昨日からの続きであるが、ここで注目する点は、原告は解雇不当の最大の理由として、ケアプラン作成を行っていないことを解雇理由にしていることに対して、そもそも更新認定時のケアプランについてはサービスの変更がない限り再作成義務がなく、更新前のケアプランがそのまま継続されるので、プランを作成していないことは職務怠慢ではなく解雇理由に当たらないという主張である。

(※つまりケアプランを作成していなかったケースが多数あることは認め、この点は争っていないのである。)

これに対して、多くの介護支援専門員の皆さんは「そんなことはない」というが、法律論から、この主張を覆す根拠を探すのは非常に難しい。なぜなら介護保険法にも、基準省令にも、解釈通知にも、更新時のケアプラン再作成義務は明示されていないからで、原告はこの盲点をついてきていると言え、裁判開始当初は「裁判官もその主張に傾きつつある」という事実があったのだ。
(※県もこのことについて、法令には作成義務が書かれていないことから明確に再作成すべきとは言えないという立場をとった。)

そういう意味では、普段から「根拠」を考える姿勢は大事であり、保険者が言っていた、上司からそういわれたetcだけで終わってはならないという教訓が与えられたケースと考えてもよいだろう。

だから、このことに関して判例という形で明確な解釈を示したということが大きな意味があり、このことを知ることなしに「そもそも更新時のプラン作成など当たり前だろう」と主張する人々は、どこかピントがずれているといえるだろう。

つまり更新時のサービス変更のないケースについて、どのような法律解釈によってプラン作成義務を認めたかという点が重要なのである。では本題・・・。

(原告の主張)
ア、被告〇〇は、本件解雇の理由として、原告が作成すべきであったケアプラン等(別紙「ケアプラン(広義)等の作成対照表」の各利用者に係る「当事者の主張」・「被告〇〇の主張」欄で「作成なし」とするもの。以下「被告主張未作成プラン等」という)を作成せず、原告には職務怠慢があった旨主張するが、普通解雇事由がある場合においても、使用者は常に解雇し得るものではなく、具体的な事情の下において、解雇に処することが著しく不合理であり、社会通念上相当なものとして是認することができないときには、当該解雇の意思表示は解雇権の濫用として無効となるというべきであるところ、原告には職務怠慢は存在していなかったものであるし、また、被告〇〇の行う事業に支障が生じ、原告を排除しなければならない程度に達していたものでもないから、本件解雇は、解雇権の濫用に当たり、無効と言うべきである。

イ、被告主張未作成プラン等に対する各利用者ごとの個別的原告の主張は、次のとおりである。(なお、利用者番号は、別紙「ケアプラン(広義)等の作成対照表」の記載による。以下同じ。特に個別的な事情が主張されている利用者以外のものについては、氏名の表記を省略する。)。
(ア)狭義のケアプランについて
A原告が前任者から引継ぎを受けた利用者について(利用者番号1.4.6.7.9.12.14.18.22.24.27.30.33.41.44.46)
本件基準等の規定からすると、居宅サービス計画は、指定居宅介護支援事業者がサービスの提供を開始する際に作成されるものであり、いったん作成された後は、サービスの変更が行われた場合に、居宅サービス計画の変更が求められているものと解すべきである。
そうであるところ、上記各利用者については、いずれもサービス変更はないので、原告に作成義務は生じない。
この点、被告〇〇は、サービス提供日の変更、要介護状態区分の変更、住宅改修工事が行われたこと及びベッドの貸与がされたことというサービスの変更があったとして、改めてケアプランを作成すべきであった旨主張するが、サービス提供日数の変更及び要介護状態区分の変更については、そもそもサービスの内容には該当しないし、住宅改修が行われたこと及びベッドの貸与がされたことについては、サービスの変更ではなく新たなサービスの提供であって、住宅改修サービスのための申請書類や福祉用具貸与の場合にはサービス計画書を作成すれば足りるものである。

B原告が新規利用時から担当した利用者について(利用者番号2.3.5.15.19.20.23.25.29.31.35.36.40.42.43)

(a)利用者番号2.19.20.31については、期間更新がされているところ、これらについてはサービスの変更はないので、原告に作成義務は生じない。
この点、被告〇〇は、改めてケアプランを作成すべきであった旨主張するが、認定期間の更新があっても、利用者からのサービス内容変更の申し出がない限り、従前のサービスが継続して提供されるものであるから、サービス内容の変更又はサービス計画の変更には当たらない。
また、被告〇〇は、認定期間の更新があったもののうち、通所介護日数の変更や、住宅改修サービス、ベッド貸与、要介護状態の区分変更があり、サービス内容の変更があったものもいる旨主張するが、これらの変更は、前記aと同様、サービス内容の変更には当たらないし、仮に通所介護日数の変更が居宅サービス計画の変更に当たるとしても、軽微な変更であり作成義務は生じない。

(b)利用者番号3、5の各第3表については、作成したか否かは不明である。

(c)利用者番号15(〇〇〇〇〇)について、同利用者は、従前入院していた病院を退院後、訪問看護を受けることを希望したが、この相談が急であり、退院後速やかに訪問看護を行う必要があったため、緊急のことで介護保険を申請中、ケアプランを未作成のまま訪問看護サービスを受けることになった。また、同利用者は、入浴のため訪問介護を受けることになったが、家族と連絡がスムーズに取れず、家族から保険手帳の交付を受けたのが平成18年3月28日であったため、期間内の作成ができなかったものである。したがって、直ちに原告の作成義務不履行として非難することはできない。

