医師意見書が遅れて認定審査ができないケースの問題点を以前に記事で指摘したことがある。
(参照:医師意見書の提出期限はなぜ守られないのか

しかし今回、一般論としての問題ではなく、当事業所に降りかかった問題として医師意見書の遅れによる認定審査ができないことで困っている。

通所介護の利用者で、現在要支援2の方が、4月末で認定有効期限を迎えるため、更新申請を行い既に認定調査も終わっている。しかもこの方は、状態像がやや変化しており、調査員による認知症高齢者自立度の判定も?aとされており要介護1に認定される可能性もあるが、同時に4群のBPSD関連項目はチェックに該当する行動はあまりなく、要支援2のままという可能性もある微妙なケースで、審査会でどのように審議されるかが問題となるケースである。(1次判定結果は要介護1)

ところが肝心の認定審査が「医師意見書の提出が遅れている」という理由で開催できず、とうとう今月の認定審査が不可能になった。別に申請が遅れていたわけでもなく、単純に医師意見書が催促しても書いてくれないことが原因だ。

よって来月5月当初からの当該利用者のサービスは暫定プランで利用するしか現物給付化する方法はないわけである。しかし暫定プランと行っても、要支援2か要介護1か不明な状態で、どうすれば良いのか?Q&Aでは結果が予測される方の暫定プランを立てて、予測が外れれば遡ってセルフプランとする取り扱いも認められてはいるが、予測自体が難しいケースなのである。

しかも通所サービスと予防通所サービスでは、その提供サービスも微妙に異なってくる。アクティビティサービス部分などは「要支援者と要介護者を必ず物理的に区分する必要がある」なんていう変なルールもあるし、簡単に暫定サービスが可能だということで解決できるような問題ではないのである。しかも連休があるから、5月の審査会は第2週からしか始まらない。本当に困った問題である。

仕方がないので、今回は地域包括支援センターが暫定予防プランを立て、当事業所併設の居宅介護支援事業所が暫定介護プランを立て、それに応じて通所介護計画も予防と介護の2種類の計画を立てることとした。実際のサービス利用も整合性を持たせるように、予防で行っていた運動器向上訓練の内容を「個別機能訓練計画」として、どちらに転んでも問題がないように計画内容を工夫している。何ともいらぬ手間である。しかも当事業所の問題だけならともかく、仮に一次判定結果通り「要介護1」と認定された場合、予防の暫定プランは無駄になり、地域包括支援センターには少なからず迷惑をかけることになる。心苦しいことである。

意見書を書く医師も、診療に急がしいなどそれなりの理由があるんだろうが、利用者にとって意見書が遅くなって審査ができないという不利益のことを少しでも考えたことがあるのかと大いに疑問を持つところである。

これに対して意見書を依頼する保険者の立場は極めて弱く、ひたすら提出をお願いするしかない。強制力が伴う罰則等も何もないのが現状である。確かに意見書を書いてくれる医療機関がないと審議ができないのだから「そんなことを言うなら他に頼めば」といわれても困るので、強く出られないのは理解できるが、この状態が制度が続く限り放置、放任され続けてよいのだろうか?

以前に「医師意見書がないケースの特例認定を」という記事を書いたことがあるが、こういう問題が無くならない限り、医師意見書は利用者の利益より不利益要素が大きいとして、意見書が必要ない審査の方法も制度改正のテーマになってもよいのではないかと思う。

医師意見書がないと正しい審査判定ができないケースがどれくらいあるのか、審議資料としてたいした価値のない実態となっていないのかという全国調査を実施して、審査判定に必要な資料の見直し議論を行うべきではないだろうか。

市町村の認定審査会という公的認定機関があるのだから、この調査は案外簡単である。無作為に抽出した審査会について、審査結果を出すたびに、医師意見書と特記事項の内容が参考資料として有効だったか否かを同時に結果として出せばよいことである。その結果、多くの審査で「医師意見書があってもなくても結果は同じ」あるいは「医師意見書はまったく判定に必要な資料ではなかった」という割合を評価できるはずである。

必要性が薄いと考える割合が低ければ、これは必要な判定材料であると証明できるし、非常に高い割合を示せば、あんなにお金のかかる意見書作成をあえて求める必要がないという結果に繋がるだろう。

こうした調査自体は、さほど費用をかけずに可能となるであろうし、この経費(調査認定費)に対する事業仕分けもあってよいように思う。

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