現在、認知症を予防するワクチンはこの世に存在しない。
※参照:認知症ワクチンは10年以内にできるか

厚生労働省は我が国において、アルツハイマー型認知症予防ワクチンを10年以内に開発すると言うが、10年以内にできると狼煙を挙げてから既に5年以上経っている。

昨年ある研修会で、厚生労働省の関係者の方とお逢いした際に「認知症ワクチンはあと何年でできるのですか?」と質問したら、その時も「10年以内にはできる予定です。」と言われた。引き算がまったく行われていないのである・・・。何年たっても「10年以内に開発できる」とされる状況に対して、現在関係者の間では「永遠の10年」という表現で揶揄されることがある。

認知症の予防薬は、アルツハイマー型認知症の原因が脳内にベータアミロイドというたんぱく質が分解されずに溜まって脳神経を圧迫することによって血流が阻害され、脳細胞が壊死して、そのため脳委縮することが原因であるという「アミロイド仮説」に基づいて予防法が考えられている。すなわちベータアミロイドが分解されずに貯まる際に、これを攻撃して貯めない、という方法を模索しながら開発されているものだが、この「アミロイド仮説」自体を否定する説も出てきて、予防薬開発の見込みははなはだ怪しい状態になってきている。険しい道を人類は乗り越えることができるのだろうか?

臨床場面では認知症の方々の意欲の低下や、うつ状態・不安に対して、脳卒中後遺症に対する薬を投与して、その症状を改善する、という方法で投薬が行われることも多い。しかし認知症そのものに対応する薬として、我が国で認可され使われているのは「アリセプト」という名称の薬だけである。

しかし、この薬は認知症を予防したり、認知症が治るという効果をもたらすものではない。その効果は一時的に症状を軽減させたり、認知症の進行を遅らせる、というものである。

もちろん効果がある症例と、まったく効果がない症例があるわけだが、効果があり進行を遅らせることができるということが可能なケースにおいては、それなりに意味がある。進行を遅らせることができることによって、急激に認知症が悪化しないのであるから、在宅ケアができる期間も長くなるかもしれないし、症状悪化で介護負担が一気に増えないのであるから、家族の負担軽減にも関係してくる。何より進行を遅らせることにより、周囲の支援者の認知症理解やケアに対する備えの期間が長くなるのであるから「ケアに習熟する」という可能性も高くなるわけである。

とはいっても、認知症自体は良くなることはなく、徐々に症状が悪化することになるので、その効果は目に見えないことも多い。しかもたどり着くゴールは服薬しても、しなくても同じであり、そこにたどり着く期間だけが異なるということである。そういうことにジレンマを感じる家族もいるだろう。また薬効がなくなる時期も個人差があるので、専門医と家族の連携は欠かせない。

この薬の副作用としては食欲不振や消化器系の症状(胃腸障害・下痢など)があるとされているが、症状はさほど重度化しないそうである。しかし実際に我々が現場で服薬している方に接して感じることは、そうした副作用以外に「怒りっぽく」なる人がいる、という感覚を持っている。服薬により心身活性化効果があることの症状の一つではないかと想像するが、服薬後に易怒性が現われるケースは要注意である。これも専門医の関与で、薬剤コントロールが必要な部分だろう。

ところでこの薬の販売元である製薬会社の方に伺った話であるが、来春には、ゲル状(ゼリータイプといった方が良いかもしれない)の飲みやすいアリセプトが販売される予定だそうである。現在でも口腔内ですぐに溶ける、というタイプの錠剤が出されているが、認知症の方は服薬認知がなくて、薬を飲む必要性の理解がない人も多いので、薬の形であれば飲まない人も多いため、こうした改良は良いことだろう。さらに新しいゲル状の薬は「はちみつレモン味」がついているらしい。

食後のデザート感覚で、服薬ができるのかなと少し面白く感じた。製薬会社とは何の利害関係も持っておらず、宣伝の意図もないが(そもそもわが国には、この薬しかないので宣伝する必要もないが)、ちょっとした話題として情報提供しておく。

他に書くことが思い浮かばなかったので・・・。

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