我が国の戦後の社会福祉施策の核となった社会福祉3法はGHQの占領下であった昭和26年までに制定された。(※昭和22年・児童福祉法、昭和24年・身体障害者福祉法、昭和26年・社会福祉事業法:ただし平成12年にこの法律は『社会福祉法』と呼称変更されている。)

その後昭和39年までに6法体制となり(昭和35年・精神薄弱者福祉法:ただし平成11年にこの法律は『知的障害者福祉法』に呼称変更されている。昭和38年・老人福祉法、昭和39年・母子及び寡婦福祉法)長くこの体制が続いた後、昭和57年の老人保健法、昭和59年の社会福祉・医療事業団法の制定により社会福祉8法体制となり、平成2年に、この8法改正が行われるなどの一部改正を経てきた。

つまり我が国の社会福祉制度は、法律の追加制定や改定はあったものの基本的な構造はGHQの占領下に構築され、それがほぼ引き継がれてきたわけである。

ところが平成12年4月1日施行の介護保険制度は、これら戦後処理の最中にできあがった我が国の社会福祉制度基礎構造の大改革という意味があり、戦後初の抜本改正と言ってよく、それは社会保険方式を取り入れた措置から契約への転換という形で具体化された。

そして介護保険制度によって措置施設から契約施設に変った介護老人福祉施設(特養)においては、利用者の費用負担も応能負担から応益負担へ変更され、利用者1割負担が導入された。(旧措置者の軽減経過措置を除く)

さらに平成17年10月のルール改訂において居住費と食費が給付費から外され自己負担化とされることによって利用者負担はさらに増えた。これに伴い費用負担が増加して施設利用料金の支払いが困難となる利用者が出現しないように、非課税世帯などの低所得者対策として補足給付(特定入所者介護サービス費)が新設され利用者負担の軽減が図られた。

補足給付は3段階に分かれており、

1.第1段階は生活保護受給者及び老齢福祉年金受給者で世帯全員が市民税非課税、
2.第2段階は世帯全員が市民税非課税で、かつ、本人の課税年金収入+合計所得金額が80万円以下
3.第3段階は世帯全員が市民税非課税で、かつ、第2段階に非該当

とされており、利用者に対してはそれぞれに段階区分に応じた定額の食費と居住費の費用負担額上限が定められており、居住費や食費について、国が定めた標準費用と利用者負担額の差額を補足給付(特定入所者介護サービス費)として施設に支払うものである。そして第4段階以上の利用者はこの制度の中での減免はない。

当施設の本年1月末現在における利用者100名の費用負担状況をみると、84名が減免対象者であり、負担段階の内訳は第1段階9名、第2段階63名、第3段階12名となっている。

減免対象外の利用者はわずか16名で8割以上の利用者が減免対象者であるという意味にもなる。

ところで第2段階以下の利用者が75%という意味は、本人の課税年金収入+合計所得金額が80万円以下の利用者が75%という意味で、この数字は特養が重介護者と女性の入居比率が高いという特徴から「課税年金収入」に該当しない障害年金や遺族年金受給者などを受給している利用者が多いことを表している。その年収額は課税年金と比べ低くなっている。

また別の面から、この費用負担と経済状況について考えると、例えば高齢者夫婦世帯のどちらかが施設入所した場合、自宅は一方の生活場所として存在しているわけであり、世帯単位の収入で生活を維持していたことを鑑みると、入所した利用者の自宅の居住費用負担が0になるわけではなく、施設入所に伴う居住費負担は重くのしかかり、それは自宅に残って生活する者の経済的破綻を生む恐れがある、と考えられる。

減免措置はそうした意味でも施設利用者だけではなく、その世帯を支える意味を持つと言えるのである。

こうした現況から実際に施設サービス費にかけることができる費用を収入実態から考えた時、減免制度がなくなれば行き場を失う高齢者が必ず出てくるものと思え、補足給付の支給は非常に重要な施策となっていることがわかる。

そういう意味において減免によって現実的に生活の支障が出ない程度の負担金となっているのか、減免制度が機能していないため生活破綻や強制退所に繋がるケースはないのか、などの検証は継続して必要だろう。

最後に蛇足として付け加えておくが、介護保険制度は社会保険だから社会福祉でないという変な有識者がいるが(個人的には彼は有識者ではなく、単なる時代遅れの偏屈な学者でしかないと僕は思っている)、社会保障構造改革議論の中でも、高齢者福祉サービスは社会福祉であって、介護保険制度は社会保険方式を取り入れた新たな高齢者福祉制度であることは明らかにされており、これをその他の社会保険と同様に語り、福祉ではないとするのは国民に対する欺瞞以外のなにものでもない。

低所得者対策としての減免制度があることがそれを証明するものでもある。

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