先週、老施協研修での講師役を務めるために上京した折、僕はある事業所を訪ねる予定を立てていた。その経緯は2/24の記事に書いたため重複するので省略するが、ともかく今回の上京の目的の一つが、この事業所を訪ねることであった。

その事業所が、どのようなサービスを行っているのか、そのことを僕は事前に知っていたわけではない。きっかけは、この事業所の所長さんが1/31に埼玉大学で僕が行った講演を受講されていたことである。講演後会場で始めてお会いしたが、なにかしら魅力のある人物と感じ妙に印象に残った覚えがある。その後、メールで連絡をいただいた瞬間に、この人と是非もう一度逢って話をしたいと思ったのである。

その事業所とは、東京メトロ千代田線の根津駅から歩いて5分もかからない住宅街にある「ユアハウス弥生」という小規模多機能型居宅介護事業所である。

小規模多機能型居宅介護については、僕なりに考え方を持っていたが(参照:小規模多機能型居宅介護関連記事一覧)、実際にサービス提供している事業所をみて、そこで職員の方にお話を伺ったことがないので、この機会に是非勉強したいという気持ちがあった。

そして、この人が運営する事業所なら「間違いない」という確信に似た気持ちがあった。その人とはユアハウス弥生の所長・飯塚 裕久氏である。当該事業者はもともと、氏の亡くなられたおばあさんがこの地域で50年以上も前から在宅での看取り介護支援を行ってきた歴史のある「ケアワーク弥生」を本体としている事業所である。

結論から先に書く。期待以上の素晴らしい事業者であった。

まず働いている職員の意識が高い。しかしそれは背伸びした意識ではなく笑顔の中に自然に表現される「嫌味のない意識」であると僕は感じた。管理者を中心にして日頃から小規模多機能居宅介護が在宅生活を支えるために何をすべきかをきちんと意識して取り組んでいる証拠であろう。もちろん当該事業者の歴史的成り立ちから、在宅での看取りまで支援できる体制になっていることは言うまでもないが、何より小規模多機能型居宅介護という新たなサービスを住民の視点から考えて何が求められているかを模索しようとしている姿勢が印象深かった。

飯塚氏は言う「通いを中心にしたサービスだからといって、契約した瞬間から利用者に通いサービスを利用するという動機付けが生まれ、スムースにサービス利用できるなんてことにはならない。」

どのように地域の中で暮らし続けられるか、利用者と家族を支えるために氏は「3ケ月時間をください」とお願いするという。その中で氏は徹底的に関係作りに時間を費やす。必要であれば1日に何回も自宅を訪問する。そして信頼関係が生まれてごく自然に利用者が「ユアハウス弥生」に通ってくることを「あせらず」待つ。その期間は「3月で失敗したケースはない」という。この自信と実績は、氏とスタッフの地域住民に対する信頼と愛情によって成り立っているように僕には思えた。

また氏は「定額報酬の中のサービスなんだから、必要なときに必要な支援が出来なければ信頼感は生まれない」という。具体的には訪問回数の定まっていない訪問サービスも、必要なら1日何度でも、夜でも訪問できる体制を敷いている。夜間宿泊者が上限いっぱいで泊れないときに、介護者が急に何らかの事情で夜間介護が出来なくなったとき「どうしても宿泊が出来ない場合は、僕が自宅に訪問して泊って支援することもありました。」とさらりと言われる。それもごく自然に・・・。

話を聞いてわかったことであるが、小規模多機能型居宅サービスの「通いサービス」は保険内の通所介護や通所リハビリとは根本的に異なるものであるということだ。それは単にサービス提供時間等の縛りがないというだけではなく全く別のサービスと考えたほうが良い。少なくとも「ユアハウス弥生」を見た限り、その通いサービスとは、地域の中の高齢者の憩いの場、安心して過ごせるサロンである。そしてそのサロンは事業所内に固定されているものではなく、時には地域の中の喫茶店に場所を移したり、地域の中で利用者が「出かけたい場所」にところを変えたりしているのだ。通いサービスの使える時間も早朝6時から夜10時までと幅が広い。

