7名の尊い命が失われた札幌市北区のグループホーム火災の記憶がまだまだ生々しいこの時期に、同じ北海道の岩見沢市でグループホームのボヤ騒ぎがあった。

全国的にはあまり知られていないニュースであると思うが、このボヤ騒ぎには、別に大きな問題が隠されているように思うので、今日はこのことを取り上げみたい。ボヤ騒ぎの詳細は以下に北海道新聞の記事を転載する。(一部事業者が特定できる部分は伏せ字にする)

4月20日午前4時40分ごろ、岩見沢市○町の認知症グループホーム「○○○」1階のトイレから煙が出ているのを夜勤の女性職員が発見した。職員は煙を自力で消したが、入居していた89歳の女性がのどの痛みなどを訴えて病院に運ばれた。岩見沢署は、トイレのパネルヒーターの操作盤がショートして煙が出たとみて調べている。同署などによると、ホームは認知症の高齢者らが利用し、入居者9人が暮らしていた。当時はこのほか、介護保険が適用されない1泊などのショートステイの利用者8人がいて、夜勤の職員は1人だった。国は、夜間の利用者5〜9人につき介護職員を1人以上配置することを定めているが、同ホームは「介護保険が適用される入居者に対して定められた職員を配置しており、国の基準は満たしている」としている。(北海道新聞)

以上である。幸いのどの痛みを訴えた女性利用者以外は無事で、大きな事故には至らなかった。しかしこのグループホームの経営者は、あの北区の火災事故をどのようにみて、何を感じていたのかが大いに疑問に思った。

僕は「夜勤者が一人という配置基準が問題であり、死亡事故を防ぐためには夜勤配置人数を増やせ」という論調には必ずしも賛成ではなく、夜勤者が複数でも燃えやすい木造民家型のグループホームでは絶対的な対策にはならず、スプリンクラー設置が死亡者を出さない最大の手当であると主張してきた。むしろ9人に対し一人の夜勤者というのは介護施設(特養や老健等)と比べれば少ない配置人員とは言えないのだから、この配置基準を増やすのはコストがかかり過ぎて現実的ではなく、現在のマンパワー不足、財源不足から考えると不可能に近いことだろうと思っている。

それにしても・・・である。あの北区の事故から1月足らずのこの時期、一人夜勤で対応できる能力の限界も指摘されているのに、グループホーム9名の入居者のほかに、保険外ショートステイとして8名の高齢者を受け入れ、この利用者に対しては別な対応職員を配置せず、グループホームの夜勤者1名だけで一括対応していることに、このホームの経営者や管理者は危機意識を感じなかったのだろうか?現在の体制で火災事故が起きたらどうしようと考えなかったのだろうか?スタッフからこのことに対する不安の声はなかったのだろうか?そうであれば相当鈍感である。

記事にあるように、岩見沢市の見解(地域密着型だから指導監督権限は市であろう)は「介護保険が適用される利用者に対する配置基準は満たしており、法令上の問題はない」というものである。

しかし保険外のショートステイに対して、この夜勤者は何も関わっていなかったとはどうしても思えない。もしこの1名の夜勤者でグループホーム入所者とショート利用者全ての対応を行っていたものであれば、ショート利用者対応している時間帯はグループホームに夜勤配置者がいないのと同じ状態になり、夜間時間帯を通じて1名以上の夜勤者配置という配置基準に違反していることになる。指定配置基準違反に該当する可能性の方が高いと僕は思う。岩見沢市はなぜ、このあたりを「問題なし」と判断しているのか、このことについても大いに疑問である。配置基準ルールを誤解しているようにしか思えない。このことはもっと精査してもらう必要があるのではないだろうか。

仮に配置基準違反がなかったとしても、あの北区の事故があった以後であるがゆえに、このホームは、せめて安全面から必要最低限の管理体制を考えるべきで、ショートステイ利用者対応は、保険外サービスであっても、グループホーム夜勤者以外のスタッフ対応が必須だろうと考えるのが、常識的な判断ではないんだろうか?あの北区の火災死亡事故の後は、なおさらそういう体制の見直しを行うべきではなかったのではないのか?過度な利潤追求という姿勢が、安全性を鑑みない体制を生みだし、職員に過度な業務を課している結果ではなかったか大いに疑問視するところである。

今回、人命が奪われなかったのはただの偶然に過ぎない。しかしこのホームの夜間の体制をみる限り、あまりに人の命を軽く見過ぎているのではないかと考えてしまう。

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