5月11日の日に、当ブログにおいて「介護職員への一部医療行為の解禁議論」について「インスリン注射など家族ができる医療行為について介護職員にも認めるべきだという意見についてどう考えますか。」というアンケートを実施した。(参照:アンケート結果

その結果は実に90%近い方が「一部行為は介護職員にも認めるべき」と回答されている。

しかし「医療資格者にしか認めるべきではない」という意見も約8%ある。(本日現在の集計値)そしてそれらの方々の反対意見として寄せられたコメントは

1. 介護職に認めるなら、資格試験の内容を検討すべき。実務、研修のみで資格を与えるのはおかしい。 (女性/40代/福岡)
2. 介護福祉士は医療職ではない。十分な研修も無いまま利用者が困るから認めろとは乱暴すぎる (男性/70代/神奈川)
3. 医療資格者が足りないから介護職員にやらせるんですか?大変不安を感じます。 (男性/70代/神奈川)
4. 医療行為は素人がタッチするべきではない。(男性/30代/千葉)
5. そもそも資格修得過程でのレベルが違いすぎる。(男性/30代/岡山)
6.危険です。 (女性/60代)
7. 医療行為ができる人がいればいい話。それに対する補償も保険ですべき (男性/30代/兵庫)
8. 事故があった場合、家族は自己責任とされるのに、その他の者は責任を追及される為 (男性/40代/石川) etc。

以上である。8については医療事故があれば、医療資格者でも責任は問われるので的外れな意見ではないかと考える。7については、ともかく医療行為なんだから、すべて医療の有資格者を配置すれば済む、という意見であるが、医療行為が必要な人の数が世界にも過去に例をみないほど増えていることに対する視点がない非現実的な意見と思う。これについては介護保険施行時、旧総務庁が「医療行為の中にはヘルパーが行っても利用者の身体に危害を及ぼすおそれのない行為が少なくない。その処置のために訪問看護を利用するのは、ステーションが相当数整備されたとしても対応が困難とみられるほか、コスト面からみても合理的とは言えず、身体介護を行うヘルパーができる限り幅広く行えるようにすることが望ましい」という意見を出しているが、まさにそれこそが正論である。というか我々の主張は医療行為を介護職員にできるようにせよという主張ではなく、時代に合った形で医療行為を整理し直せという主張であり、これについては後述する。

ところで1〜6に示された意見は、まさに「医療行為を介護職員が行って安全性が担保されるのか」という疑問の声であり、この疑念は国民の多くの声を代表するものだと考えてもよいもので、このことについてきちんと答えを示すことができないと、医療行為解禁論は国民に理解が得られないだろう。

このアンケートは「医療行為の解禁」としているため、医療資格者ではない介護職員がそんな行為を行う不安が前面に出てしまう傾向にあるが、実はこの問題は医療行為を介護職員にできるようにせよ、というより、むしろ「こんなことまで医療行為という枠にはめて、医療職にしかできないままにしておいていいの?」というふうに考えてみたほうが問題の本質がわかるのかもしれない。(つまり質問の仕方自体に問題があったかもしれないと考え反省している。)

そもそも医師法第17条において医業は医師にしか認められていないが、医行為のうち「診療の補助業務」として看護師が補助できるものは「相対的医行為」、医師でなければ行うことのできない「絶対的医行為」と区別して呼ぶこともあり、前者を分かりやすく「医療行為」と呼ぶものである。これについては医師の指示のもと 他の有資格者(看護師等)にも認められているのである。

ところで、もともと医療行為は業として行わなければ、これを全面的に禁止する法令はない。無資格者であっても在宅療養者の家族等の保護者がこの行為を行うことは「業」ではないとして認められているのである。しかし家族ではない第3者がこれらの行為を行う場合は、労働対価としての金銭を得ていない場合でも繰り返し行えば「反復継続行為は業と同様である」とされ法律違反になるものである。

逆に言えば、法律で規制がない家族等の保護者は、在宅療養者に対し医療機関の指導を受けて様々な医療行為を行うことによって、それらの方々の命と生活を支えているもので、その行為は決して危険性が高いものではなく、医師などの管理が及ばない場所で日常的に行われている行為といえる。それらの行為の中で危険性の少ないものについては介護職員ができる行為として「医療行為」の枠から外して行ってもよいのではないかというのが、この提言の本質である。

なぜなら医業を定めた医師法や、医療法の制定後にも、様々な新しい医療器具や治療法が生まれ、法律が想定していなかった範囲まで含めたすべてが「医療行為」の枠に入ってきてしまっているので、ここで一度時代のニーズに合致した形での医療行為の整理が必要ではないかということなのである。

例えば我々が「介護職が行うことができる行為」にすべきと主張している行為の一つ「心臓・ぜんそく時のテープ貼り付け」についていえば、フランドールテープの貼りつけなど、ほとんど安全性を損なわないで誰もができる行為と解釈できるのに、これが治療目的の医療材料であるから医療行為であるという理由で訪問介護では計画できない現状は時代のニーズとの大いなるミスマッチといえる。そもそもフランドールテープが発売されたのは1984年ということだから、医師法や医療法の定めができたはるか後であり、こんなものまで当時から医療行為と想定していたはずがないのである。

治療法や医療器具の進歩は、医療の有資格者ではない人々が可能な行為を増やしているはずなのに、法律の規制が前時代的なままであることで、この進歩の恩恵が国民に届いていないのである。

ここを変えるために、今この時代に合わせて医療行為の再整理を行う必要があるという意味で、その結果、医療行為とは言えない行為が増えれば、これは必然的に医療の資格を持たないものができる行為になるのである。

このことがいま求められている時代のニーズだと信ずるものである。だからこの議論の本質は、一部の医療行為を介護職員が行えるようにする、という意味よりむしろ、医療行為として考えられている現在の解釈はすでに現実とミスマッチしているので一度「医療行為とは何ぞや」という概念を整理して、医療有資格者が行わなくとも危険性がさほど高くないと考えられるものは「医療行為」の枠から外して、介護職員等の行為として認められるべきであるというものである・

その際に「医療行為から外れる条件」として「ある程度の知識と技術を持った者が行う」という条件付けを行って、この部分のセーフティネットを構築する手段として、一定の研修受講義務などを課すなどが考えられる対策ではないだろうか。

つまり医療行為を医療の有資格者しか行えないのは当然であり、今後もそうであって構わないが、しかし現在医療行為と考えられている一部の行為は、医療の有資格者でなくとも安全に行えることができるものも含んでおり、それらは医療有資格者が行うべき医療行為とは区分して、資格がない者にでも可能な行為とすべきであるという主張であり、医療行為を解禁せよという主張ではないということである。ここを誤解しないでほしい。

そういう意味では「医療行為は医療有資格者にしか認めるべきではない」に投票され、なおかつ「口腔内の吸痰や経管の準備は医療行為からはずせば議論の必要がなくなる。」というコメントを書いてくださった(男性/50代/新潟)の方の意見が的を射ていると感じた。

このことについては明日午前中UHB(北海道文化放送)で放映される「のりゆきのトークDE北海道」の特集として取り上げられる予定である。僕もインタビューを受けているので是非明日ご覧いただきたい。ただし道外の方は視聴できないのはいうまでもない・・・。

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