特別な日課がなくても、皆が安心して集える場所で、自然に心と体が元気になる場所に感じた。個別リハビリテーションとか個別機能訓練計画などという概念はここでは特別必要ないんだろうと思った。

「訪問サービス」も単にパッケージサービスの中の訪問介護ではないと強く印象付けられた。それは信頼できる事業者職員の顔を見せることで、いつでも安心して支援を受けられるという「気持ち」を保障をしたり、利用者には気づかれないように遠くからそっと自宅で安全に過ごせているかを見守ったり、本当に地域の中で高齢者が暮らしを続けられるための個別性の高い支援がされているものだということがよくわかった。「パッケージなんだから、その中でできないことがあって生活が支えられないのではまずいでしょう。」という意味のことを飯塚氏は言われる。まさに「安心感」というものまで含めてサービス提供しているのである。

そのためには、利用者のみならず地域の中で家族を巻き込んで協力しあったり、家族への支援もキーポイントとなると思えるが、飯塚さんの事業所では、このため家族会の組織化と定期研修がしっかり行われており、それは小規模多機能型居宅介護の利用者家族会にとどまらず、自社の居宅介護支援事業所や訪問介護の利用者の家族会という形で広がりを見せている。施設利用者の家族会はよく聞くが、居宅介護支援や訪問介護利用者の家族会活動は珍しいのではないか?しかしよく考えると、実際に自宅で利用者を支援する家族こそ、こうした活動の組織化により必要な情報を得たり、介護者同士が話し合える機会を持つことは重要だろうと感じた。

そして氏は、おばあさんから伝えられた思いを、彼らよりもっと若い世代に伝えていくことも使命であるというような意味の話もしておられた。その通りであり、社会福祉援助とは自分が誰かより優れていることはさほど重要なことではなく、この国の福祉援助の質が全体で引き上げられ、僕らではなくとも誰もがそれを提供できることが大事で、国全体、究極的にはこの世のすべての人々の幸せが実現できることが目的なのだ。(参照:出てこい地球人

氏は「イケメン管理者」と自称されているが、長髪とひげ面の風貌は、初対面の人には福祉関係者と見られることはまずないと思う。しかしとても優しい目をしており、表情に魅力のある人で、真剣な話をしている最中にも、ときおりユーモラスな話題をはさみ、その際にとても素敵な笑顔を見せてくれる。知性の中に光るユーモアがあるということは、この人物の心に余裕があって、愛情があふれている証拠だろう。特筆すべきは、彼が人の話を聞くときの真剣な表情である。相手の顔をまっすぐに見つめて話を聞いている表情は真剣そのものだ、その表情が一瞬先にははじけるような笑顔に変わるのだから、人を惹きつけ、人がついてくるのは当然だと思った。

飯塚さんに出会うきっかけを作ってくれた「ゆい法務事務所」の田原代表も、今回ご一緒させていただいたが、この人もとても愛情あふれた素敵な人で、彼は行政書士・社会福祉士会・介護支援専門員という3つの資格をもって居宅介護支援にも関わっているが、認知症利用者の後見人を務める際の考え方はぜひ皆さんにも知っていただきたい。(参照:田原さんのブログ・家賃の攻防

僕の眼前で、二人が介護サービスについて熱く語られている姿はとても「美しい姿」であった。その会話を聞きながら自然と楽しくなってしまった。僕よりずっと若いお二人がこれからもこの国の福祉を作っていってくれるだろう。

僕が将来、認知症になったとき、田原さんに成年後見人になってもらいながら、飯塚さんの事業所でサービスを受けたいと思った。そのためには引越ししなければならないけれど・・・。

介護・福祉情報掲示板(表板)

(↓1日1回プチッと押してね。よろしくお願いします!!)
人気blogランキングへ

にほんブログ村 介護ブログ

FC2 Blog Ranking
(↑上のそれぞれのアドレスをクリックすれば、このブログの現在のランキングがわかります。)