(d)前期(a)ないし(c)に掲記した者を除くその余の利用者については、すべて作成済みである。

なお、原告が第7俵及び第8表に利用者の署名押印を得ていることは被告〇〇も争っていないところ、原告は、被告〇〇担当者とともに利用者宅を訪問し、その際にケアプランの内容を確認した上で利用者の同意を得て、第7俵及び第8表に署名押印を得ているものであるという実態からすれば、狭義のケアプラン自体にも利用者の同意署名を得た原本そのものであると推認される。証拠上、狭義のケアプランに同意署名が存在しないものがあるのは、それらが、別途パソコンから打ち出されたものであることによる。原告が業務上使用していた様式では、パソコン操作で同意署名欄の印字の有無を自由に選択し得るものであったため、証拠上、下欄の同意署名欄のあるものとないものが混在している。原告が利用者から同意署名を得た原本は、被告〇〇が所持しており、提出されていない。

また、利用者の署名は、狭義のケアプランの成立要件とは定められていない。本件基準13条10号は、居宅サービス計画の原案につき、「文書により利用者の同意を得なければならない」としているにすぎず、どのような形式で上記の同意を求めるかは運用にゆだねられているところ、本件基準を踏まえて作成されたガイドライン(甲56)で提示されている書式(被告〇〇でも用いられている。)では、狭義のケアプランに同意署名は存在せず、第7表及び第8表に「保険者確認印」欄が設けられており、同欄への押印が本件基準で求められる利用者の同意とされているものと解される。そうであるところ、原告は、第7表及び第8表に利用者の署名押印を得ており、これにより、狭義のケアプランに対する利用者の同意があったといえる。

C、なお、未作成の場合の理由は、業務の多忙さによるものである。
原告は、前任者から33名分の利用者を引き継いでおり、平成18年3月には44名の利用者を担当していたが、神奈川県介護支援専門員協会の平成15年度の調査結果で一人当たりの妥当な担当利用者数を40人未満と回答した介護支援専門員が約73パーセントいたことや法改正により平成18年4月1日から介護支援専門員一人当たりの担当利用者数が35人と定められたことからしても、原告の業務が過重であったと推認される。また、原告は平成17年7月から平成18年3月まで一月当たり31時間50分の所定外労働を行っていたものであり、まじめに職務を執行していたことを示すものである。これらのことなどからして、原告の未作成プラン等は、日常業務の忙しさのために生じたものといえる。

(イ)第4表及びアセスメント表について(利用者番号1ないし7.9.10.12ないし15.18ないし25.27.29ないし31.33.35ないし46.49)

a、利用者番号1.2.4.6.9.12.14.18ないし20.22.24.27.30.31.33.41.44ないし46については、前任者において作成すべきこと又は期間更新時にサービスの変更がないことから、いずれも原告に作成義務が生じない。

b、利用者番号7(〇〇〇〇)については、作成済みである。

C、前記a及びbに掲記した者を除くその余の利用者については、未作成である。
未作成のものについては、業務過重によるものである。

(ウ)第6表及びモニタリング表について(利用者番号1ないし49)
a、利用者番号1.7については、作成済み(遅れて作成したもの)である。

b、利用者番号3.13.25.29.35.36.37.42については、利用開始日が平成18年1月10日いこうであること、利用者番号15(〇〇〇〇〇)については、前記(ア)b(c)のとおり、配置直前に保険手帳の交付を受けたものであること、利用者番号46(〇〇〇〇)については、利用が終了していたことから、いずれも原告に作成義務の不履行があったとはいえない。

C、前記a及びbに掲記した者を除くその余の利用者については、作成義務の不履行を認めるが、その理由は、過重業務やパソコンの故障等の現場の仕事環境にあったものである。また、利用者番号43(〇〇〇〇)については、家族から情報がもらえなかったため未作成となっているものである。

ウ、原告は、平成18年4月から、〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇での業務に従事させられているが、同業務は大変忙しく、そのような中で業務の引継ぎと未作成のケアプラン等の作成業務を迫られていたものである。被告〇〇は、同年6月5日に原告の後任の〇〇〇〇(以下「〇〇」という。)から、原告が未作成のケアプラン等を作成しないとの報告を受け、同月7日、原告にその釈明を求めていることから、この時点で文書作成が遅れている事情を十分了解していたものといえ、また、3か月程度で原告が未作成のケアプラン等を作成するものと思っていたとのことであるが、同年6月30日には〇〇に対し、原告に代わって未作成のケアプラン等を作成するように指示をしていることからすると、原告が未作成のケアプラン等を作成することを元々大して期待していなかったものといえる。しかしながら、原告に対して作成期限の猶予を与えておきながら、文書を作成しなかったとして、職務怠慢として解雇理由とすることは、信義に反するものであり、許されない。

〇〇被告は、平成18年7月12日までは原告を解雇する考えを有していなかったが、同日、原告と大きな声で大激論をしたことから、原告を解雇する決意を固めたものである。また、同月中旬には、新しい介護支援専門員を募集する張り紙が事務所に張り出されていた。
なお被告〇〇は、平成18年8月15日に〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇(以下「〇〇〇〇〇」という。)から「書類不備」の指導を受け、自主申告すべき旨の指導をされたものであり、原告が作成しなかったケアプラン等について自主申告しないと指定を取り消されるおそれがあった旨主張するが、同年6月30日の〇〇への業務命令により、同人が作成するのを待てばよかったのであり、被告〇〇の上記主張は、こじつけにすぎない。原告の未作成のケアプラン等は、被告〇〇の日常業務態勢に内在するものであったから、それを原告の責任に転嫁して解雇理由とすることは不当である。

(明日に続く〜明日は「被告〇〇の主張」から)

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