3/26に結論が出た特養の介護職員の「たん吸引」と「経管栄養の処置」における行為拡大問題。

今回の結論は口腔内のたんの吸引や経管栄養処置を「医行為」としたうえで、一定の条件下で違法性阻却として「可能となる行為の条件」が示されたものだ。しかしその内容は「吸引・経管栄養モデル事業報道の問題点。」でも示しているように、問題解決には程遠い内容である。

今回介護職員に一定条件下で認められた行為とは
1.口腔内(咽頭の手前まで)のたんの吸引
2.胃婁による経管栄養(栄養チューブ等の接続・注入開始を除く。)については以下の通り。
介護職員は、楽な体位を保持できるように姿勢の介助や見守りを行う。
介護職員は、注入終了後、微温湯を注入し、チューブ内の栄養を流し込むとともに、食後しばらく対象入所者の状態を観察する。

以上の行為のみである。

喀痰吸引について鼻や気管切開した部分は対象外とされたことについては、第1歩であり、今後それが拡大される可能性があることについて評価する向きもあるが、そもそもこれではALSの患者さんは24時間看護職員が配置されていない特養入所が不可能である。在宅では行為としては資格のないものにも認められている喀痰吸引について、施設サービスにおける行為として認める部分に差がある現状では、在宅生活者が必要に応じてスムースに施設入所に結びつかない。

経管栄養に至っては今回認められた行為について「微温湯を注入し、チューブ内の栄養を流し込む」行為が明記されたのは一歩前進であるが、それ以外の行為は、今まで認められていなかったのかと首をかしげるような内容にしか過ぎず、問題解決としてはほとんど意味がない。観察や結果報告など別に医療行為と何も関係のない行為で、今までだって行っていて問題なかった行為ではないのか首を傾げる。経管栄養中に姿勢が乱れて苦しそうにしている利用者の枕の位置をずらして良恣意を確保することがモデル事業で「注入後の頭部の状態維持」として検証されなければならないこと自体が「お笑い」の世界ではないのか?

しかもそれに加えて、今回実施できるとされた行為の実施条件も非常に煩雑な作業と膨大な記録が必要とされることが明らかになった。一つ一つの条件と、そこに発生する「必要記録」を列挙してみた。(太字下線になっている部分が新たに必要とされると考えられる記録)

まず標準的な手順のうち、「口腔内の痰の吸引」については、入所時及び状態が変化した時点において
1. 看護職員のみで実施すべきか、看護職員と介護職員とで協働して実施できるか医師が承認→医師の承認記録が必要になる

2. 当該入所者について口腔内のたんの吸引を実施する介護職員について、看護職員との連携の下、配置医が承認する。→医師の承認記録が必要になる

3. 毎朝又は当該日の第1回目の吸引実施時において、看護職員は、入所者の口腔内及び全身の状態を観察し、看護職員と介護職員の協働による実施が可能かどうか確認する。→確認記録が必要になる。しかもこれは毎日

4. 当該日の第2回目以降の実施については、承認された介護職員は、口腔内を観察した後、たんの吸引を実施するとともに、実施後に入所者の状態を観察する。吸引実施時には、以下の点に留意する。→承認された職員が実施している証明が必要になるかも?

「胃ろうによる経管栄養」については同様に
1. 看護職員のみで実施すべきか、看護職員と介護職員とで協働して実施できるか医師が承認→医師の承認記録が必要になる

2. 当該入所者について胃ろうによる経管栄養を実施する介護職員の協働による実施が可能かどうか等を医師が承認。→医師の承認記録が必要になる

3. 毎朝又は当該日の第1回目の実施時において、看護職員は、胃ろうの状態(び爛や肉芽や胃の状態など)を観察し、看護職員と介護職員の協働による実施が可能かどうか等を確認する。→確認の記録が必要になる。しかもこれは毎日

4. 看護職員は、チューブ等を胃ろうに接続し、注入を開始する。

5. 介護職員は、楽な体位を保持できるように姿勢の介助や見守りを行う。

6. 介護職員は、注入終了後、微温湯を注入し、チューブ内の栄養を流し込むとともに、食後しばらく対象入所者の状態を観察する。

これだけではない。実はこうした行為を行う以前に、これらの行為を実施できる「前提条件」が必要とされており、それにも膨大な証明記録が必要とされるのだ。しかしここまで書いただけで、かなりの量になってしまい、時間もあまりなくなった。この続きは明日書くことにしたい。

予告しておくが、今日考えただけでも、証明書類は現状よりかなり増えることになるのに、それ以上のものが前提条件に求められている。明日の記事は大変恐ろしい内容になる。(明日に続く)

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