4月から特別養護老人ホーム(特養)で解禁した介護職員によるたん吸引などの医療行為の法制化に向け、対象を要介護者の自宅やグループホームなどの施設に拡大する方向で検討に入ったことは関係者の方は既にご存じだろう。
そもそも特養で介護職員にも認められた行為はあくまで「医療行為の解禁として認めたものではなく、違法性阻却として可能となる条件を示して認めたもの」とされている。そのためたん吸引などでミスが発生した際の責任問題などへの懸念もある。このため厚生労働省は、この行為を法律で規定すべきと判断、来年の通常国会への関連法案提出を目指しているものである。
ところで「たん吸引」に限って言えば、行為としては在宅の方が先に認められており、しかもその範囲は気管切開部を含めた喉の奥の吸引までも認められているものである。これは2003年7月から筋委縮性側索硬化症(ALS=筋委縮と筋力低下が特徴的な進行性の難病)患者への痰吸引が一定条件下で認められたもので、さらに2005年3月24日には、厚生労働省から痰の吸引が必要な在宅療養患者や重度障害者に対して、ホームヘルパーやボランティアなど家族以外の第三者にも吸引行為を同様の条件下で認めた経緯がある。
※たん吸引を資格のないものに認める条件
(1)主治医や看護師による吸引方法の指導
(2)患者の文書による同意
(3)主治医らが定期的に吸引が適正に行われているかを確認する
しかしこれはあくまで行為として認めたに過ぎず、業として認めたわけではないので、例えば訪問介護員が在宅高齢者に対して「たん吸引」をボランティアとしては行うことは現在でも可能であるが、訪問介護事業所のヘルパー業務として行うことはできないもので、当然のことながら訪問介護費を「たん吸引」という計画に基づいて算定することはできない。
つまり今回、厚生労働省が検討している通り法案が国会審議を通れば、その後、痰の吸引と経管栄養の一部対応については、訪問介護サービスとして計画できることになり、その行為で訪問介護費を算定可能になるという意味を含んでいる。また特養とグループホーム等で介護職員ができる行為に違いがあるのもおかしな話で、このことも検討課題になるという意味である。
しかしこのことが超高齢社会にニーズに合致した改正であるのかと考えた時、確かに今まで議論の俎上にさえ上らなかった2つの行為を一定条件下で認めたという意味はあるものの、ここを橋頭保にして先に進むという見込みがない現状は、この検討で「打ち止め」とされる可能性が高い状況と言え、先送りされた医療行為の一部解禁という課題が、ここで終止符が打たれてしまう可能性があるという意味では、まったく国民ニーズに合致したものではない。
特に特養での2つの行為解禁を検討した「特別養護老人ホームの入所者における看護職員と介護職員の連携によるケアの在り方に関する検討会」では、痰吸引と経管栄養対応という2つの行為しか検討されておらず、そのほか医療行為として介護職員に認められていない行為につき、生活と深く結び付いてそのことが介護職員など有資格者にしか認められていないことで特養入所ができないなど問題となっている行為は何かについて何も検討されていないのである。
我々の主張は、介護職員にすべての行為を解禁せよというものではなく、在宅で家族が行っている行為については(例えばインスリン注射)看護師等が行う行為と分けて介護職員が行えるようにすべきだというものである。例えば現在介護職員ができないとされている行為で、それにより特養入所が困難とされているような支障があって利用者の不利益に繋がっている行為として考えられるのは
具体的には
1.血糖値の測定やインシュリン投与。
2.褥創の汚染の際の処置。(治療処置ではなく、便汚染した際に褥創部の便を拭きとる行為)
3.摘便。
4.心臓・ぜんそく時のテープ貼り付け。
5.点滴が終了した場合の処置。
6.在宅酸素の取扱と施設における酸素吸入。
等である。これらは在宅で家族が実際に行っている行為で、施設の中で医療管理もある程度可能な状況で、介護職員が行っても在宅で家族が行う状況より危険性が高まるということはあり得ず、認められるべきである。
前にも指摘したが、特養など施設入所者の医療ニーズとは、例えば医療機関で対応すべき病状に限らず、加齢とともに緩やかに生ずる身体機能の衰えに起因する問題であったり、治療を必要とするような急性疾患はなくとも枯れるように徐々に嚥下機能が低下して最終的に経管栄養が必要になることであったり、インスリン注射で血糖値管理さえできれば医療機関への入院が必要でないケースであったり、インフルエンザなどの感染症を発症し、一時的に点滴が必要ではあるが入院までは要しない状態である場合が考えられる。
つまり特養利用者の医療ニーズとは常時医療対応が必要である状態をいうわけではなく、ある一定期間あるいは1日のうちの特定時間帯に医療対応ができれば日常生活に支障がない状態が多いのである。それなのにその行為支援が必要な時間帯(例えば朝食前のインスリン注射支援)に看護職員が配置できない状況から入所できないという在宅高齢者が少なからず存在するという「国民にとっての不利益」にきちんと目を向けて、何が求められている対策であるかを超高齢社会の課題、変化する社会構造における新たな対応課題として、もっと真剣に議論されるべきなのである。
これは施設サービス提供側、特養等の介護関係者の都合による提言ではなく、あくまで国民全体のニーズに照らした提言であって、これが実現することによって、多くの医療ニーズが人々が救われることになるのだということを肝に銘じて考えてほしい。
