長妻厚生労働大臣は障害者自立支援法の廃止を明言している。

同法によって障害がい者の方々に必要なサービスがカットされて、一人暮らしが困難になるなど「自立支援」とは程遠い内容になっていることも問題であるが、それよりもさらに問題とされていることは、同法がサービス利用の際の費用負担を「応能負担」ではなく「応益負担」としている点である。

応益とは、サービス利用そのものが利用者にとって「受益である。」という考え方で「サービス利用者がその費用を自己負担するのは当然である。」という理屈であり、それが「応益負担」である。

しかし、これは乱暴な考えで、負担能力を無視した受益者負担であるから、お金のない人は「サービスを受けるな。」という理屈につながってしまう恐れがある。就労機会に恵まれない障がい者の方々がたくさんおられるのに、それらの方々に対するサービス利用要件が、負担能力を無視したものになってしまえば結果が悲惨になることは当たり前に考えると分かりそうなもので、サービスを利用する必要があるのに、お金がないからサービス利用ができずに、生活に支障を来す、という人々が増加することも当然の結果である。

障害者自立支援法を廃止して、新しい障害者支援の法律を作る最大の目的は、この「応益負担」を「応能負担」に戻して、制度の光が当たらない部分をなくす、というのが主たる目的である。

ところで「応能負担」から「応益負担」への変更とは、介護保険制度が2000年に誕生した時に、この制度において示された基本的な考え方である。障害者自立支援法より先に「応能負担」が導入された介護保険制度で、この問題の見直し論が前面に出てこないのは、高齢者という「大人の集団」のなかに、ある種の「あきらめ感」があることと、比較的年金収入が充実している世代の人々がサービス利用している、ということが関係しているのかもしれない。

しかし個別の状況をみると、1割負担分が家計維持の負担になっているためサービス利用を抑制したり、必要なサービスを使わなかったりしている人も多い。それでも生活が維持できておればよいが、サービス利用を抑制することで、家族の介護負担が増加して、ストレスから様々な問題が生まれたり、サービス利用するために生活レベルを落としたり、という状況がある。

高齢期の経済状態は、現役世代の収入と関連している問題であるから、高齢期も必要な介護サービス利用が経済状況に関連するとしたら、現役時代の負の遺産を一生引きずって生活しなければならないことになる。これを単純に自己責任の問題として考えてよいのだろうか。

特に支給限度額がある介護保険制度においては、重介護者がサービスを毎日使って支給限度額を超えたサービス利用が必要になった時点で、自己負担金は1割負担から10割負担に増えるという仕組みになっている。サービスをたくさん利用することは「割引」の対象にならず「割増」になるという制度である。本当にサービスが必要な人々にとって、この負担は実に重たい。

介護保険制度は改正のたびに自己負担割合の議論が起き、居宅サービスと施設サービスの負担割合を変えるとか、1割負担を引き上げろとか主張する関係者がいるが、負担割合も能力に応じて変えてもよいのではないだろうか。極端な話、10割負担であってもサービス利用が生活に影響しないお金持ちの方と、3食を2食にしないとサービス利用ができない人の負担率や負担額が同じである必要はないだろう。

利用者全てが1割負担である必要はないし、社会福祉制度であるという理由で、すべて公費で賄う必要もない。費用負担ができる能力のある人は、きちんと適正な自己負担をして、そうではない人々に対しては国の責任で必要な支援を行いサービスの谷間をなくすという考え方が必要ではないのだろうか。

それは決して不公平ではない。なぜなら経済力があって負担能力のある利用者からは負担金をいただくが、負担能力のない人は公費でサービス提供するということは、社会的「財」の再分配政策という意味だからである。

経済活動で得る富は「社会の財」が分配されるに際し、様々な要因から特定の組織や個人に社会財が偏って集中した結果であり、それは個人の能力や努力と決定的な因果関係があるとは言えず、社会システムの中で、たまたな幸運な位置にあったという要素も否定できない問題である。よって経済的弱者が必ず自も「怠け者」であるとは限らず、労働対価として低い価値の労働活動をしている結果でもない。

たまたま社会システムの中で経済的成功者の位置に置かれた人々が富を得ているのであるから、集中した財を社会福祉政策として再分配して公平平等の社会を実現する政策はあってよいし、結果的にそのことが社会的弱者を救うのであれば不可欠なことだろう。そしてそれを実現するのが政治の役割ではないのだろうか。

社会福祉の制度に「応益負担」の考えは馴染まず、「応能負担」が正しい方策だろうと思え、介護保険制度もこうした方向に戻していく必要があるのではないだろうか。

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