことを認めた上、自己が記載していたメモに基づいて不作成書類を作成する旨を約束したため、被告○○は、早急に整理し、完備するように指示した。また、原告は、残業や休日出勤をして処理する旨を述べたところ、被告〇〇は、その旨を了承した。なお被告○○は原告に協力して不作成書類を作成をする旨申し出たが、原告は、その申出を断った。
 また〇〇〇〇〇〇は、主任会議(〇〇〇〇において、〇〇〇〇(〇〇)、〇〇〇〇及び〇〇〇が出席し、毎週開催される会議)において、原告に対し、早急にケアプラン等の作成をするように注意を促したところ、原告は、「責任を持って作成しますが、しばらく猶予を下さい。」旨返答した。
 その後、被告〇〇は、原告から作成した旨の報告がなかったことや、他の職員に確認しても原告がケアプラン等を作成している状況はうかがえなかったことから、平成18年6月30日、〇〇に対し、原告に作成義務がある未作成プラン等について、原告に作成を指示しているが一向に作成する様子がないため、返還、減算もやむを得ない状況にあるが、介護保険事業所への支障を最小限に抑えるべく早急に貴殿で作成するよう指示する旨の業務命令書を交付して、その作成を指示した。

(エ)その後、被告○○や〇〇らが、原告に対し、未作成のケアプラン等の作成を促すことがあったが、原告は、これに対し、「おいおいにやっているので、待っていてください。」などと返答していた。
 また、未作成のケアプラン等のことで、原告と〇〇らとの間で口論となることもあり、平成18年7月12日にもそのような口論があった。そして同日の口論の後、原告は、被告〇〇のところへ行き、「私は辞めますので、後任のケアマネを探してください。」などと述べた一方で、未作成ケアプラン等の作成についてはさらに猶予を求めた。これに対し、被告○○は、「あなたのいう猶予とはいつまでか、6か月か、1年か、もういいかげんにしてくれ。あなたと一緒に仕事をすることはできない。おれが辞めるか、あなたが辞めるか、〇〇(〇〇〇〇〇〇)に決断してもらおう。」と述べた。

(オ)平成18年7月14日及び同月21日、それぞれ広域連合から、被告〇〇に対し、個別の利用者についてケアプラン等の提出依頼があり、原告は、これらの依頼に係る書面を作成し、同月31日、〇〇〇〇に提出した。
 また、平成18年8月4日にも、〇〇〇〇から、被告〇〇に対し、個別の利用者についてのケアプラン等の提出依頼があり、原告は、同依頼に係る書面を作成し、同月14日、〇〇〇〇に提出した。

(カ)被告○○は、平成18年8月15日、〇〇〇〇〇を訪れたところ、書面不備について業務指導を受け、会計監査で発覚した場合は減算どころか指定取り消しにもなりかねないので、自主申告した方が事業所の存続に繋がるのではないかと指摘され、また、理事会報告をしないと管理者責任を問われるなどと指導を受けた。

(キ)被告〇〇は、平成18年8月21日、原告に対し、原告がそれまでに作成したケアプラン等についての業務報告を求めた。同日、被告〇〇介護保険事業所関係者が集まり、会議が開かれ、原告の未作成ケアプラン等の件について話し合われた。原告は、作成済みの分は提出し、未作成の分は作成する旨などを述べた。また、原告は、ヘルパーを交えた会議を開催するように求めたため、後日、改めて職員会議(全体会議)が開催されることになった。
 平成18年8月23日午前、原告は、未作成ケアプラン等のうち、19人分の第1表及び第2表について、封筒に入れ、〇〇に交付した。その中には利用者の同意署名のないものがあったため、〇〇が指摘すると、原告は、「家族の都合で逢えないこともありますから。」などと述べた。同日午後、被告〇〇において全体会議が開催され、再び原告の未作成ケアプラン等の件について話し合われた。原告は、作っていないケアプラン等は今から作る、ただ、今すぐというのはできない旨などを述べた。これに対し、被告○○は、同会議において、原告に辞職を迫った。

(ク)平成18年8月29日、理事会が開催され、原告については、1か月分の賃金を支払って解雇すべきとの結論となり、同日、〇〇〇〇〇から、原告に対し、同月31日付けで解雇する旨(本件解雇)の通知が交付された。同月29日付け解雇理由書において、本件解雇の解雇理由は、「業務について不正な行為(具体的には、あなたがケアマネ(注:介護支援専門員のこと)として、当然作成すべきケアプランが作成されていない。(1表〜8表・モニタリング。・アセスメント)29件)ことによる解雇」とされた。
 その後、原告が本件解雇を争う姿勢を示したところ、被告〇〇は、平成18年11月9日、原告に対し、再度8月31日付け解雇理由書を交付した。同日付け解雇理由書においては、本件解雇の解雇理由が追加され、「職務命令に対する重大な違反行為(具体的には、別紙のとおりしたこと。)による解雇」「業務については不正な行為(具体的には、別紙のとおりしたこと)による解雇」及び「勤務態度又は勤務成績が不良であること(具体的には、別紙のとおりしたこと)による解雇」とされ、別紙として、「平成18年6月6日にケアマネジメント業務1票〜6票(ケアプラン31件・サービス担当者会議31件、介護経過45件)7・8票(利用票・利用票別表14件)モニタリング45件、アセスメント38件を作成していないため、速やかに作成するよう指導したが作成せず、再三に亘る指導においても作成されていなため解雇とする。」とされた。

イ、なお、上記認定について、原告は、〇〇への引継ぎをしたのは平成18年5月後半であり、また、〇〇から本件チェック票を手渡されて未作成ケアプラン等の作成を催促されたことはない旨陳述及び供述するが(甲4、原告本人)、〇〇が同月7日現在として本件チェック票を作成し、さらに同年6月5日付けで、本件チェック票を添付して「業務引継に関する不備について」と題する書面を作成し、被告〇〇に報告していること(乙127、132)などの経緯に照らせば、前記アのとおりに認定するのが相当であり、これに反する原告の陳述及び供述は採用できない。

(明日に続く〜明日は裁判所の判断3〜作成義務の有無についてから)

介護・福祉情報掲示板(表板)

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