介護保険制度は24年3月までは現行方式で実施されるが、定時見直しにより同年4月から制度改正されて新たなスタート地点に立つ予定となっている。

18年4月以来の制度改正というわけで、既に改正議論は始まっており、来年の今頃はかなりの部分で改正の骨格が見えてくることになろう。

前回18年改正では、それに先駆ける形で17年10月から施設利用者の居住費と食費が自己負担化され、翌年4月からは新予防給付の創設ということで、要支援2という状態区分が新たに新設された。介護保険サービス給付も予防と介護に区分され、予防サービスには定額報酬が導入された。

そして予防対象者のケアマネジメントは、居宅介護支援事業所の介護支援専門員には担わせないとして、地域包括支援センターの保健師が中心となって「予防介護支援事業所」によって立案されることになった。

これによって、利用者が自ら選択する居宅介護支援事業所の「介護支援専門員」が担当者となって、そこを窓口にしてすべての介護サービス利用に繋がるという介護保険制度創設によって生まれた「ワンストップサービス」という重要な機能が失われてしまった。(参照:ワンストップサービス後退の爪痕

このことはケアマネジメントの質議論の結果であり、介護支援専門員の居宅サービス計画が不適切で、要介護度悪化を招く計画が多くて信用できないから、予防マネジメントは介護支援専門員に任せることはできないという考えが根底にある。

その論拠とされたデータはいくつかあるが、最初に国が介護給付費分科会で示した根拠データは、日医総研が島根県で行った平成12年12月と14年10月比較データであり、それは「サービス利用が多い軽介護者の介護度が短期間に悪化」したというものであった。しかしその調査対象者は、わずか7.800人で、1地域の定点観測データが国の平均値であるかのように給付費分科会に示した、という問題点があった。しかも、それは後に、平成16年度介護給付費実態調査において国全体としては、軽度者と中・重介護者の重度化率は同じという結果が示され、島根県データはデタラメであると否定された。

そこで国側は、給付費分科会に最終的に鹿児島県保健福祉部「居宅介護支援事業所の実態調査」というデータを出し、この中で要支援者中、ほぼ毎日(週29回)サービス利用した群における要介護度悪化が高割合という主張をした。

しかしこれもまったくひどいデータで「ほぼ毎日(週29回)サービス利用した群における要介護度悪化が高割合」といっても、総サンプル数310人というわずかな数のもので、しかも毎日サービス利用はわずか2人しかいない。この2人の悪化をもってして高割合としているのだ。

そもそも、ほぼ毎日訪問介護を使っている軽介護者などそういないはずだ。これは現場で実際に居宅サービス計画を立案しているケアマネなら共感できる感覚だろう。それなのにわずか310のサンプルに2人もそれが入っているのがおかしくないか?そういうサンプルをあらかじめ組み込んだ操作データではないかという疑いが強い。

このことは当時、このブログ記事で再三指摘していたところであるが、歴史はまた繰り返されつつある。それはシルバー新報が報じた次の記事をみて分かる。

『地域保健研究会が調査 :予防訪問介護を利用している要支援者の2年後の心身・生活状況や介護度の変化について調べたところ、84.7%の利用者の介護度が悪化したことが、地域保健研究会(田中甲子会長)の調査研究で分かった。悪化の要因を分析すると、関節疾患や骨折、脳血管疾患など疾病の発生や悪化をきっかけに運動・移動機能が低下し、歩行が困難になるとともに日常の掃除や買い物、調理といった家事遂行能力が低下。利用している訪問介護でも生活援助サービスの割合が増えるという傾向にあることがうかがえる。一方、要介護度が改善した人の要因について見ると、身体能力の低下をなるべく防ぐ努力をしたり、健康管理に気をつけたりするよりも「日常の家事を出来るだけ自分で行うようにした」と回答した割合が最も多い。ヘルパーや家族に依存せず主体的に家事を行うことによって積極的な運動や外出する頻度も増え、生活全体が活発化しているという好循環が生じていることが推察されると分析している。』

以上である。家事に対する生活支援が増えれば増えるほど、身体機能が悪化する高齢者が多いという結論を導き出しているデータである。つまり18年制度改正議論の時と同じようなデータが、同じような時期に出されている。これは何を示すものか?

当然この背景には、現在の制度改正論も「財源をどうするか」という立ち位置から入っているという意味と、その中で「生活援助」の対象となる家事の支援について、「家事ができないということは保険事故ではないから、社会保険である介護保険の対象外とすべきである」という理屈から、介護給付から訪問介護の生活援助をはずそうとする一部勢力の思惑が反映されているのではないかと疑う。

同時に、公益社団法人「認知症の人と家族の会」が6月21日に「介護保険制度改正への提言―要介護認定の廃止など利用者本位の制度に―」を長妻昭厚生労働相にあてて提出したが、対応した厚労省の宮島俊彦老健局長は「要介護認定は制度の根幹。制度そのものが成り立たなくなる」と難色を示した、ということも関係して、支給限度額をなくしたら、このような不必要サービスが増えて身体機能が悪化するから、支給限度額を定めた要介護認定は廃止できない、という理屈に繋がるものとも考えられる。

どちらにしても、関係者はこうした切れ切れに出されてくる調査データに、どのような意味があるのか注視しておく必要があり、きちんと必要な場所で声を挙げるなど、国のいいように制度がいじられるだけで終わらないようにアクションを起こしていく必要があるだろう。

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