介護保険は地域保険である。このため地域ごとに保険料単価が異なり、保険者独自の横出しサービス、上乗せサービス、限定的ではあるが地域単価の設定などが認められている。だから基本部分は国が定めたルールに則ったものになるが、地域ルールは広く認められている。このこと自体は悪いことではない。地域事情に応じた保険給付のあり方を住民本位の視点から考える必要があるケースが考えられるからである。

しかし現行の地域ルールの問題点は、訪問介護における生活援助(家事援助)の算定条件や身体介護としての散歩を認めるかという問題で顕著に現われている傾向でわかるように、地域実態によって柔軟な判断を認めるための地域ルールが、極端に狭く解釈され、実質、地域ごとの給付制限として機能させられている点である。

もともと社会保障は、地域別にバラバラに成立するものではなく、国家をその政策主体として成立するものなので、ナショナルな規模のもので、同時にナショナルな画一性を性格として備えざるを得ない。

けれども「国民生活」というものを考えると、その概念上の問題はともかく、生活の具体性は地域の範囲までの生活単位や生活手段として存在するもので、ナショナルな社会保障も地域性をもつ生活の一つの手段としてあらわれ、それゆえにナショナルなものと共に、地域的なもの、つまりシビルな基準を鑑みる必要があり、これが本来の地方行政の裁量権である。ここを間違えてどうするのか?

ナショナルな生活保障手段とシビルな生活保障手段との相互関係は、ナショナルミニマムとシビルミニマムの関係に象徴されており、シビルミニマムはナショナルミニマムと無関係あるいは、それを無視した生活保障手段の地域的特性があるものではない。またシビルミニマムがナショナルミニマム以下であることもあり得ず、それは常にナショナルミニマムに上乗せされるものとして提起され構想されてきた。つまりシビルミニマムはナショナルミニマムより高い水準にあるものなのだ。介護保険制度におけるローカルルールは、この原則から言えば逆転現象を生じているといえる。政策基本を知らないローカル役人の裁量の結果である。

またナショナルミニマムとシビルミニマムとの違いは、前述したベースとその上乗せということのほかに次のような意味がある。

生活保障手段の中で、生活保護制度や所得保障の制度は、ナショナルな制度として打ち立てられてしまえば地域性は失われざるを得ない。他方、共同生活手段としての物的なもの、例えば公園や公共施設は最低の基準面積等が国によって決められたとしても、そこで確保される公園や公共施設は地域の財であり、決して地域性を失うことはない。

つまり社会福祉・社会保障の立法・制度などはナショナルな性格をもつものであるが、生活保障のための社会福祉施設を含む社会福祉機関・環境整備などはシビルな性格をもったもので、現代の社会福祉がナショナルミニマムをベースにシビルミニマムを上乗せするという形において、またナショナルな性格の保障手段にシビルな性格の保障手段を組み合わせるものである限りにおいて、今日のような経済不況が長期化して、地域財源がより厳しくなればシビルミニマムがナショナルミニマムにひきつけられるような状態に陥ることはあり得るのである。しかしそれとてナショナルミニマム以下の基準に位置するものではない。ここを間違えてしまえば地域行政の役割は極端に低下すると言えるであろう。

在宅福祉に絞ってこの問題を考えると、かつて我が国のこの部分の政策は、家族・近隣・地域集団の社会福祉機能の復元と新たな機能創出に力点が置かれていたものと、社会福祉の専門事業・専門サービスの整備・充実に力点を置いたものとがあった。この両者はどちらも在宅福祉を充実させるには必要なものであると考えるが、しかしこれまでの我が国の実情としては、専門的な社会福祉が果たさなければならない機能をも、家族・地域集団に肩代わりさせてきたという歴史がある。これが介護保険制度の創設により、少しだけ力点が替り、公的介護サービスにより家族の肩代わりが解消される方向へと向いたという意味で、この制度を評価する必要がある。

介護保険制度は2000年4月にスタートしているから、いよいよ今日から11年目に入る。満年齢に例えればまだ10歳の制度には問題点や改善すべき点は多いが、この制度をなくしてしまった後のグランドデザインが今のところ全くない以上、この制度をどのように発展存続させていくのかが我々市民も含めた国全体の課題である。超高齢社会の「超」は人類がかつて経験したことのない未曾有の状態であるのだ。だからといってこの問題を財政問題からしか見ないのでは、制度は形骸化するしか道はないだろう。

そういう意味から地域保険である介護保険の運用を、シビルの視点から考える地域行政である必要が今以上にあるということを考えて行かねばならない。

これから10年後、この制度はまだ続いているだろうが、この制度による地域福祉の地域間格差は今以上に広がっていくであろうと想像している。それは良い方向に向かっての差なのか、悪い方向に向かっての差なのか、ここが問題である。

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