今週に入って北海道は冷蔵室になったようだ。

氷点下30度以下の地域もある。ここ登別は道南で、さほど気温は下がらないのであるが、ここ数日は日中の最高気温でも氷点下5度にも達せず、それ以下である。夜間は氷点下20度近くに下がってしまっている。(気温は市内でも地区によって多少の差がある。)

道外の方で氷点下の気温の経験がない人に、その様子をどう伝えるかは難しいが、例えば氷点下15度くらいで、車のエンジンをかけてすぐに運転しようとすると、ハンドルを持つ手がピリッとした痛みを感じて素手ではしっかりハンドルを握れないということもある。当然エンジンは事前にかけて窓ガラスの氷をとかさないと前がみえないし、車内を暖めてからではないと安全走行はできない。

氷点下30度以下の地域では冷蔵庫は物を凍結させないための温かい箱である。このほうが分かりやすいだろうか・・・。

子供のころ、僕が住んでいた下川鉱山というところでは、電話が普及しておらず全山放送(三菱金属という一つの会社でできていた街だから、街全体への放送が常識だった:参照:失われた街の残像)で必要な情報がアナウンスされていたが、それ以外に冬場には面白い情報伝達方法があった。

朝6:00のNHKの天気予報の際発表される、その日の下川町の最低気温が氷点下20度以下の日は小中学校が1時間遅れ、氷点下25度以下の日は午前中休校であったのだ。だから寒い日はそれなりに嬉しかったものであるが、この年になると寒い日が良いと思うことはほとんどない。

ところで寒くなれば鍋が美味しい。こればかりは寒い日の方がよい。ということで我が施設でも毎月様々な「郷土鍋の日」を作って、利用者の皆さんに喜ばれているが、いくら煮込んでも嚥下機能などが低下している人は、そのままの食材で食べられない人もいる。

そのため刻めば食べられる人用に、別に刻み鍋を作ったりしているが、それも野菜の繊維などが口に残って食べられない人は味わうことができず、やむを得ず食材で食べられるものだけを「鍋のスープ」で煮込んだり、普通の鍋から取り分けたりして提供するのであるが、時によっては、その中身が豆腐だけで、こりゃ鍋じゃなく、単なる「湯豆腐だろ」と突っ込みをいれたくなる状態となることもあった。

ということで嚥下困難の方にも、鍋をできるだけ味わっていただきたいということで工夫してできたのが「鍋用ソフト食」(画像)である。

鍋用ソフト食
それぞれ本物の食材をミキサーにかけて豆腐などのつなぎを使って柔らかく固めたものであり、画像は「小松菜・じゃがいも・さつまいも・人参」である。臭みもなく食材の風味や味もしっかりあって、一般の方が食べてもおいしいものだ。

これに例えばメイン具材の魚や肉のソフト食を加えたり、煮込めばそのまま食べられる食材を加えたりして立派なソフト鍋として食卓に出せるものになる。当然、器に盛り切りではなく、土鍋から取り分けて食べることになる。

こうすることで、嚥下機能が低下して「刻み食」の摂取も難しい人であっても、鍋を楽しめる。これも想像力と創造力がないとできない方法だろうと思う。

ただし問題は、こうした工夫をするだけでは解決せず、結果として「美味しい」と喜ばれなければ食事提供の方法としては失敗だということだ。これは食事だけに限らず、介護サービスの現場では、努力して工夫をしても結果が利用者の満足に繋がらねば何の意味もない、という一面があることも忘れてはいけない。

見た目に美しく、食べやすいが「まずい」ソフト食では、それは提供側の自己満足に過ぎなくなってしまうので栄養士をはじめとした調理関係者は、常に自分の舌で味わって、香りを確認して、人が食べて喜ぶような「食事」になっているかを確認していないとならない。そうしないと、どんなに工夫した結果であっても「餌」になってしまうことを肝に銘じておく必要がある。

ただし最初から結果を求めるのは酷である、という面はあり、たゆまない努力の結果が先にある、という考え方も必要だが、現にそれを食べている人、現にサービスを受けている人が常にサービスの現場には存在し、その人々は自ら「実験台」になることを望んでいるわけではない、という視点もなくてはならないだろう。

つまり事業者側からいえば、結果に結びつくための過程は大事で、その中で努力や研さんを重ねる取組は大事だし、事業経営者はそういう努力をきちんと評価してやらねばならないが、同時に利用者にとっては結果がすべてで、頑張っているということはあまり意味がないもので、頑張っていても貧困なサービスしか提供されなくては困るのだから、そういう意味からいえば事業経営者は常に結果に基づくアウトカム評価という視点が必要とされるのであり、頑張っても結果が出ない、ということに対する責任が問われるということになる。

ここが難しいところである。

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