とあるシンポジウムで会場から僕を指名した質問があった。

だいたいこの日のシンポジウムは何か異様な雰囲気だった。普通は会場から意見を求めても2〜3人がバラバラっと手を挙げる程度のことが多いのだが、この日はのっけからシンポジスト間で熱い議論が交わされ、会場の熱気も高まり、テンションも上がり、シンポジストに向けて会場から手ぐすね引いて質問を浴びせるという雰囲気であった。そんな中での問いかけである。

通所サービスの昼食提供としてジャンクフードを出すことをどう思うか?という質問である。ジャンクフード?その正確な概念があいまいなまま「それってスナック菓子のことですか?ポテトチップスを食事に出されたら僕は嫌です。」と答えたら「食事として例えばハンバーガーとか、フライドチキンとか、ミスドを出すことを想定した質問です。インスタントラーメンもありですかね。」と言われた。(何でミスドだけ店名なんじゃ、という突っ込みはしなかった。)

そこで「利用者が望むのだったら、たまには構わないんじゃないですか。」と言ったら、反論の大合唱が湧き上がった。「カロリーだけが高くて栄養素が偏っている。肥満や糖尿の人がいるのであれば不適切だ!」「心がこもってない。手抜きだ。」「食事は大切な健康の要素なのに介護サービスでその配慮がなくて良いのか。」「家ではきちんと食事できていない人がいるんですよ。せめて介護サービスを利用している時くらいきちんとした食事を提供してください!」etc.

ブヮッカモン!!何でそこまで極端に捉えるんじゃい!最初から「利用者の希望」「いつもじゃなければ」と条件をつけているじゃないかよ。

そもそも高齢者だって、たまにはマックを食べてみたいと思うかもしれない。(ちなみに北海道ではマックといえばファイターズの金子誠のことだが、ここでは大手ハンバーガーチェーンを指す;そんなこと解説はイランといってるのは誰じゃ!)特にこれから高齢期に入る人々が介護サービスを使うようになればなおさらだ。わざわざ介護サービスでそんなものを出す必要がないだろうという人がいるが、家で食べられないからサービスを使っているときには食べてみたいというケースだってあるだろうに。例えば都会の便利な場所に住んでいる人ならともかく、近くにコンビニもないような場所に住んでいる人は、マックもケンタッキーも日ごろ気軽に買って食べられるわけではない。家庭では孫がマックを食っているのに、嫁さんが気を使っておじいちゃんには焼き魚を焼いてくれているので「そっち食べたい」と言えないケースもあるのかもしれない。それもこれも、色々なことを含めた「希望」「要望」だ。それらの人々にとって、通所サービスではたまに「マックが食える」というのは立派な動機づけだろうに。

何ケ月かに1度ジャンクフードを食ったって急に病気が悪化したり、死に至るわけではあるまい。家できちんと食事できていないという理屈も笑止千万、そうであれば通所介護で週に1度か2度きちんと食事したところで問題の根本解決にはならない。もっと食生活の支援を別な角度から考える必要があり、ジャンクフードで高カロリー食を「ごくたまに」摂取することができることは栄養改善には逆に効果的かもしれないぞ。(これは屁理屈か・・。)どちらにしても、たまに通所サービスでハンバーガーを食べることを否定する理屈はあまりにも固定観念にとらわれ過ぎである。

食は単に栄養素ではないのだ。命の源ではあるが薬ではない。介護サービスも単なるルーティーンの繰り返しであってよいわけではないのだ。

たまには街で売ってるハンバーガーを食いたいな、という人がいたら、「皆さんはどうですか」「サンセ〜イ」ということになって、それじゃあ次の昼ごはんはマックを出しましょう、っていうことができるサービスの方がよッぽど血が通ったサービスである。そういうことができる方法を考えて、健康上問題のある人もなんとかたまには皆と同じ食事ができないかという観点から物事を考える方がよっぽどポジティブだ。

施設サービスの場合、全員がマックを食べたいなんてことはあり得ないし、それが献立に載ることはないのだが、それでも希望に応じて外出してハンバーガーや回転ずしや、焼肉を食べに出かける支援だって行う。「なんでも禁止」は馬鹿にでもできるが、出来る可能性を探すことは知恵のあるものにしかできない。
(ちなみに当施設に入園して始めて回転寿司を食べたと喜んでいたおばあちゃんがいた。勿論その方は対面式で注文に応じて握ってくれる寿司はいつも食べていたそうだが・・。うちの息子たちにはそちらの対面式注文寿司は食べさせたことがないように思う・・・。)

ただグループホームなどで職員の調理の手間を省くために週何回もインスタントラーメンの昼ごはんとなっているのは問題だろう。たまにはインスタントラーメンを出したって良いが、それは頻度の問題だし、ある意味常識の問題なのだ。

管理者や職員が、きちんと常識を持って、利用者の声を聞く耳を持って、その中から表出されているニーズや表出されないニーズを見極めているなら、マックやケンタッキーの食事がどうのこうのということは問題になることはあり得ない。

今日のデイは、バイタル測定を行った後に、軽く準備運動をして、その後、機能訓練の一環として街に出て散策して自分で昼食を買いましょう、って最初から計画に位置付けておれば「特別な行事」ではなくなるんでしょ。そんなことがたまにはあったってよいじゃんか。

そのシンポジウムはどうなったかって?勿論、これらのことを「丁寧な言葉」で「穏やか」に「冷静」に話しました。ちょっと凄味をきかせながら・・・。

どちらにしても僕の土日は、こんな風に叩かれたり、バトル?いや激論したりするためにあったりする。まあ打たれ強い方ではあるから良いか・・・・・。平穏な土日を手に入れるのは、まだ先の話である。

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