全国の様々な機関から依頼される講演のテーマ決定。僕の場合は、この方法について大きく分けて2つのパターンがある。

一つには、僕が日ごろから得意としているテーマがあって、その中から選んでもらうパターン。

もう一つは、まったくそうしたことに関係なく主催者から与えられたテーマで話をする場合である。

前者なら、例えば「看取り介護」「認知症高齢者のケア」「介護職員の資質」「介護サービスにおけるコンプライアンス」「施設やショートのケアプラン作成方法」などである。これらは過去に同様のテーマで話をしているので、ベースとなるものがあって、依頼された主催者の希望や受講対象者の属性などでそれにバリエーションを加えたり、方向性を少し変えるなどで対応することが多い。ただ講演内容は時の流れで必然的に変えなければならない内容も含まれるので、テーマが同じでも、話をする方向性や内容が全く違ってくることもある。それでもベースがあるテーマは、一応自分の中で消化できており安定した話ができるということは言えるし、話のつぼを押さえやすい、ということもいえるだろう。だから講演内容の構成や準備も比較的短時間で済む。

しかし後者は、まったく新しい講演内容となるので、最初の構成から考えることになり、当然準備には時間がかかるし、依頼されたテーマを受けた時点では全く構想が浮かんでおらず、何を話すことになるのか自分でも予測がつかないことも多い。また最初に話そうと思っていた内容と、実際に考えた末に決めた内容が全く違うものになることもある。例えば、制度改正や報酬改定時に、そのことに関連した新ルール等の問題点や今後の課題等を依頼される場合が、これにあたるだろう。ケアマネジメントに関するものも、様々なテーマが考えられ、これに該当することが多い。

ただ依頼されたすべてのテーマを引き受けることができるかといえば、決してそうではなく「それは僕以外の方に依頼したほうが良いでしょう」というふうにお断りすることもある。

例えば「施設経営について」というテーマをいただいても僕以外の他の方で詳しい方が多いだろうし、そこに財務や経理が絡んでくる問題になると、僕の出る幕ではない。また収益率のアップという内容も僕には不向きで、もっと別な専門家がいるだろう。「顧客確保に繋がる事業運営」なんていうのもお断りするテーマの一つだ。自分なりの考えを話すことは可能でも、テンションが上がらないからだ。

費用算定ルールということになれば、これは算定当事者たる施設・事業経営者として詳しくて当然だが、それだけで講演テーマにはならないだろうし、テーマになったとしても「面白くない」と思うので、そういったテーマもあまり受けることはない。そういう場合は、むしろ行政の担当者にお願いしたほうが良いと思う。彼らの中には、面白くなくて、眠くなる講演の専門家も多いのだから・・・。

つまり時間と手間がかかる新たなテーマの講演を受ける場合は「自分がその内容について話すことが可能だろうな」という予測のほかに「それって面白そうだな」という動機づけが別に必要なのである。自分が興味がわかないテーマを話しても、受講者の方に伝わるわけがないし、意味のない主観の伝達に終わってしまうのが関の山だと思うのである。そもそも自身のテンションが上がらないと、講演内容を考えて構成組みしてファイルを作ることは不可能だ。たった90分や120分の講演であっても、そのための事前準備というのはかなりのエネルギーと時間を消費するものだからである。

この点、各種研修会で厚生労働省のお役人が行う講演・講義などは、誰かが作ったパワーポイントファイルを使いまわして、それを説明するだけのものも多くて楽だろうな、と思ったりする。まあ行政説明だから、あまり主観が入ってもまずいし、ただ単にルール説明だけだから、そういう方法も仕方ないんだろうが、どこで誰の話を聞いても同じ内容の講演なら、高い金を払って「お偉いさん」を呼ぶ必要もないのではないかと思ったりする。

4月と5月にも講演予定が入っているが、4月は前者のパターンで、札幌の法人研修で職員向けに「介護施設における看取り介護の現状と課題〜最期の瞬間までその人らしく生きるということ」というテーマである。看取り介護に関する講演は数多く行っているので、ベースは十分だが、今回はこれに加えて、先に決まった特養での介護職員への医療行為の一部解禁の問題点にも触れる必要があるだろうし、QODという考え方も加えたいと思っている。何よりも同研修では、介護職員の皆さんが抱く不安「夜間は看護師がいないので医療処置ができないから看取り会議は無理ではないか?」「自分の夜勤のときに入居者様が亡くなったらどうしていいか判らずこわい」などという意見や疑問に答える内容にしたいと思う。

5月は東京都北区ケアマネジャーの会から基調講演を依頼されたが、それは後者のパターンで、同会から頂いたテーマは「自立とは何かを考える〜よく生き、よく死ぬということ」というものである。これは面白いと思って即、承諾したが、だからと言って「何を話そうか」ということが決まっているわけではなく、今現在は漠然としたものが、霧の向こう側にかすかに見え隠れしている状態に近い。これからどんな形になるのか自分でも予測がつかないが、テンションが上がるテーマなので、期日までにはそれなりの形が作れるだろう。

ただその内容が受講者の皆さんの支持を得られるか、日々の業務に少しでも役に立つのかは予測がつかない。ただ自分としては、自分が日頃考えていることをベースに一生懸命それを伝える努力をするだけである。

少なくとも現場で頑張っている志の高い専門職の皆さんの勇気に結びつく内容にしたいとは考えている。

なお5/18に講演後にはフリー参加を募るOFF会が予定されているそうである。僕は翌日午前の飛行機で北海道に帰るだけなので、17日夜は参加する皆さんと、大いに懇親を深めたい。

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