人を援助するためには個々の人間・人格に対するある種の尊敬を要する。

それは、人は自分の生活を自分で支え、自らを支配する権利とその自由を持っている存在としての立場を尊重する姿勢である。しかし、そのことは同時に、人は他人の幸福を守り、自身が暮らす社会への責任を持つと同時に、自分のやり方で自分の幸福を追求する権利を持つ存在という意味である。自信のみの快楽を求めることが「幸福追求権」ではないのである。

このことは「人は人生において満足できるように社会とともに発展調和する能力を有し、自分で問題を解決する要素を持っている」という考えが基になっている。よって、年齢的未熟や身体・精神上の能力の欠落のため、自分や他人を傷つけずには生活を営めない人の自己決定や自由は例外として制限される場合があるものだ。

また人は理性的な存在であるという定義は決して正しいとは言えない。確かに人は理性的に思考する能力ももち、その判断に基づいて行動することも可能ではあるが、常に理性的行動をとることができるわけではなく、合理的判断能力が日常で果たす役割は信じられているほど大きくはない。しかも厄介なことに、人は自分の非合理的行動には気づきにくいが、他人のそれは容易に指摘できるという特性を持っている。人間関係が簡単なものではないという一つの要素に、この特性が大きく関わっている。

人の幸福感ということを考えると、その感性(幸せの感じ方)とそこに繋がる行動は、大部分が個々のパーソナリティを構成する機能によっている。そしてパーソナリティとは、その人が経験する身体的・心理的・社会的環境に関連する継続的な相互作用の中で生ずるもので、そこには遺伝的・素質的要因も深く関わっている。つまりパーソナリティとは生来の素質と生後の経験が結合して作る「個性」と言える。だから個体としての人間は例えば脳の構造や内臓や血管の位置などの個体差がまったくないにもかかわらず、パーソナリティに違いが生ずるのである。

しかも生来の素質と生後の経験が結合して作る「個性」ということであれば、それは両者が強く影響し合っているということになり、人格形成はこのことと深く関わってくると考えることができ、それは各年齢層において、あるいは生活部面の全てにおいての社会関係で影響を受け変動する可能性を持ち、同時にそれは逆に社会関係にも影響を与えるものであると言える。

こう考えると我々の現在の存在自体が生来のものと生後の経験の結合結果であるばかりではなく、将来あらんとするものの過程であるとも言えるのである。

人間の存在をこのように考えることも、社会福祉援助者として人間行動に係る際には必要なことではないかと思う。それは誰しも、経済的なものや社会の枠などに関係なしに人の問題処理は不可能だからである。

社会福祉援助者にも様々なパーソナリティの持ち主がいることは、こう考えると当然であり、社会福祉援助者であっても人間としての偏見や特殊な意見を持つことは不自然ではなく否定されるべき問題でもない。ただし専門的職業的立場として偏見が介入するのは、仕事を進める上では不適切であるから、自身の感情のありようを正しく認識し受け入れる「自己覚知」が求められるわけであり、それが社会福祉援助に携わる基本的条件とされるのである。

そういう意味では社会福祉援助は極めて科学的な要素を持つものといえる。ただしそれは数値を求め、それによってパーソナリティの類型を求め、正確に分類するという科学ではない。それは援助対象となる個人を「ある環境における全人的存在」として理解する科学である。

そのためにはソーシャルケースワークの場面では、対象者の問題解決に必要な事実に焦点を合わせて、それを評価しうる基礎知識が必要で、事実をつかみ、問題解決を援助してゆく技術が必要である。なぜならソーシャルケースワークにおける科学性とは、ある現象の因果関係をたどって検討することだからである。そのための具体的手法の一つがケアマネジメントであり、手法を導く根拠としてアセスメントが位置づけられる。つまりケアマネジメント技術を磨くということは、社会や人間に関する科学知識の取得、人間関係における技術の修練という意味にもなり得る。

しかしソーシャルケースワークにおける科学性と、ソーシャルケースワークの目的とは分離することはできないもので、それは人間への尊敬と愛情が前提となるものである。この前提条件が根本思想となって組み立てられ生みだされた技術であることを忘れてはならないのである。

だから社会福祉援助者には、目に見えない「人間への尊敬と愛情」というものが求められているわけで、それを持たない口先だけの援助技術は必要とされていないのである。

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