八重桜緑風園の正面玄関前に咲く「八重桜」は、真っ白な花を満開に開かせるとても見事な木である。これは昭和59年に登別市に「日・米桜の女王」が訪れた際に、当園にも来訪し記念植樹した木である。

北海道はどこもそうだが、白く清楚な美しさのある「ソメイヨシノ」ではなく、ピンクがあでやかな「エゾヤマザクラ」が多く、八重桜もピンクの花弁の種類が多いので、この白さは一段と目立って存在感を示している。
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こうした桜の季節、北海道の「花見」はジンギスカン鍋を囲んでの宴会が定番である。しかし高齢要介護者の中には、何年も自宅からの外出機会を持てず、家の中で過ごして桜を何年も見たことさえないという人々が存在する。

そうした中、通所サービスという社会資源ができたことは、それらの人々が外出する機会を作り、再び社会と接点を持って、桜の季節にはその花を愛でるという当たり前の生活習慣を取り戻すための有効なサービスとなっている。通所サービスの行事として花見でジンギスカンというのも、かつては当たり前であった。しかし介護保険制度になりデイサービスが通所介護と変わったことによって、そのことが必ずしも簡単ではなくなった、という歴史を我々は経験してきた。制度開始から10年。あらためて通所サービスの外出効果というものを問い直し、そのルールを緩和して良い時期に来ているのではないだろうか?

通所介護の原型は、1979年に市町村事業として「在宅寝たきり老人デイサービス」として実施されたサービスであろうと思える。

これは1986年に整理され、現在老人福祉法第5条2の3項に位置づけられている「老人デイサービス事業」となり、1998年からはこの事業が市町村委託事業として社会福祉法人等が実施できるようになり、さらに2000年の介護保険制度創設により介護保険制度上の「通所介護」事業として民間事業者も指定を受けサービス提供できるようになり事業所数が大幅に増えた。

つまり現在の通所介護は、老人福祉法では「デイサービス」、介護保険法では「通所介護」が正式名称である。介護保険法の原案づくりを行っていた際の小泉純一郎厚生大臣(当時)の「日本の法律なんだから、カタカナばかり使わず日本語で法文を作れ!」という鶴の一声が、両者の正式名称の違いに繋がっている。

ところで市町村事業として「老人デイサービス事業」が行われていた当時でも、その数はさほど延びず、デイサービス事業を実施していない市町村も数多くあった。当登別市も同様で、1989年〜1998年当時までは「在宅寝たきり老人入浴サービス事業」として、特養に通って特浴入浴を支援する、という事業しか行われておらず(当施設で実施していた)、当法人が市の委託事業としてデイサービス事業を行うようになったのは1999年からである。

つまり当法人におけるデイサービスは介護保険法が施行される1年前からの実施であり、開始から1年間は老人福祉法上の市の委託事業として実施されていたわけである。この1年間の事業実施内容と、介護保険制度移行の指定事業とでは、その実施方法は大きく変わっていると言ってよい。様々な変化があったが、一番の問題は、事業者の裁量で認められていたサービス内容が、介護保険法や法令通知によって、かなり規制を受けるようになったことだろう。そのように考えると介護保険制度移行、通所介護事業に関して言えば「できなくなった」ことの方が増えたように思う。

その最たるものが外出行事だろう。特に介護保険制度開始当初は、基本的に通所介護は事業所内で行うのが原則という考え方が強く、花見やドライブなど、すべての外出サービスを「保険給付不可」とする地域があった。そのためQ&A等で、機能訓練の一環として通所介護計画に位置付けられた外出行事は可能とする見解が出されたが、それでもその範囲の解釈には地域差がかなりあり、それは現在でも解消しておらずグレーゾーンも相変わらず残っている。

老企25号通知ではこのことについて
(2)指定通所介護の基本取扱方針及び具体的取扱方針
4.指定通所介護は、事業所内でサービスを提供することが原則であるが、次に掲げる条件を満たす場合においては、事業所の屋外でサービスを提供することができるものであること。
イ・あらかじめ通所介護計画に位置付けられていること
ロ・効果的な機能訓練等のサービスが提供できること

以上のように規定されている。このルールに沿った外出行事は認められているので、まず制限ありきのようなローカルルールで自由度を著しく損なっている保険者は反省すべきである。

ところでここで書かれているように、算定ルール上あらかじめ計画されている必要があるのは「通所介護計画」であって、居宅介護支援事業所の「居宅サービス計画」ではない。つまりこのルールに合致する外出行事を行うごとに、居宅介護支援事業所の介護支援専門員に、居宅サービス計画変更をお願いする必要もないし、ましてや「伺い」を立てる必要もないのである。

それを通所介護計画に位置付ける場合であっても、外出による心身活性化効果を「個別機能訓練計画」の中にあらかじめ落としておけば外出行事を行う時期になるたびに通所介護計画を変える必要はない。

例えば利用者のサービスに対する意向が「外出の機会が確保され、楽しい時間を持ちたい。」とされる場合、生活上の課題を「外出機会が少なく精神の不活性化リスクがある」とアセスメントし、それに対する課題解決目標を「社会交流の機会を確保し、楽しい時間を過ごすて心身活性化できる。」とし、具体的サービスとして「花見や紅葉狩りなどの外出レク参加による活動範囲の拡大、季節に応じた行事に参加することにより、心身機能の活性化を図ります。」としておけば、いちいち外出行事が組み込まれるたびに通所介護計画を変える必要もないし、ましてや担当ケアマネが立案する「居宅サービス計画」の通所介護の目的として身体機能時の機能訓練の目的が明記されておれば、それに沿った計画ということになり、何の問題もなく、誰からもイチャモンはつけられないものである。

こうした理論武装と、計画内容の説明ができる理解が通所介護の計画担当者にも不可欠だろう。

ただ保険算定可能な外出行事を行う際にも忘れてはならないのは、本来通所サービス利用者が求めている通所事業所の機能とは何なのかという部分で、入浴などの基本サービスをおざなりにしないことである。そして参加したくないという利用者が一人でも存在するのであれば、それらの方のニーズにもきちんと応えることであり、少数意見として単純に切り捨てることは好ましくないという理解だろう。

なお外出行事は地域ごとに、外出先からの自宅への直帰や、サービス開始の際に事業所を経ず自宅から外出先への直行を認めていないなどのルールを設けている場合があるし、外出行事の際に、事業所に居残る人がいる場合の人員配置については、事業所と外出先の両方に必要人員配置を求めている地域と、全体を1単位としてひっくるめて総数配置されておればよいという地域があり注意が必要だ。

これらのグレーゾーンやローカルルールもそろそろ整理して、できる可能性を増やしていくべきではないかと感じている。

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