日本社会福祉士会の研究員委員会が「専門社会福祉士認定制度」についての骨格を固めた。

「専門社会福祉士認定制度」とは、07年に改正社会福祉士法及び介護福祉士法が成立した際の衆参両議院の付帯決議「より専門的対応ができる人材を育成するために、専門社会福祉士及び専門介護福祉士の仕組みについて早急に検討を行うこと」とされたことに基づいて、社会福祉士会が研究委員会を立ち上げ検討していたものである。

それによると社会福祉士の上級資格に当たる資格について、地域の中核的存在となる「認定専門社会福祉士」と、そこに至る中間段階の「認定社会福祉士」の2段階認定を行うとし、それぞれ相談援助の経験が5年以上で、社会福祉士資格取得後8年程度の者を対象と考え、かつ

1.日本社会福祉士会、日本医療社会事業協会、日本精神保健福祉士強化のいずれかの会員であること。
2.定められた実績があること
3.所定の研修を受講し試験に合格すること

以上3つの条件をつけている。そして「認定社会福祉士」について条件に合致するものを順次認定し、その認定後5年以上相談援助の実務経験がある者が「認定専門社会福祉士」となり得る、としている。

僕は社会福祉士会の会員だし、地区支部では役員も務めており、かねてから北海道支部の会議などでは研究委員からの報告を聞いてはいたが、それについては冷ややかな見方をしていた。上級資格などに賛同しないからだ。

付帯決議など無視して、こんな資格創設に手を貸すべきではないとさえ思っていた。

そのまえに社会福祉士という資格とその有資格者の地位向上に努めるべきで、いつまでも名称独占資格でしかなく、一部の分野でしか配置義務がない資格のままであってはいけないという運動をすべきではないかと思っていたからだ。

だって社会福祉士ってかなり合格のハードルが高い「国家資格」だぞ。上級資格がなぜ必要とされているんだ?それだけ社会福祉士に信用がないってことじゃないのか?そのことを変えるべきであって、社会福祉士会自らが、社会福祉士の上級資格創設に手を貸すという意味は、社会福祉士の資格価値や社会的地位を、自ら貶め、その社会的ニーズを低めるもの以外のなにものでもない。

まったく、この会の方向性も理解できなくなってきた。

勿論、こうした上級資格創設には会としてのメリットはあるんだろう。それは新たな利権としてのメリットだ。何しろ認定条件が職能3団体のいずれかの正会員であるという条件をつけているんだから、必然的に日本社会福祉士会の会員になろうとする有資格者が増えるだろうし、そうした間接的利益ではない直接的利益としても義務研修の主催により補助金収入が得られるということもあるんだろう。

しかし、このことは同時に社会福祉士という資格は、社会福祉援助の専門職としては技量が足りないんですよ、地域の中核的存在となる資格として社会福祉士なんてあんまり意味がないんですよ、と国民に向けて宣伝する結果になり、そうした認識が広まってしまうだろう。現にそんな程度の資格だったのかと思い始めている人も多い。もし実態がそうであるというなら、社会福祉士自体の技量を向上させるシステムを考えるのが職能団体の役目で、自らの資格価値を失墜させるような取り組みに手を貸すなんてどうかしている。

何よりこういう複雑な資格形態では国民は混乱するだろう。こんな似たような名称の専門資格が乱立して国民はこれらがどういう資格なのか理解が困難である。

上級資格を作れば地域が良くなるわけではない。例えば介護保険制度分野では、介護支援専門員の上級資格として、主任ケアマネジャーやケアマネジメントリーダー・認定ケアマネなどが作られてきたが、それらの資格は地域のケアマネジメントの質向上に何の役にも立たず、介護支援専門員の技量アップにも何の影響も与えていない。上級資格に意味はなく、単に基礎資格の価値を下げ、国民の理解を複雑にするだけの結果しか生まないことは、既にそのことで証明されている。

そもそも社会福祉士会の一部の視野の狭い委員連中の考えだした資格によって社会が変わるわけがない。一部の利権と結び付いて、権威だけを振りかざすエセ専門職が増えるだけである。

社会福祉士会は、この上級資格議論が出てきた際に、上級資格の創設のための骨格づくりをするのではなく、上級資格が必要ではない社会福祉士の資格というものの方向に議論を結び付けて行くのが本来ではなかったのだろうか。

合格率からいっても、試験内容からいってもハードルは低くない国家資格をないがしろにするような上級資格作りは全く馬鹿馬鹿しいとしか言いようがない。社会福祉士会も地に落ちつつある。

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