最近、居宅サービス計画やショートステイ計画作成の講義をする機会が増えている。その中で受講者から「居宅介護支援事業所の長短期目標に合わせて、ショートの計画も長短期目標を設定しなければならないのか?」という質問をしばしばうける。

そこで今日はあらためてショートステイプランの目標について、過去の記事に書いたことをおさらいしながら考えてみたい。

ショートステイの利用目的で一番多い理由は「介護者の休養目的」である。

こうした利用目的を「利用者自身の為になっていない利用ではないか!」と批判する人がいるが、それは二つの意味で大きな間違いである。

まず一つには、もともとショートステイは生活介護、療養介護の両者とも、基準省令においてその目的として家族の休養を認めているからである。例えば短期入所生活介護であれば、厚生省令37号第120条において「指定居宅サービスに該当する短期入所生活介護(以下「指定短期入所生活介護」という。)の事業は、要介護状態となった場合においても、その利用者が可能な限りその居宅において、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話及び機能訓練を行うことにより、利用者の心身の機能の維持並びに利用者の家族の身体的及び精神的負担の軽減を図るものでなければならない。」としている。ここで明確に「利用者の家族の身体的及び精神的負担の軽減を図るもの」という目的が書かれており、このことを否定できないのである。

もう一つには、家族(介護者)の休養は、単に休養することにとどまらず、それは長期的には在宅で要介護者を支援するために必要な「スゥイッチオフ」であり、利用者が在宅での生活が継続できるという利用者自身の目的にも繋がるものなのである。

だから利用目的としての「介護者である家族の休養」は決して否定されるべきではない。

しかしショートプランの目標を「介護者の休養ができる」ということにするのは問題である。なぜなら利用目的がそうであっても、介護サービス計画は事業者と利用者の契約上の約束事で、介護者である家族とは言え、契約当事者ではない第3者の目標を「利用計画」上の目標とするのは契約概念にそぐわないからである。

ところで計画目標については、介護保険施行規則第18条において「提供する指定居宅サービスの目標」という文言となっており、このことは法律上「提供する居宅サービスの利用者目標」でも「提供する居宅サービスの事業者目標」でも、どちらでも良いという意味になる。

しかしケアプランの中で両者の目標が混在していては混乱のもとになり、目標の意味が不明になるため、少なくともどちらかに統一した目標設定が必要になる。しかもこの目標については、平成15年の介護支援専門員テキストやケアプラン記入の手引きの変更の際に、ICF方に基づいたポジティブプランの考え方が導入されたことにより、長・短期目標が「事業者の目標(行動計画目標)」から「利用者の目標」という形へと視点変更されている。
(※そうしなければ不適切という意味ではない。)

よって多くの介護支援専門員が利用者目標として計画を作成していると考えられ、それに沿ったサービス計画立案が求められる居宅サービス事業者の計画目標も同様に「利用者目標」とすることが必要と考えられる。

だからショートの利用目的が「介護者の休養」である場合でも、居宅サービス計画やショート計画の目標は「介護者が休養できることにより、今後利用者の生活上、どのようなプラス効果を期待するものか」あるいは「介護者の休養目的にショート利用することにより、利用者のどのような生活づくりを目指すのか」ということを具体化した目標でなければならない。

つまり単にショートの利用目的が「介護者の休養目的」であれば、ショート事業者は、利用する一定期間事故なく安全に利用者を「滞在させておけばよい」ということで終わってしまう。そこでは利用者の「豊かな暮らし」という視点など二の次となってしまうであろう。そんな介護サービスはあり得ない。

ただし居宅サービス計画については、目標全体が利用者のためにショート利用目的が明らかにされる必要があるもので、長期目標がショート利用することによって生活課題のどの部分に手当がされ、利用者の暮らしがどう変わるか、という観点から、家族が在宅支援を続けてそこに手を差し伸べ続けることができるようにされておれば、そこに繋がる短期目標が「家族が休養できる」ということはあり得るであろう。ただしそれは長期目標がきちんと「利用者の暮らしがこのようになる」という前段の目標という意味で、短期目標がそうでも、目標全体としてはきちんと利用者目標となっている必要があるものである。

こうした居宅サービス計画の目標に沿うショートステイ事業所の計画も、単純にショートステイを利用させて家族が休養できるという目標にはなり得ない。

特にショート利用の際に多い苦情の中に「ショートを利用したことで利用者の機能が衰えた。」という家族の声が良く聞かれる。家の中では転びながらも、なんとか伝い歩きをしていたのに、ショート利用時に安全性だけに焦点を当てられて歩行機会が奪われ車椅子に頼った生活を送っていたために、下肢筋力が衰えてしまった、あるいは歩行意欲が無くなった、というケースである。

この場合、家族が休養目的で利用したショートから、利用者が帰宅した後、ショート利用前より、家族の介護負担は、利用者が「歩けなくなった」ことにより増えてしまうことになる。休養が介護負担を増やしてしまっては意味がないだろう。

つまり利用者の休養が必要であれば、それは在宅介護に関わる家族には、何らかの身体的・精神的負担がかかっているという意味で、家族が在宅介護を継続して利用者が在宅生活を続けられることを阻害する何らかのリスクを持っているという意味でもあるから、そのリスクをできるだけ軽減して、今より在宅介護が楽に続けられるようなショートステイ事業所としての専門的見地からのサービス提供の視点があって当然で、そのことをショート利用計画の目標にすべきであろうと僕は主張している。

(明日に続く)
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