先日、表の掲示板で北海道内のケアハウス(特定施設)の職員から実地指導を受けた結果の相談があった。

その内容とは、行政側の指導担当者から「ケアハウスが特定施設をとっている以上、介護保険サービスを利用したいといったら、個人契約型の外部介護保険サービスを利用させるのではなく、特定施設の契約をして利用しなければいけないのではないか?」と指摘されたというのである。

つまり当該ケアハウスは、特定施設の指定を受け、特定施設としてサービス提供ができるケアハウスではあるが、利用者の希望で「自分はケアハウスとしてのサービスは受けるが、特定施設としてのサービスは必要なく、外部の居宅サービスを個人契約の介護保険利用で受けたい」という希望がある場合に、これを認めて、当該利用者に対する特定施設の費用を算定せず、当該利用者は個人契約型で外部の介護サービスを利用していたものであるが、これが「特定施設」の指定を受けている以上は不適切で、個人契約型の外部サービス利用は認められず「特定施設としてのサービス提供をせよ」と指導されたという意味である。

しかしこれは基準省令を理解している人なら、誰もが「間違った指導」であると分かる問題である。

特定施設の運営基準等を定めた「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成十一年三月三十一日厚生省令第三十七号)」の第百七十九条2項において

「指定特定施設入居者生活介護事業者は、入居者が指定特定施設入居者生活介護に代えて当該指定特定施設入居者生活介護事業者以外の者が提供する介護サービスを利用することを妨げてはならない。」と定められている。

つまりあくまで指定は指定として、そこに住まう利用者の暮らしのあり方をよりよい方法で向上せせるという観点から「介護サービス部分に特化した特定施設サービス」については、当該施設利用者の選択の余地があって、特定施設サービスを利用せずに、個人で居宅サービスを別途利用する権利を保障し、特定施設がこの権利行使を「阻害してはならない」としているもので、特定施設は利用者の外部サービス利用を「妨げてはならない。」のである。

よって本来の実地指導においては、利用者が希望する場合に「指定特定施設入居者生活介護に代えて当該指定特定施設入居者生活介護事業者以外の者が提供する介護サービスを利用することを妨げていないか」を指導監督の視点としてチェックするものであり、妨げている状態があれば改善指導をするのが行政職である指導担当者の役割である。

ところが、当該ケースの指導担当者は、基準省令とはまったく逆の「妨げるように」と指導しているのである。

指導担当者として施設やサービス事業所に乗り込んでくる人間が、基本法令も理解していないのは、まったくもって理解できないし、間が抜けているにもほどがある。「運営指導に出る前に基本の勉強をし直して来い!」と言いたいところであるが、同時に指導を受ける側にも問題があると思う。

行政指導担当者とは所詮、サービス事業に関しては素人なのだ。法令理解がなされていない担当者は論外であると言っても、論外な指導に反論できないサービス事業経営者や事業担当者も問題なのだ。

なぜなら、それは自ら提供しているサービスの基本原則に関するものであるのだから、その範囲の法令等に関しては、誰よりも「サービスを提供する専門家」として精通しておらねばならないからである。

そういう基本法令を理解していないと、誤って法を犯し、取り返しのつかない事態に陥るというリスクを抱えざるを得ない。それは事業経営にとって致命的な問題になりかねないのである。

行政の少し知識の足りない「指導担当者」が運営指導を行い、基本原則をまったく理解していない「間抜けな指導」を行わないとは限らないのである。さほど行政職というものを頭から信用してはならないのである。

そうしたおかしな指導を受けた際に、サービス提供の専門家として、きちんと「違うという根拠」を示す必要と責任が我々にもあると考えるべきである。

なにより税金と保険料で運営される「介護サービス事業」においては、国民から「法律は守って当たり前で、それは目標にさえならない」という厳しい目が注がれていることを考えると、法令遵守の基本は、まず法律は何を定め、何を規定し、サービス事業にどのような最低基準が求められているのかを、事業経営者をはじめとしたサービス従事者全体で知る努力をすべきではないだろうか。

実地指導とは、お上に事業者がひれ伏し、ひたすら恭順するものではなく、行政指導の専門家である指導担当者と、介護サービスの専門家である現場の担当者が、それぞれお互いの知識と技術に基づいて議論する場でもある。

特に介護サービス現場で、我々が実践しているサービスの質に関しては「利用者の暮らし」を守るためのものなのだから、おかしな行政指導とは、時に戦う必要もあるのだという覚悟をもつことも必要だろう。

介護・福祉情報掲示板(表板)

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