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そもそも特養で介護職員にも認められた行為はあくまで「医療行為の解禁として認めたものではなく、違法性阻却として可能となる条件を示して認めたもの」とされている。そのためたん吸引などでミスが発生した際の責任問題などへの懸念もある。このため厚生労働省は、この行為を法律で規定すべきと判断、来年の通常国会への関連法案提出を目指しているものである。
ところで「たん吸引」に限って言えば、行為としては在宅の方が先に認められており、しかもその範囲は気管切開部を含めた喉の奥の吸引までも認められているものである。これは2003年7月から筋委縮性側索硬化症(ALS=筋委縮と筋力低下が特徴的な進行性の難病)患者への痰吸引が一定条件下で認められたもので、さらに2005年3月24日には、厚生労働省から痰の吸引が必要な在宅療養患者や重度障害者に対して、ホームヘルパーやボランティアなど家族以外の第三者にも吸引行為を同様の条件下で認めた経緯がある。
※たん吸引を資格のないものに認める条件
(1)主治医や看護師による吸引方法の指導
(2)患者の文書による同意
(3)主治医らが定期的に吸引が適正に行われているかを確認する
しかしこれはあくまで行為として認めたに過ぎず、業として認めたわけではないので、例えば訪問介護員が在宅高齢者に対して「たん吸引」をボランティアとしては行うことは現在でも可能であるが、訪問介護事業所のヘルパー業務として行うことはできないもので、当然のことながら訪問介護費を「たん吸引」という計画に基づいて算定することはできない。
つまり今回、厚生労働省が検討している通り法案が国会審議を通れば、その後、痰の吸引と経管栄養の一部対応については、訪問介護サービスとして計画できることになり、その行為で訪問介護費を算定可能になるという意味を含んでいる。また特養とグループホーム等で介護職員ができる行為に違いがあるのもおかしな話で、このことも検討課題になるという意味である。
しかしこのことが超高齢社会にニーズに合致した改正であるのかと考えた時、確かに今まで議論の俎上にさえ上らなかった2つの行為を一定条件下で認めたという意味はあるものの、ここを橋頭保にして先に進むという見込みがない現状は、この検討で「打ち止め」とされる可能性が高い状況と言え、先送りされた医療行為の一部解禁という課題が、ここで終止符が打たれてしまう可能性があるという意味では、まったく国民ニーズに合致したものではない。
特に特養での2つの行為解禁を検討した「特別養護老人ホームの入所者における看護職員と介護職員の連携によるケアの在り方に関する検討会」では、痰吸引と経管栄養対応という2つの行為しか検討されておらず、そのほか医療行為として介護職員に認められていない行為につき、生活と深く結び付いてそのことが介護職員など有資格者にしか認められていないことで特養入所ができないなど問題となっている行為は何かについて何も検討されていないのである。
我々の主張は、介護職員にすべての行為を解禁せよというものではなく、在宅で家族が行っている行為については(例えばインスリン注射)看護師等が行う行為と分けて介護職員が行えるようにすべきだというものである。例えば現在介護職員ができないとされている行為で、それにより特養入所が困難とされているような支障があって利用者の不利益に繋がっている行為として考えられるのは
具体的には
1.血糖値の測定やインシュリン投与。
2.褥創の汚染の際の処置。(治療処置ではなく、便汚染した際に褥創部の便を拭きとる行為)
3.摘便。
4.心臓・ぜんそく時のテープ貼り付け。
5.点滴が終了した場合の処置。
6.在宅酸素の取扱と施設における酸素吸入。
等である。これらは在宅で家族が実際に行っている行為で、施設の中で医療管理もある程度可能な状況で、介護職員が行っても在宅で家族が行う状況より危険性が高まるということはあり得ず、認められるべきである。
前にも指摘したが、特養など施設入所者の医療ニーズとは、例えば医療機関で対応すべき病状に限らず、加齢とともに緩やかに生ずる身体機能の衰えに起因する問題であったり、治療を必要とするような急性疾患はなくとも枯れるように徐々に嚥下機能が低下して最終的に経管栄養が必要になることであったり、インスリン注射で血糖値管理さえできれば医療機関への入院が必要でないケースであったり、インフルエンザなどの感染症を発症し、一時的に点滴が必要ではあるが入院までは要しない状態である場合が考えられる。
つまり特養利用者の医療ニーズとは常時医療対応が必要である状態をいうわけではなく、ある一定期間あるいは1日のうちの特定時間帯に医療対応ができれば日常生活に支障がない状態が多いのである。それなのにその行為支援が必要な時間帯(例えば朝食前のインスリン注射支援)に看護職員が配置できない状況から入所できないという在宅高齢者が少なからず存在するという「国民にとっての不利益」にきちんと目を向けて、何が求められている対策であるかを超高齢社会の課題、変化する社会構造における新たな対応課題として、もっと真剣に議論されるべきなのである。
これは施設サービス提供側、特養等の介護関係者の都合による提言ではなく、あくまで国民全体のニーズに照らした提言であって、これが実現することによって、多くの医療ニーズが人々が救われることになるのだということを肝に銘じて考えてほしい。
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・・・って、これって?大きくは、言い過ぎかも知れませんが、「人間愛」鳩山総理談人が、選挙の時に仰ってましたが、「友愛・博愛・・・?」でしょうか?とにもかくにも、在宅でできる医療行為は何故許されて、施設等では違法になる?(それはわかるが、何とかして欲しい)
困っている人々がたくさんいます。